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2023年に夢中で読んだ漫画を振り返るぜ!

今年もたくさん漫画を読みました。楽しみと感動をみなさんにおすそ分けしま〜す!


やっぱり漫画が面白い

私はわりあい堅い本が好きなのですけど、漫画もけっこう読みます。

このルーツについて考えてみると、看護師をしている私の母方の叔母さんがかなりの漫画好きで、私が小さい頃、読み終えた漫画をうちに置いていってくれたことがきっかけだったと思います。手塚治虫や石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄といった昔の大御所たちの名作ですね。そして私の母親はクリスチャンで、家でよく教会に掲示するポスターなどを描いていました。私自身は音楽好きで、成人してからは楽器を弾くことを主な趣味にしましたが、絵が好きという血筋も確実に流れているような気がします。

漫画というのはもちろん絵だけでできているわけではなくて、そこには物語があります。物語というのは、小さい頃よりも大人になってからのほうがよく理解できますよね。隠された意味に気づいたり、似通った体験を持っていて強く共感するものがあったりということがあります。また、自分の手で何かを表現するような活動を行うようになると、漫画表現の難しさや技術の高さがわかるようになるので、そういった部分にも面白さを見出すことができます。

さて、私のnoteではいつも真面目な話ばかりしているので、たまには肩の力を抜いて、今年読んだ漫画を紹介してみようかな〜と思い立ちました。ジャンルとしてはそれなりに雑食で、面白いと感じたものは全部載せてみます。書き出してみたら、全部で8作品ありました。

この記事で取り上げるのは「2023年に話題になった漫画」ではなく、あくまで「私が2023年に見つけた漫画」です。なので、昔の作品も混じっています。順番には特に意味はなくて、思いついた順に書いています。完結した作品も、連載中の作品もあります。アニメ化や映画化された作品もありますね。

なお、この記事にはアフィリエイトのリンクや、企業からのPRは含まれていません。気になった作品があれば、そのままタイトルで検索してみてくださいね。

では、列挙するよ〜

オノ・ナツメ「BADON」

刑務所で出会った4人の男たちが、服役を終えたのちに首都に出て、高級煙草店を開業することで再出発を誓うという話です。

これはけっこう印象的な作風です。単行本の表紙を見るとすぐにわかりますが、線や塗りが日本の漫画的な表現にはあまりないタイプだと思います。カラーの表紙なんかはそのままポスターにしても映えるレベルなのではないでしょうか。絵としての個性があって上手いというのは、やっぱり強いですね。

さらに、表現としてもうひとつ特徴があって、それはモノローグの形で登場人物の内面が語られるということがほとんどない点です。彼らの考えていることは、セリフと行動のみで描かれています。これも珍しい気がしますね。物語の中心にいる4人は、単純な悪人というわけではなく、さまざまな事情の中で犯罪という渦の中に巻き込まれた人たちです。それぞれに過去があって、再出発の道のりは当然真っ直ぐにはいきません。ここには、才能のある若者が努力して成功を掴み取るといった物語とは、また違った深みがあります。

とにかくかっこいい男たちを描くのが上手い作家さんだなと感じます。しかし、その中で家政婦をやっているリリーちゃんのかわいさといったら…。個人的には、物語のよさもありつつ、今年読んだ漫画の中で最も「絵」として印象に残った作品でした。

ヨドカワ×MB「トラとハチドリ」

アパレルのお店で働く人たちを扱った作品です。私は全然ファッションに興味がなくて、白いワイシャツを一年中着ている人なのですが、これはなかなか面白かったです。

かっこいい女子の描き方っていろいろあると思うんですけど、この作品の主人公のマツリもいいキャラクターをしています。背が高くて、トラの柄のヤンキー的ファッションで、ちょっと粗野に見えるけど裏表のない性格。最初は居酒屋でバイトをしていましたが、そこで出会ったアパレル店のオーナーに気に入られ、お店で働くことになります。

お仕事を扱った漫画というのは、その業界の内幕が見えて面白いというのもありますが、やはり何かに向かって頑張っている人の話というのはいいものです。そこにはタイプの異なる人たちがいて、摩擦と衝突、失敗があって、その中でお互いの理解というものが進んできます。

「異質なものを理解する」というのは、人が生きていく上で重要であり、また物語としても面白くできるテーマです。この作品は全4巻で、うまくまとめられてはいますが、もう少し続きを読んでみたかったかな〜という気もしますね。

