「アポロ杯」提出句〜白月選
白靴を汚しスカートしわにして
ジランケンさんの句。
季語は白靴。その涼やかさから夏の季語だ。白靴を汚し、スカートもしわにしてまで向き合っているものはなんだろう。汚れるのも厭わず一生懸命にDIYか何かに集中している女性の姿が、そのパーツの向こうに見えた。
墓石を掴む空蝉水弾く
shinoさんの句。
季語は空蝉。初夏になるのかな。墓石が硬質で死を意識させる事物であるのに対し、それを掴む空蝉は生の残滓でありながら、なお墓石を離そうとしない力強さがある。また、水を弾く空蝉に、なぜか瑞々しさと生の躍動を覚えるのだ。
カップルの痴話喧嘩聞くかき氷
亀山こうきさんの句。
季語はかき氷。言わずと知れた夏の季語。この生活への近さこそ俳句の醍醐味。俗であることの楽しさ。かき氷を取り合わせるところが憎いよね。かき氷って、冷たさよりもワクワク感や甘さが際立つ感動の多い食べ物だと思う。だから痴話喧嘩なんだろうな。
祖母マスクへぽろぽろ八時十五分
Rxさんの俳句。
このご時世じゃなきゃ季語はマスクで冬と言いたいところだが、8時15分にぽろぽろなら、これは花粉症でもあるまい。ここは原爆忌、特に広島忌ととりたい。そうすると季節は一応秋になる。上五の字余りからの句またがり、そして主役の季語を暗喩と言っていいのか、あえて時間での表現。これまたやられた。
西日射す象は背中に砂かけて
junchanの句。
季語は西日で夏。サバンナの夕日に照らされる象が砂浴びをしている様子が浮かぶ。そうそう、象って泥とか砂も浴びるんだよな。静寂の時の中、象が鼻をうまく使って一心に砂を浴びているそんな様子が目に浮かぶ。
夾竹桃被曝電車の走りくる
犬柴さんの句。
夾竹桃が夏の季語。名前のとおり、桃のような鮮やかなピンクの花を持つ樹木。被曝電車というと、これも広島だろうか、長崎だろうか。そういえばどちらも市電が走っている。その裏にイメージされる原爆のキノコ雲。そういえば夾竹桃には強い毒性がある。
内職のミシンの母の背よ涼し
晴田そわかさんの句。
季語は涼し。夏の暑い中にふと吹く風の涼しさのイメージ。内職のミシンの母のと、「の」をたたみかけてリズムを作っている。内職をする母の背中なんて、なんとなく日々の生活の大変さ、辛さを感じさせるが、それを涼しの一言が見事にひっくり返してくれる。「背よ」と軽く切れをつくって視線を誘導しておいて大転換って巧みすぎる。
以上、見落としもあるかもしれないがアポロちゃんのマガジンを通し読みして選んだ秀逸な七句でした。勉強になります!
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