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【「異端の鳥」キツイ、けど感動した】

【「#異端の鳥」キツイ、けど感動した】

■巷で話題の映画「#異端の鳥」鑑賞。

第二次世界大戦中、ホロコーストを逃れて疎開した一人の少年が、様々な大人たちの差別や迫害に抗い、想像を絶する大自然の厳しさと格闘しながら、強く生き抜いていく姿を描く。
ポーランドの作家、イェジー・コジンスキ原作の同名小説の映画化。


■「家なき子」状態の少年が流転する場所ごとに章立てられている本作。とにかく「自分たちとは違う者への過激な差別と排除」によるストーリーの大半を占め、正視に耐えられない地獄絵巻が続く169分。

しかも、少年に対する差別・排除・暴力の度合いは、ドイツ軍・ソ連軍の兵隊よりも、市井の「普通の人々」のほうが大きいという衝撃の事実。

神に仕える司祭や敬虔深い信者でさえ、異教徒・異端の少年には情け容赦なく暴力をふるうという始末。

優しい顔して近づく大人ほど裏の顔あり。嫉妬深い男や異常性愛者。こんな大人たちに心身ともに虐げられた少年を救うのが、ドイツ軍・ソ連軍の兵隊という皮肉さ。

狙撃兵から、強く生き抜く術を教えてもらった少年は、徐々に純粋な心を失い、同年代の少年少女たちの輪にも加わることができず、生きるためなら殺しも辞さない「異端者」と化す。
そんなときに再会した実の父親に、少年はどう接するのか…

■本作を観て、いつの時代の人間にも「自分たちとは違う者への過激な差別と排除」が存在することを、いやという程、痛感させられる。
尚、本作では劇中ほとんど音楽が流れない。また、主人公の心情を説明するセリフやナレーションも一切ない。

ハリウッド映画のように「ここで泣いて」「ここで感動して」「主人公はいま悲しんでいますよ」といった分かりやすい誘導がない分、観客は本作のテーマに集中し、自ら頭を使って取り組むことができると思う。
その一方、安直な感動では許しませんよ、といった製作者側の厳しさ・真剣さもひしひしと伝わってくるわけで。

■また、本作におけるシネマスコープ・モノクロームの圧倒的な映像美は、少年が流浪する大自然の美しさと厳しさの両方を見事に映し出すのに十分。

特に、モノクロームで描くからこそ、「色」による差別について考えさせられることもある。
「白」だからいい、「黒」だからよくない、といった考えは、結局、人間が作った勝手な思い込みであることに、ハッと気づかされる。

とにかく、鑑賞しながらいろいろと考えさせられることが多い169分である。

■確かに、本作の残虐さに耐えられず、途中退場するのも当然。
しかし、ラストシーンでの、少年の心に差し込んだかすかな希望の光を見れば、地獄絵巻を覆すだけの感動が待っている(はず)。
それだけの価値は本作にあると私は思います。

追記
ポスターにも描かれている、土の中に首まで埋められた少年に群がるカラスの群れ。
このシーン、どうやって撮影したのか知りたくてパンフレットも買ったけど、それについては載っていなかった。
ぜひ知りたいです。

#映画好きと繋がりたい
#映画好きな人と繋がりたい
#カラスの勝手でしょ

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