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”うそっこ”という仮想空間

世の中の出来事

12月1日 - フランス・コルシカ島のアジャクシオ空港で、ユーゴスラビア航空のDC-9型機が墜落、乗客乗員178名が死亡。
12月11日 - エルサルバドルで、ゲリラに対する抗議運動を行っていた市民900人が軍隊によって殺害される。
12月13日 - ヴォイチェフ・ヤルゼルスキポーランド首相、独立自主管理労働組合「連帯」による共産主義政権反対運動を牽制するため戒厳令施行。
12月31日 - ガーナでクーデター発生。

保育園児の仮想空間

1981年12月7日月曜日は朝からどんよりとした曇りの日だった。
大人たちにとって”師走”と言われるこの時期は、一年の中でも取り分け忙しい時期でもある。
しかし子供にとってこの時期は、普段より時間がゆっくりと過ぎていく感じだ。
大人たちが忙しい分、逆に子供等は精神的に余裕が生れるのかもしれない。
この日の午前中はクリスマス会で披露するミュージカルの練習はあったが、
午後は帰りの時間まで自由時間となる。
お昼を食べ終わったら曇り空の下、みんなで園庭で遊ぶ。
3輪車を自動車に見立ててお店に買い物に行くと言い、園庭隅っこにあった生垣に自生していた野草の種子を集めてくる。
この遊びは子供同士がイメージを共有できることが重要になってくる。
いわば電子計算機を使わない原始的な脳内仮想現実である。
実際には保育園の園庭という現実空間にいるはずだが、お互いに脳内でイメージした空想の世界に半分入って遊ぶ。
遊ぶ人数が多くなると当然イメージの共有が難しくなり、成り立ちににくくなる。
こんな遊びを当時幼児たちは
「うそっこ」
と呼んでいた。
空想世界を友達同士で共有し、それを遊びにする「うそっこ」は、
小学校入学時には消えて無くなっていた不思議な遊びであった。
この日の天気も、靄がかかった空を背景に、それぞれの空想世界の中で遊びが繰り広げられた。

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