荒川弘「黄泉のツガイ」

ハガレンこと「鋼の錬金術師」の作者による最新作です。長編デビュー作であれだけのものを描いた人ですから、面白くないはずがないと思っていましたが、読んでみたらやっぱ荒川弘先生さすがだわ……という感じになりました。

能力バトルモノとも言えるジャンルがあって、有名どころだと「ジョジョの奇妙な冒険」や「HUNTER×HUNTER」、最近だと「呪術廻戦」などがありますね。この作品における「ツガイ」という存在も、ジョジョのスタンドのような類型と言えます。ただ、「ツガイ」の特徴は「対になるふたつの存在」という点にあります。これは特殊な発想という感じではありませんが、意外とありそうでなかったというか、面白い発展の下地になりそうな設定です。自律型のスタンドみたいなものを考えると、ツガイと主との関係性が描かれることはすぐに想像できますが、本作では対となるツガイ同士の関係性も出てくるので、キャラクターに厚みが出ます。

この記事を書いている時点で、単行本は5巻まで刊行済みです。これは長期連載になるかな〜? 楽しみだな〜、と思いながら読んでいます。

高橋ツトム「二次元JUMPIN'」

高橋ツトム先生、長編デビュー作の「地雷震」の頃から大好きなんですよね……。一匹狼的な刑事を主人公にした「地雷震」では、対立する犯罪者たちの多くが独特の思想を持つ人間で、刑事モノという括りでも異彩を放っていたように思います。

この作者はカリスマ的な存在を描くのがすごく上手いんですよね。昭和の暴走族を描いた群像劇「爆音列島」や、幕末の動乱の中で親を失い、宗教団体に拾われて剣士となった兄弟の成長を描く「SIDOOH/士道」など、テーマが広い上に名作が多いです。今作「二次元JUMPIN'」は漫画家と編集者の話です。

権威とか権力に対する反抗というのは、作者がときどき扱うテーマなのですけど、ここでは漫画編集者である主人公の所属する編集部や、芸能界の大物などがそれに当たります。作品に登場する天才的な漫画家と比較すれば、主人公はどちらかというと「優秀ではあるが普通な」タイプです。

ただ、この作者の描く人物というのは、最終的には立ち上がるんですよね。自分で立つことを決意して、闘います。一種の職業モノでありながら、そこには物理のバトルではないバトルがしっかり描かれていて、毎回期待を裏切らない作品を描いてくれるなあって思います。

山口つばさ「ブルーピリオド」

これはかなり夢中で読みました。高校2年生で絵画の世界に出会った主人公が、いきなり藝大一本に絞って受験に臨むというストーリー。もちろん美大の受験だけがテーマでなくて、美術とか自分を表現するってどういうことだろうという話が出てきています。ここで描かれているのは、美術そのものというより、美術を通して内面と向き合う人間たちの姿です。

主人公の八虎くんのキャラクターがすごくいいですね。勉強ができる上に、人付き合いも難なくこなして、チャラいというか不良的な立ち位置にいる。人の顔色を敏感に察知して、器用にそれに合わせるということができてしまうがゆえに、他人と本音で話すということに慣れていません。

この八虎くんが初めて本当の意味で他者と出会って、自分自身と出会うのが、絵を描くという行為を通じてなんですね。彼は内面に気の弱さと疑いを抱えていて、外面の軽さとは反対に生真面目な性質を持っています。とはいえ、自分には絵しかないと思い詰めるタイプではないし、向こう見ずに突っ走るということがどうしてもできないというのが彼の弱さでもあります。それでも彼は絵が好きだし、人間が好きなんですよね。

彼の周囲にいる予備校生や講師、藝大生といった人たちも、それぞれ強いキャラクターを持ちつつも、一面的で単純な描かれ方はされていません。鋭さというのは、ナイーブで脆い面の裏返しです。でも、予備校の大葉先生だけは悩みつつも最終的に全部倒していきそうな気がして、面白く感じました。

小林ユミヲ「にがくてあまい」

男運に恵まれないキャリアウーマンと、イケメンでありながらも女性に一切興味のない男色家の美術教師が同居する話。美術教師の渚は家事をしっかり行う料理好きで、それに対して忙しく働いているマキは部屋も荒れ放題で料理もせずといった感じで、このふたりの食事の場面とそのレシピが毎回出てきます。

この作者は漫画的な表現としての絵がすごく上手いなと感じます。単純に「絵が上手い」というのと、漫画としてするする読めるかというのは少し違う能力です。キャラクターの見分けがパッとつく作品もあれば、どうも登場人物が覚えられないなという作品もありますよね。これはキャラクター設定とか物語の作りも関係してきますが、本作は一読してすぐに物語に入り込めるわかりやすさがあって、それでいてありきたりな作りという印象は全然ありません。

