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小学校の世界

1984年12月中旬の朝。
小学校登校班で小学校に向かう途中での出来事である。
私は当時小学一年生で、周りは自分より大きな先輩ばかりである。
その日は「大御神(おおみそかん)」と「おとうふ」が現れた。
こいつらは、
「この世界の人間じゃない。」
そう直感した。
私が知る限りこんな連中は、どの小学校にもいないはずだからだ。
だが私には、どうすることもできなかった。
こいつらが何を考えているのか、何を目的としているのかわからない以上下手な手出しはできない。
私は、ただ見ていることしかできなかった。
大御神は自分のことを岩小(岩村田小学校)の最高意思決定機関である最高評議会の一員だと言った。
その証拠に私の前に姿を見せた時、岩小の最高位である主神を呼び出してくれた。
だが、それは嘘だった。
最高評議会というのは、主神を含む8人の神々によって構成された組織で、大御神の言っていることはデタラメだったのだ。
大御神が言うには、主神をはじめとする他の7人は、今の地位を追われて追放されたそうだ。
そして、追放された7人が結託して、新たに8人目の神として自分を生み出したのだという。
つまり、大御神とは、主神以外の7人が作った存在なのだ。
7人のうち1人は、もう既に他の小学校へ転校しているらしい。
そして、大御神の正体を知っている者は、主神を含めた4人だけだという。
残りの3人も、大御神の存在を疑っているようだった。
しかし、その3人の中でも、特に疑い深い者がいた。
それが、私の目の前にいる女、「オトウフ」だった。
オトウフは、私に向かってこう言った。
「お前も何か知っているのではないか?」
と……。
もちろん私は知らないと答えた。
本当は知っていたのだが、ここでそれを話しても意味がないと思ったからだ。
それに、もしオトウフが本当に知らなかった場合、私のせいでオトウフの身に危険が及ぶかもしれない。
だから私は、何も言わずに登校班から立ち去った。
これ以上、あそこにいるわけにはいかなかったからだ。
その後すぐに、私はあの2人に監視されていることに気づいた。
そして、しばらくすると、今度は男が現れた。
小学6年生の男だったが、その男が只者ではないことはすぐにわかった。
その男は「ツグイ」と名乗った。
ツグイは、あの2人と同じような雰囲気を持っていたからだ。
結局、私は自分の正体を明かすことなく、この場所を去ることになった。
3人からの監視がなくなったことで、少しだけホッとした気持ちになったのを覚えている。
ただ、あの2人には気をつけておいた方がいいだろう。
大御神やオトウフよりは信用できると思うが、油断は禁物だ。
私の存在が知られたら、また面倒なことに巻き込まれるに違いない。
だが、私は後悔していない。
あの2人や大御神と出会ったことも、こうして自分が学校生活を愉しく送れることさえも奇跡だと思うからだ。
だから、私はあの2人を恨んではいないし憎んでもいない。
むしろ感謝したいと思っているくらいだ。
これから先どんなことが待ち受けているかわからないが、今の私にとっては些細なことだ。
何故なら、今の私にとって大切なものは他にあるからだ。
だから私は今日も楽しく学校生活を送ることができる。

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