熟年離婚

いつもと違う話題ですが、ニュース解説より、腑に落ちた記事を見つけたので。
アンケートばかりで、そこから何を読み取りどのような政策を打つかということが、日本の政治家や役人には分かっていないように思います。

朝日新聞デジタルより
【視点】熟年離婚率が過去最高になった。妻側が離婚を検討し始めるのは「育児期」からだというのをご存じだろうか。30年ほど我慢していて切り出すということだ。これを、妻がひどい、いや夫側が育児に参画しなかったからだ、夫が定年近くなって蓄えがないことを妻に責めたからだ、とそれぞれを責めるのは、違うと感じる。

夫はなぜ育児参画できなかったのか。なぜ夫婦の老後に足る貯蓄がたまらなかったのかを考えてみると、この国の法設計が引き起こしたことであることが分かる。 核家族化した社会では、育児に両親の助けを借りることが出来ず、男性が長時間労働してしまうと育児は妻一人の負担になるので、妻は二人目以上を産めなくなり社会は少子化になる。さらに仕事を続けることもできなくなる。だから、他の先進国では、労働時間は上限を厳しく設定して育児や介護と両立できる働き方を促し、かつ時間外割増率を1.5倍支払わなくてはならない、と定めている(日本はたった1.25倍)。日本において(育児負担が妻に偏らずに)妻が仕事をつづけられた場合は、家計が2億円プラスになることが分かっている。当然、老後の貯蓄が足りないという事態も防ぐことが出来る。

日本の労基法には「単月100時間の残業上限」などという、過労死ライン(月80時間)を大きく超えた意味のない残業上限しかなく、時間外割増率が1.25倍と安い。
国がこうした設計を維持したことが、男性の長時間労働かつ片働きモデルしか成り立たない日本社会にしてしまった。

夫婦が互いを責め合って別れることになってしまう、その根本にあるのは、国の法設計のまずさだ。

経営者に対して「時間外労働させると高くつく仕組み」にして、男性を長時間労働させず、短い時間で付加価値型の仕事のやりかたに切り替えざるを得ない状況に追い込むことが本来は必要だった。それによって、女性が育児を一人で抱え込まなくてよくなり、残業の無い職場ならば仕事を続けられる。夫婦にとっては老後の生活費を準備することが出来、育児期の恨みつらみからの熟年離婚することも防ぐことが出来る。

こうした熟年離婚の実態を伝える記事は重要で、しかしながらその背景にある法改正の必要性について、もう一歩掘り下げた記事も読みたい。

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