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蚤の市
パリから電車で行ったところの、なんとか?という街で買い付けてきたばかりだと言うブレスレットを買った。
ちょっと目の引いたそれは、炎天下、一番日の当たる場所にあるお店にディスプレイされていた。
品の良い店主の人は、汗をたくさんかきながらお客さんの対応に追われている。
ほとんど指輪しかアクセサリーをしない私が見つけたそのブレスレットは、フランス語?でなにかが書かれていたため、どうしてもお店の人に聞きたかったのだ。
そして万引きと間違われないように、気をつけて商品を持って待った。
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「ご案内ができていませんでしたね、すみません」と、思った通りの素敵なトーンの声で、店主の人が話しかけてくれた。
「なんと書いてあるのですか?」
と聞くと店主の人は、ルーペを取り出し、じっくりと見ながら丁寧に話し始めた。
(だいたいこれまでの経験では、こういう質問をすると、適当に誤魔化されることが多い。こんなに丁寧にされることは滅多にないので、ちょっと驚いた。)
表面はMarie Christineと書いてあります。
これはきっと、贈られた人の名前ですね。
そして裏は31-3-57とあるので、1957年3月31日送られた物でしょう。
ご家族からか、恋人からか。
パリから電車で行ったところの街で、つい先日買付してきたばかりなので、値段のタグが付いてなくてすみません。
とても物腰の柔らかいゆったりとした対応に、私は珍しく言葉を続けた。
「お守りが欲しくて、何か昔の人の思いを受け継げるものがないかなって探しにきました。」
「素敵ですね。」
すると店主の人はこう続けた。
1957年ですから、第二次世界大戦が終わって、時代がだんだんと落ち着きを取り戻してきた頃だから、何かの記念にプレゼンをしたものかもしれませんね。
ドックタグのように、名前や日付を刻印することで、その思いの証を残したのかもしれませんよ。
それに留め具がすごく珍しい。これは私もみたことがありません。
どうぞごゆっくりご覧くださいね。
と言って店主の人は少し身を引き気味にしたが、
「マリーさんの思い、受け継がさせてください」
と言って、私はそれを購入した。
小さな袋に入れてくれると言ったが、留め方が難しそうだったので店主の人につけてもらって、そのまま帰ってきた。
あれれ、パリの素敵なジェントルマンにエスコートされた気分。
何かに頼らないといられない毎日が続いている。
果たしてこのお守りが私を本当に守ってくれるかはわからない。だからここはやっぱり気持ちの持ちようもあるのだけれども、縁あって出会ったものであればきっと何かあるよ。
そう、願いをこめた。
アンティークのものはとても好き。
高すぎて買えないけど、くまさんがいっぱいいたよ。
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こういう場所に来ると何かしらの安心感を感じることがある。
人混みは苦手なのに、なぜなのかはわからなくて、でもただ好きというだけで来ているような気がしない。
いつだったか、リトアニアの雑貨を見た時も、その優しさに心を奪われたことがあった。
やっぱり高すぎて買えなかったけど。
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