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【2000字小説】【童話】『みさとひみつのモモゼリー』

 みさはキッチンでこまっていました。どうしても、フックにぶらさがるあわだてきにてがとどきません。いまみさは、ぐあいがわるくてねているママのために、ももゼリーをつくってあげようとしていました。
 みさがねつをだすと、いつもママはももゼリーをつくってくれます。それをたべるとみさは、すぐにげんきになるのです。みさはママといっしょにももゼリーをつくったことがあるから、つくりかたもしっていました。
 ももかんも、ゼラチンも、ボールもちゃんとある。あとはあわだてきがあれば、ももゼリーをつくれるのに。
 ママに、あわだてきとって、ていおうかな……ううん、ママはねてるもん、そんなのだめ。
 だれもいないキッチンはひろくて、しらないばしょのようで、みさはこころぼそくなってきました。
 はやく、とらなくちゃ。
 せのびしててをのばしますが、あわだてきはたかいところでびくともしません。
「もう! あわだてき、おちてきてよお!」
「わあっ」
 みさがびっくりしてこえのほうをみあげると、あわだてきがおどろいたかおでみさをみていたのです。いつのまにか、みさはちいさくなって、まないたなんかをおくところに、たっていました。
「な、なんだ、みさちゃんか。きゅうにおおごえをだしてどうしたんだい? おひるねからめがさめてしまったよ」
「あわだてきさん! よかったあ。あのね、ママのにももゼリーをつくるの、てつだって!」
「なんだ、そうだったのかい。まかせてくれ!」
 あわだてきはすぐにぴょんっととびおり、みさのよこにいさましくやってきました。せがたかいあわだてきを、みさはたのもしくみあげました。
「ボールさん、かんきりくん、こざらちゃん、あつまれ!」
 あわだてきがよぶと、すぐにぜんいんとんできました。それからあわだてきはおおきなこえでうたいました。
「はじめはまかせたかんきりくん、まるいふたをざっくざく
 ぱかっとひらけばよいにおい! 
 ボールになかみをこぼさずいれて、おさとうパラパラふりかけろ!」
 みさちゃんは、みんなとちからをあわせて、かんのなかみをボールさんにいれ、おさとうをふりかけました。
「おっと! わすれちゃいけないこざらちゃん!
 ゼラチン、おみずをおなかにのせて、レンジであったまってきてくれよ。
 いよいよぼく、あわだてき。おいしくなあれ、げんきなあれ。こころをこめてくーるくる!」
 こざらちゃんがふやけたゼラチンをボールにいれると、あわだてきはボールのなかにとびこみ、くるくるまわりはじめました。みさはあわだてきとてをつないで、ボールのふちをはしります。
「よし、これでかんせい! れいぞうこさん、とびらをあけて! ボールさん、いっせーのせ、でおすからジャンプしろよ」
 あわだてきのいっせーのせ、のこえとどうじに、みさたちはジャンプするボールさんをどんっとおしました。
 みごとせいこうです! ボールさんはほっとしたかおでれいぞうこのなかにすわっています。
「やったあー!」
 みさはうれしくってあわだてきといっしょにとびはね……そのしゅんかん、あしがすべりゆかにおちました。
「きゃー!」

「……さ。みさ、おきて」
 はっとしてめをあけると、そこはキッチンのゆかで、みさはいつのまにか、ねむっていたようでした。
「ママ! あのね、わたしももゼリーを……」
 いいかけて、みさはくちをとじました。ゆめだったようなきがしたのです。
「あら、どうして? ももゼリーがある」
 れいぞうこをあけたママが、ふしぎそうにガラスのボールをてにしました。みさはバンザイしました。
「わあ! やったあ、ママたべよう!」
 ママはへんねえ、といいながら、ももゼリーをとりわけてくれました。
 みさはおいしいももゼリーをたべながら、じぶんがつくったことは、ママがげんきになるまでひみつにすることにしました。おどろいたママのぐあいがまたわるくなったら、たいへんですからね。

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