料理は常にこの作品の中心に位置していますが、それは花や葉っぱを伸ばすための幹として存在しているような感じで、物語はマキの仕事上の挑戦や父親との確執であったり、渚の内面に存在する壁をめぐって展開していきます。設定として何を扱うのであれ、面白い作品っていうのは究極的にはやっぱり人間そのものを描いているんだなって思いますね。

川田「火ノ丸相撲」

少年漫画で相撲をテーマにするという挑戦的な作品です。それもジャンプ的な王道の少年漫画で、しかも全28巻という長期連載を達成していますから、これはかなりすごいことなのではないでしょうか。

主人公の火ノ丸は幼少期から相撲に魅了され、小学生相撲の頃から頭角を表していましたが、「身長に恵まれない」という力士として致命的な弱点を抱えています。高校に入学すると、部員が部長1名という弱小の相撲部に入り、「大相撲で横綱になる」というほとんど誰も信じないような目標を掲げ、高校相撲の世界で奮闘することになります。

体格に恵まれない選手が工夫と才能によって道を開くという点で、私は柔道の漫画である木村紺「からん」を連想しました。私は昔から木村紺先生がかなり好きで、「からん」は絶対名作になるぞと期待していたのに全7巻で連載が終わってしまって、めちゃくちゃ悔しい思いをして……あ、すみません脱線しました。そう、スポーツと体格の話です。

ボクシングや柔道といった競技が階級別になっているのは、体重というのが明らかに勝負を左右する重要な要素だからです。大相撲の中にはご存知のとおり階級はなく、いわば無差別級の競技です。小兵と呼ばれる身体の小さい力士が活躍することもありますが、体重のある力士のほうがずっと有利であるという事実は変わりありません。

スポーツの世界というのは誰だって努力していますので、「圧倒的な努力によって困難を克服しました」というだけではリアリティが出ないのですよね。その点でこの作品はギリギリのところを突いているというか、「才能もあって努力もしている人間に囲まれた中で、それでも人一倍の努力によって突破しようとする人間」を説得力を持って描くことに成功しているように思います。熱のある作品です。

濱田轟天「平和の国の島崎へ」

幼少期に国際的なテロ組織に拉致され、数十年もの間、戦場を生きる場所としてきた男が組織を離脱し、日本へと帰ってくる話。

物語というものは、その多くが「困難を乗り越える」という内容を含んでいます。そのため「主人公が無敵」みたいな作品って、話の展開が難しいように思うのですが、描く人が描くとすごく面白いんですよね。島崎はテロ組織による拉致の被害者であり、保護されるべき存在ですが、要人の暗殺くらいは普通に単身で実行できる能力を持っているので、国から危険視され、常に監視される対象でもあります。

戦場で形成された彼の人格と、帰国後に出会う平和な市民たちの生活との間には当然ズレがあります。それがコメディタッチで強調して描かれるわけでもなく、かといってシリアスすぎる作風でもなく……単純に説明はできませんが、とにかく漫画としての描き方が上手いです。島崎が圧倒的な強さを見せる戦闘シーンも上手い。口数の少ない島崎の語りは、セリフの常用漢字の一部がひらがなとして表現されています。少年時代に突然異国へと連れ去られたので、彼自身がそれを書けないのでしょう。これも独特の雰囲気を生んでいます。

ハッピーエンドを迎えてほしいものですけど、この作品では最初から「島崎が戦場に復帰するまで○○日」という結びが各話の終わりにたびたび出てきます。これはどうなるんでしょうね、この先の展開がすごく楽しみです。

漫画の山に埋もれそう

漫画ってほんとに日々膨大な量が出ていますよね。最近はネットで最初の何話かだけ無料で読めたりとか、電子書籍で1巻だけ買ってみるみたいなこともできますが、気になる作品を見つけると、お金がかかってしょうがないぜ〜って感じになります。まあ、作者は生活を賭けて全力で描いていますから、それが1冊500円なんていうのは全然高くないんですけどね。

漫画についての記事を書くのは初めてでしたが、もしかしたら、noteのタグ機能やおすすめ記事でこの記事を見つけられた方もいるかもしれません。私は普段は人の心について文章を書いていますので、よかったら「ご案内:ここから読んでね」のページから他の記事も読んでみてくださいね。

それでは、来年の2024年も、みなさんに素敵な漫画との出会いがありますように!

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