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『82年生まれ、キム・ジヨン』#6:解説

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語注

곯아떨어지다 眠りこける、酔いつぶれる
빙의 [憑依]

解説

下線部1について、「現在/過去の連体形 + 척하다」で「〜する/したふりをする」と覚えている人も多いかもしれません。しかし、下線部1のように 하다 なしで 척 で終わらせ、文をつなげる用法があるというのがポイントです。「〜ふりをして」と「する」を補うか、「〜であるかのように」などと訳せばよいでしょう。似たような場合に 뿐 があります。こちらも -ㄹ 뿐이다(〜のみだ)や -ㄹ 뿐만 아니라(〜だけでなく)のように後になにか続く用法をよく目にすると思いますが、뿐 のみでとめて、文をつなぐ用法があるので注意が必要です。

下線部2は引用の構造がちゃんとわかって、意味が取れるかがポイントです。「〜しろと(言う)」の場合は -(으)라고 (하다) となり、「〜するなと(言う)」の場合は -지 말라고 (하다) となります。今回はこの「〜するなと」の形です。これが「〜するなと言う○○」のように後に名詞が続く、連体形になる場合、-지 말란 ○○ という形になります。これは -지 말라고 한(하는)(〜するなと言う○○)から -고 하- を除いて縮約形になったものです。連体形の場合、よく 하는 ではなく 한 を縮約形にした形が用いられます。縮約形は 간다고 해(行くんだって)が 간대 となるのと同じ原理です。今回はその連体形の後に 말(ことば)が続いているわけですね。なんとなく 말 が連続してわかりにくそうですが、基本がわかっていれば問題ないはずです。

下線部3は 다(みんな、全部)という副詞の使い方について。ここは直訳すれば「全部飲んだ缶を…」ですが、日本語で表現するなら「〜しおわる」を使い「飲みおわった缶を…」とすると自然になるところです。同じく「〜しつづける」は 계속 ~하다、「〜しまちがえる」(書き間違える等)は 잘못 ~하다 など、日本語では動詞の後に持ってくのを韓国語は前に副詞で表現する場合があるので注意が必要です。

課題文5行目の TV에서나 の -나 について、-나 にはいろいろな意味がありますが、ここは基本的な意味の例示(〜のような○○でも)という意味だと考えられます。

日本語訳

(以下はオリジナル訳です。多少ぎこちないところもありますが、原文を活かした訳文にしています。ぜひ翻訳版とも比較してみてください。)

チョン・デヒョンさんはなんとか平然を装って、ふざけるなよとだけ繰り返した。キム・ジヨンさんは飲みおわった缶をそのまま食卓に置いて、歯磨きもしないまま部屋に入り、娘の隣に横になった。キム・ジヨンさんはすぐに眠りこけてしまい、チョン・デヒョンさんは冷蔵庫から缶ビールをもう一缶取り出して一気に飲みほした。ふざけているのか、酔っ払っているのか。テレビにでも出てくるような憑依とか、そんなものだろうか。

◎ 課題文1行目の 애써 が意外に訳しにくいかと思います。「努めて」ではかたいかもしれません。翻訳版は「無理に」としていました。わたしは「なんとか」としましたが、みなさんはどうでしょう。

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