【ネタバレ感想】思い、思わ、ふり、ふられ

観てきました。
評判が良いらしい、と小耳に挟んだこと、
主演に君膵の二人(自分はむしろHELLOW WORLDの二人)に、
仮面ライダークローズ、そして、映像研の生徒会の子、
ということで、まあ、最低でも浜辺美波さんの演技で元は取れるだろう、
っていう辺りで、軽い気持ちで観てきました。

が。

予想以上によく出来た映画でめちゃくちゃ良かったので、
こうして映画感想を書く筆を取ります。

ネタバレなしでの感想

北村匠海さんの「セクシー」を極限まで高めた演出に、
赤楚衛二さんの大型犬っぷりを極限まで高めた演出と、
完全に、自分たちのお客さんの需要を解ってらっしゃる感じ、
嫌いじゃないです。

そして、浜辺美波さんはもう言わずもがな、なんで深く語りません。
語ると止まらないので。
でも、やっぱり一番語るべきは、やはり、福本莉子さん
これに尽きますね。

映像研の時にも、粗雑な生徒会の切り込み隊長感で存在感を発揮しつつ、
特徴的な鋭い犬歯が格好いいキュートっぷりを発揮してたんですが、
このね、良さをね、監督が完全に"理解"されてましたよね…。
最初、引っ込み思案で俯きがちな性格なので、
当然、笑顔も全然少ないので、あのキュートさが発揮されないのか…、
っていう残念感がありました。
しかし、作中での変化を経て、
明るい表情をどんどんするようになっていき、
あの!キュートなお顔を!!遺憾なく発揮していくのです!!!
監督、絶対に、"変化後"から逆算して、一番良いギャップを発揮出来る子を配役したでしょう!?
っていうくらいのバッチリとハマった配役。
これにとにかく乾杯でした。

と、俳優さんの話をしているのですが、
作品自体の話の良さもとても良くて、
少女マンガを読まない自分からしても、
凄くとっつきやすいお話になっててとても良かったです。
まだるっこしさが無いスッキリした軸での展開で、
しかしながら葛藤や苦悩もちゃんとあり、
そして、いわゆるお約束展開もしっかり抑えつつ、
それでもカラッと晴れるような、そういう感じでまとまっていて、
観た後の清々しさはとても爽快でした。

役者さんが好きな人ももちろんですが、
ちゃんと脚本自体も凄く良かったので、
万人向けながら、しっかりと楽しめる作品になっていると思います。
例えるなら、天丼、っていう感じですね。
ボリュームはしっかりあって、具材が色々乗っかってて、
全体をまとめるほんのり甘い濃いめのタレが全体にかかってて。
エビ天なんて王道の具や、ほろ苦い山菜天や、
しっかりとした噛みごたえのイカ天やらが乗っかってる感じ。

ネタバレ感想の方で、もう少しこの辺りを細かく述べたいのですが、
詳細を言えないゾーンで言うなら、こんな感じです。



ネタバレありでの感想

さて、こっからはストーリー展開やらなんやら、無遠慮に書いていきますよ。

画作りがめちゃくちゃ綺麗でしたよね。
正直に言ってしまうと、実写で新海誠をやるならこんな感じ、
っていうくらいに、色鮮やかさや、雨粒の粒感とか、
そういうのを意識したんじゃないか、ってくらいに、
風景の演出がそれっぽさを感じました。
ただ、自分が実写作品に割と疎い(映画自体も疎いんだけど)、
っていう部分はあるので、引き合いに出せるのが、
どうしてもサブカル寄りになるので、そこは申し訳ないところはあるんですが。
ただ、エンディングでヒゲダンが入る感じとか、
途中でちょっとメインテーマっぽいやつのイントロ感あるメロディを流したり、
そういう部分はちょっと新海作品っぽいな、って感じでした。
その分、咀嚼の仕方が解る感じなので、全然、否定的な意味ではないです。
知ってる安心感がある、っていうところが自分にはプラスに働きました。
それに、アカリが携帯を落とすシーンとか、めちゃくちゃ印象的なシーンになっていて良かったですし、
ユナとリオのシーン、心の中で
「カズ!!!そこ!!!ベストショットぞ!!!撮れ!!撮れ!!撮ったな!?!?!?!撮れたな!!?アオハル写真第1位おめでとう!!!!!!」
とか思いましたよね!観た方は解ってくれると思ってますけども、
本当にあそこの画作り最高でした。

