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しろくまさんと僕(4)

第4話「しろくまさんと飲みすぎ」

頭が痛い。

カーテンの隙間からもれてくる光で頭が痛む。どうやら飲みすぎてしまったみたいだ。えっと…昨夜はたしか。だんだん記憶も意識もはっきりしてきた。

※※

昨日、署長に休暇届を提出してから、すぐに帰り支度を始めた。相棒のシロクマが殉職したことは、署内のだれもが知っていた。葬式以降、同僚や先輩、上司とは一通り顔を合わせているので、帰る僕に声をかけたり呼び止める者は誰もいない。僕はなじみの居酒屋に向かった。

※※※

家の近所の居酒屋。一人暮らしの僕はよく仕事帰りにひとりでここへ寄る。けれど今夜はシロクマの幽霊と一緒だ。

「こんなところに居酒屋があったんですね。行きつけですか?」

幽霊になったしろくまさんは、どうやら僕にしか見えないらしく、店員や客もまったく気づく様子はなかった。僕の隣のカウンター席にすわってあたりをキョロキョロながめている。僕は引き続きガン無視を決め込んで、5杯目のチューハイを飲み干した。

「ちょっとペース早くないですか?」

お酒はそれほど強くないけど、飲めないというわけでもない。しかし、北極に氷がたくさん必要なように、今夜の僕には多くのアルコールが要だった。考えてみたらどちらもシロクマが絡んだ問題だ。僕はジョッキの中身を勢いよく飲み干した。

思い出した記憶は、そのあたりで途切れていた。酔ったあげく、どうにかこうにか帰り着いて布団にもぐりこみ、頭痛と共に今朝を迎えたといったところだろう。

※※※※

きしむ階段を降りて、ジャラジャラしたのれんをくぐって一階の台所にはいる。飲みすぎたせいで頭痛はひどいし食欲はないけど、せっかくの休暇一日目だ。コーヒーくらいいれてゆっくり…

「なんで僕の家にいるんですか?」

チェックのビニールのが掛かったテーブルの椅子に、しろくまさんがちょこんと腰掛けていた。正しくはしろくまさんの幽霊なんだけれど。

「おはようございます」

いつものように礼儀正しくしろくまさんは挨拶をした。

つづく

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