見出し画像

私も宇宙船に乗りたい

 夢を見た。

 舞台設定はSF。もうすぐ地球はダメになる、そんな状況の中、選ばれた人間だけが脱出する宇宙船に搭乗できる。人間の選別条件は、潜在能力だったり、人類社会への貢献だったり、政治的なあれこれだったり。

 夢に出てきたその女の子は、そのどれもなかった。ただひとつ、思いついた最後の望みは、搭乗条件を満たした幼なじみの男の子の家族になることだけ。

 だから、女の子は幼なじみの男の子に跨った。既成事実をつくって、家族になりすまして、地球ではないどこかで生き延びるために。

 男の子には、きちんと恋人がいたのに。そのことを女の子はわかっていたのに。

 苦々しい性行為の結果を見届ける前に、目が覚めた。また私の日常が始まる。

 会社が終わって、家に着いて、遅い夕食をとりながら、夢の女の子を思い出す。どう見られるかなんてかなぐり捨てて、生き延びようとその最善を尽くそうとした女の子。そこまでして生きたいと思うその気持ち。

 いっそ、美しい。

 巻き込まれた男の子の立場からしたらそんな呑気な感想を言えやしないのだけれど、その力強さ、執念深さに、すぐに投げやりになってしまう私は羨望の念すら抱いてしまうのだった。

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは大切に使わせていただきます。