そして、役者さんもみんな良かった…。
北村匠海さんの目の演技、本当に最高じゃなかったですか?
最初からフルパワーでのセクシー極振りで、
ファンはコレ、たまらんやろ…、
みたいな感じなんですけれども、
アカリにキスするところまで、ずーっと顔に"影"を宿し続けていて息苦しいのに、
ユナに話を聞かされて、アカリに謝るシーンからは、完全に"影"を振り払っていて、
憑き物が落ちたような晴れやかな顔で、禍根を感じさせない朗らかさで、
アカリに「弟」って宣言していて、格好良すぎて最高でした…。
しかも、この後の展開で、ユナに恋する少年に戻るのがずるいですよね。
セクシーな外見なのに、中身はピュアな少年ですよ。最高でした。

赤楚衛二さんも良かった。
仮面ライダー勢なので、ビルドの万丈のハマり役っぷりが最高だったんですけども、
その赤楚さんが何をしたらキュンキュンするか解りすぎてて、
あの屈託のない顔で、アカリの痛みに寄り添ったり、
お姫様抱っこさせたり、もうね、文句なしですよ。
そして、その優しさは万人に向けられている裏表のなさ。
マッドマックスでリオとサクッと打ち解けて親友になれるような、
そういう"陽"、"光"の感じが遺憾なく発揮されていて完璧でした。
終盤、家庭に振り回されて、濁っていく感じも良いですし、
最後には「アカリはこっち」っていう、
あのヤキモチの焼き方も最高でした。

そして、今回MVP過ぎた福本莉子さん。
マッジで可愛すぎた…。
最初の俯き加減から、だんだん前向きになっていって、
作中、一番明確に成長が描かれていって、
最終的にリオを振り向かせちゃうヒロイン力の高さが、
福本さん、という器に宿っていて最高でしたね。
正直な話、映像研の生徒会というサブポジションくらいで、
そんなに有名じゃあなかったのかな、と思うのですが、
それを上手く逆手に取ったというくらいに、
「私はここに居るぞ!」という成長前後での存在感の違う感じが凄かった。
途中、ユナに告白する男子や、ユナを目で追うリオと共感しながら、
いやー…、アレは目で追っちゃうやろ…、
だって、可愛くなりすぎやろ…、
っていう感じでしたもんね…。
でさぁ、根っこの性格の良さはちゃんと芯として残っているわけだからさ、
教科書届けに来た、って家まで寄って、
玄関口で、お母さんにアカリの話を聞いてください!って訴えるところが、
また泣かせるよねぇ…。感想書きながら思い出してまた泣けてきた。
リオが、教科書に書いてある名前を確認するシーンで、
ユナの覚悟を汲み取るところがまた余計に良いんですよね。
本当に、この子はユナである、という感じで最高でした。
告白されて嬉しかった!けど断っちゃった!
だって、こういう風に変われたのはリオくんのおかげ!
だから感謝を伝えたい!とか、
恋する乙女可愛すぎでしょう…。
本当に、本当に今作で一番のお気に入りでしたわ…。

