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PR TIMES(3922)の銘柄分析

前提

銘柄紹介ではなく、自分の分析用の備忘メモとして記事を書いています。そのため、一般的な銘柄分析系の記事にあるような、四季報に載っているようなちょっと調べれば分かる程度の基礎情報は記載しません。なお、品質レベルは趣味程度なのでご了承ください。

保有した理由

 理由1:定量情報での評価が抜群に良い
私がスクリーニングで用いている3項目に対して、PR TIMESの実績は下記の通りです。

・営業利益率:34.6%(自己基準:15%以上)
・ROE:42.0%(自己基準:15%以上)
・時価総額:430億円(自己基準:300億円以下)

*購入時の時価総額は約170〜180億円でしたので、購入当時は自己基準を満たしていました。

その他項目は下記の通りです。このあたりはさらっと流します。

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引用:バフェットコード(2021/05/28)

理由2:固定費も変動費も低い優秀なビジネスモデル
営業利益率の高さを実現できる理由が、ビジネスモデル的に売上原価費がかかりにくいことだと考えています。

固定費の観点からみると、PRを配信する仕組み自体は、インフラ/サーバー費用やシステム改修費はかかるでしょうが、製造業のように工場や倉庫、在庫などモノにかかる費用が発生しません。

さらに、変動費の観点から考えます。PRの本数が増えたところで、リリース原稿を作成するのは発注者側なので、PR TIMES側が都度発生するコストは編集/校正サポートの人件費程度です。リリース1本あたりのコストは下げられることが要因だと推測しています。

各勘定科目が、損益計算書の売上原価費 or 販菅費のどちらに計上しているか、分からないので会計的な適正さは欠くと思いますが、ビジネスモデルを考慮するときに必要な要因は掴めていると思っています。

*なお、売上総利益率(粗利)が85.5%なので、ほとんどを販菅費に計上してると思うけど。

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引用:2021年2月期 有価証券報告書

そのため、PR TIMESの事業は、損益分岐点が非常に低く、スケールが効きやすいと考えています。

理由3:参入障壁の高さとネットワーク効果

最後の理由は、他社が模倣しようとしても、時間と労力がかかるからです。なぜ利用企業がPR TIMESを使うのかと考えると、媒体数が多くPV数が多いのでメディアや生活者(消費者)に見てもらえるからだと考えています。

同じようなPV数を出そうと思ったら媒体との事業提携を進める必要がありますが、すでにPR TIMESは200媒体とのパートナーシップを締結済み。他社が同じレベルに追いつくには実績と時間がかかり、模倣へのハードルは高いと考えています。

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引用:2020年度(2021年2⽉期) 通期 決算説明資料

また、PR TIMESは、PV数と媒体が増えれば増えるほど、利用企業にとって価値が生まれるネットワーク効果を発揮します。

*ネットワーク効果は「千年投資の公理」の第5章に取り上げられています。詳細を知りたい方はぜひお勧めします。

描いている成長ストーリー

公式の将来的な成長計画は、4/13に発表された「Milestone 2025」中期経営目標説明資料の通りです。なので、個人的に重要だと考えている成長過程を描こうと思います。

PR TIMESの売上高を要素分解すると、利用企業数×単価です。そのため、各要素の向上が売上高に反映されます。

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要素1つ目は利用者数の拡大です。中期経営目標でも各セグメント毎に達成目標を描いています。個人的には予算の関係上、法人セグメントでいかに利用者を伸ばしていくかが、成長ドライバーだと考えています。

■既存
 国内>法人>上場企業:44.7%→70%
 国内>法人>非上場企業:(不明)
 国内>法人>公共:25→47都道府県
■新規
 国内>個人:2021年5月に個人事業主にも開放
 海外:2022年にアメリカ予定

*ちゃんと構造化してなくてすいません。。。

要素の2つ目は、利用単価の向上です。
PR TIMESで唯一といってほど不満があるのが課金体系と単価の低さです。特に大企業向けには、安すぎると言っても過言ではないと思います。自身がとある大手企業に勤めており予算の肌感覚はあるつもりですが、大企業が年間84万円で使い放題というのは、かなりの割安感を感じます。

もちろん、費用体系の一元化(シンプル化)や値上げは反発を呼ぶので経営的な判断や意図はあるのだろうと推測します。しかし、発信数(トランザクション量)に比例する課金体系の方が公平感があり、単価向上の余地があると考えています。

この点で、まだPR TIMESには市場拡大の余地が残されていると思います。

なお、PR TIMESの収益予想のモデルは、ごろんちゃん(さん)の下記のブログが非常に参考になります。

売却のタイミング

最後に、売却のタイミングを整理したいと思います。基本的にはbuy&Hold戦略なので、持ち続けるが方針なのですが、上記のストーリーが崩れた時は売り時だと考えています。

重視しているのは、KPI(特に利用企業数)の鈍化です。先程の売上高の構成要素を分解した場合に、予測しやすいのが利用企業者です。

3~5年の目線で考えると、上場企業(約3800)と都道府県(47)には上限があるので、まずは網羅を目指して開拓できるかが第一ステップ。そして、第二ステップが非上場企業への浸透(特に、IPOを目指すベンチャー界隈への進出)が鍵になると考えています。

そして、5年後以降は、海外進出になるのだと思いますが、さすがに予測できる未来は超えているので、現時点ではここまでを視野に入れておきます。

そして、最後は海外展開&新規事業の失敗です。正直なところ、これが理由でストーリーが崩れる可能性が高いと考えています。

まずは、海外展開での懸念です。PRは、言語のニュアンス、地域別のSNSの発展や特性という文化的背景に左右される事業と捉えています。そのため、日本人が多いPR TIMESにおいて、non-nativeが主導になって事業を進めるには相当な苦労があると思います。

また、native担当者が入社しても、日本のPR TIMESで成功した編集の細かさや伝わり方の考慮など日本的な伝統芸能とも呼ぶべき職人達のノウハウを吸収して、母国用にカスタマイズできる優秀な人材はそう多くないと思います。

今度は新規事業の観点からの懸念です。Jooto (タスク・プロジェクト管理)、Tayori (カスタマーサポートツール)が事業として成長できるかが未知数だと考えています。コンセプト刷新をしているのは知っていますが、あくまでも既存の業務ツールの範疇を超えず、既存のサービスと比較しても強みがないと考えています。

例えば、WBS (Work Breakdown Structure)の作成は、Excelが主流であり、他にもMicroSoftにはMicrosoft Projectがあるし、JIRAでもWBSガントチャート作れるので、このあたりに勝てる要素が思いつきません。

そのため、海外進出と新規事業に失敗し、赤字を計上して会社本体の財務諸表に影響を与えるレベルになった場合は売却を検討すると思います。

最後に

最後の項目で懸念材料はあるのですが、完璧な会社なんて存在しないと考えています。ちゃんと補足しておくと、PR TIMESは私のポートフォリオの中でも主力の銘柄であり、長期的に保有していく可能性が非常に高いと思っています。

毎年、四季報を通読してスクリーニングをして銘柄分析を行っているのですが、記事を書いた時点で3,767社ある中で、私の中ではNo1の銘柄ということです。

先日、個人投資家向けオンライン質疑応答会にも参加しましたが、非常に好感を持てる内容でした。定期的に観察をして、ストーリーが崩れずに成長し続けているかを見守っていたいと思います。


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