第4回:アナログを求めて
shiroANのキャラクターデザインの方向性が決まり、イラスト制作とMV制作を並行して進めていくことになった。
具体的には、この記事のサムネイルにも掲載されているキービジュアルとしてのshiroANのイラスト、MVに使用するイラストをときちさんに描いてもらいつつ、平子さん側でMVの音源制作を進めてもらう。自分はそのディレクションと進行管理などをしつつ、MVを制作するクリエイターを起用することなどをする。
ここでいうMVは、shiroANプロジェクトオリジナル曲第1弾となった「アナログで変わった正解で」のことだ。公開は2021年11月24日なので、約半年前から制作をしていたことになる。
アップ直前まで修正をするアニメ業界のような修羅場はなかったが、完成までには紆余曲折を辿っていく。何事もそうだがゼロからイチを作り出すのは楽しくもあり大変でもあるのだ。
いろいろと同時進行で進んでいった準備段階だが、打ち合わせ時にshiroANのデザインのポイントとして上がっていたのは、ヘッドホンとカセットプレイヤーの存在だ。
オリジナル曲を歌っていくということで、当然shiroANちゃんは音楽も好き。その音楽を聴いているのが、アナログなカセットプレイヤーとそこから伸びたヘッドホン。
TV版の『新世紀エヴァンゲリオン』で、主人公の碇シンジが1人音楽を聴いていたビジュアルイメージに近い。自分もときちさんも、数多くのアニメ作品に影響を受けているので、打ち合わせの時「これはこの作品のこれ」というイメージの共有がしやすいのもありがたかった。
時代の最先端をゆくデジタルなVTuberとアナログなアイテムは、ギャップ感を出す上でもいいだろうということで、打ち合わせの中で決まっていく。
カセットプレイヤーとヘッドホンのデザインとしては、80年代から90年代前半の実物を参照にすることにした。レコードを多く所有する音楽好きな平子さんにハードオフを回ってもらい、当時使っていたものやイメージに合いそうなジャンク品を集めてもらう。
自分は1989年生まれなので、幼少期はカセットとCDをラジカセなどのハイブリッド製品を使って音楽を聴いていた世代だが、メーカーへのこだわりなどはなかった。
SONYのウォークマンが隆盛した70年代末から80年代にかけても生まれていないため当時の肌感覚もないのだが、平子さんからあがった「SONYは高級で買えなかったのでAIWAの方が親しみやすかった」という意見に基づいて、AIWA製のデザインもベースにして考えていくことにした。
意匠まわりのリーガルチェックなどをしつつ、ときちさんに実物を参考にしながらデザインに落とし込んでもらう。
最終的に、全体的に白いイメージのshiroANの耳にオレンジのイヤーパッドで差し色を入れ込む現在の形となっていった。
ちなみに、このときの資料として平子さんが買ってきたジャンク品を少し改良して、夏コミのshiroANコスプレ衣装のアイテムとして使用していた。ジャンク品なので音楽は聴けないが、形として残り続けることで数十年後に思っても見なかった使われ方をされることもあるのだ。
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