そしてそして。浜辺美波さん。
もう、自分は賭ケグルイから入り、
HELLO WORLDの一行さんの声優も全然イケる安心感を経て、
屍人荘の殺人でのカワイイの権化っぷりを目の当たりにして、
安全安心だったわけですけれども、
それでもなお、純粋に、演技の評価をしたくなるし、
そこで下した評価が「良かった」に落ち着く名女優っぷりでしたね。
カズからの呼び出しを見た時点で、心が浮足立つソワソワ感が伝わり、
好きと言われて嬉しさのあまり泣いてしまうあの感じ、
一緒になって、良かったね…!最高だね…!って泣いてしまいました。
感情の同期のさせ方が本当に凄い。
共感、というか、一致というか、歯車の噛み合い、というか、
やっぱりそれ以上の"一体化"という意味で、同期、が正しい気がする。
マジで怪物と評して良いくらいの演技力で凄かった。
あと、今回、観ていてやっと気づいたんですが、
浜辺美波さん、顔の角度が"完璧"なんですね…。
演技する相手とカメラに対して顔を向ける角度が、バチコリはまっていて、
これ以上ない"顔"がカメラに映っているのが凄い。
後ろめたい気持ちがある時は気づく人には不自然に映るような俯き方で、
それでも、カズへの気持ちを隠せないから渡り廊下の試し撮りは、
本気の真顔で真正面で堂々としていたり、とか。
そういうところで凄く自分を客観視出来るような感覚の持ち主、というだけで、
今後の映像作品への出演に期待感が高まり続けてしまいますね。
(別作品で恐縮なんですが、現実に居る百城千世子だな、と…)

脚本自体もめちゃくちゃ良いですよね。
ここ数年の中で自分の一番作品が「空の青さを知る人よ」なんですが、
この作品も軸に同じく「倒れる時は前のめり!」という気概を感じて、
特にユナ、リオの二人は前に倒れて、立ち上がって、成長していく様が、
とてもとても爽快で良いですよね。
特に、自分がそういう事が出来ない、倒れないように準備をしたり、
倒れないように避けたりする性分なもので、
特に、そういう強さを持っているキャラに惹かれてしまいます。
家庭の事情で告白出来ずにいる、とか、
二人のキスを目撃してしまった事で告白出来なくなる、とか、
そういう王道の少女漫画的展開は入っているけれども、
あくまでフレーバーとして入っていたり、
逆に、この4人に関係を上手く絞っていて、
憎悪がほぼ無い形で決着がつく清々しさがあって、
この作品の口当たりが凄く良かったです。
機微とか、雰囲気とか、そういうのではなく、
明確に感情や事情で心が動いていく様も解りやすくて良い。
そして、序盤で雨を多く映してから、終盤は雨が晴れるように、
作品の終わり方も、必ず晴れが訪れる展開も、
観終わったあとの心地良さとリンクしていて良かったです。
雨自体は好きなんですけどね。

総括

今作は、とにかく凄い上手く、多方面から良い要素を集めて組み上げられていた、という印象になりました。

前述の通り、新海作品っぽさがある、と言いましたけども、
それも、君の名はや天気の子のような、映像的な心地良さで画作りをして、
話題の人気若手俳優ながら、みんながしっかりと実力としても文句ない配役をして、
その上で、話自体が魅力的な原作コミックスを実写化としていて、
サブカルを取り巻く要素の、美味しい部分の集大成、という感じ。

きっと、サブカルアニメ映画が大衆ウケする、という実績を残した君の名は、天気の子がまだ夜に出ていなかったなら、
こういう画作りの良さは出せなかったと思うし、
浜辺美波さん、北村匠海さんを始めとした若手実力派俳優が居なければ、
ただ単なる人気俳優のための映画に落ち着いてしまっただろうし、
原作コミックスがつまらなければ、クソ実写扱いだっただろうし。

そういう、あらゆる方面からの、ベストのタイミング、というものが、
幾重にも重なったポイントとして、この映画があるように感じました。
今のところ、今年のベスト映画の優勝候補としてかなり熱いです。
これ、地上波放送したら実況しながら観ちゃうだろうなぁ…。
本当に、心地良い泣き方が出来る映画でした。

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