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焼酎屋(しょーちや)さん

国道18号沿いにあった土屋酒店のことを地元では”しょーち屋”と呼んだ。
”焼酎屋”が訛って”しょーち屋”となったようだ。
高台にあった、おばあちゃん家の庭先からはうっすらと富士山がはるか遠くに見える。
五月晴れのすっきりとした青空の下、国道18号線に続く長い坂道を下る。
坂道の道端には紫陽花の花と出来たばかりの水たまり。
国道18号の歩道を西へ歩いていくと、旧道へと続く三叉路が見える。
そのすぐ先が”しょーち屋”さん。
三叉路の三角形の土地に建てられた、たくさん自販機が並んだ休憩所の先にお店がある。
昭和の自販機コーナーは華やかな商品揃で、気分も今日の天気のようにうれしくなる。
しょうーち屋さんでお菓子とアイスクリームを買ってもらい、駐車場の縁石に腰掛けて食べる。
帰り道、少し遠回りをして、小高い丘にある公園に立ち寄る。
遊具は滑り台とブランコだけしかない小さな公園だが、まだ2歳の私には夢のような世界だった。
空に浮かぶ雲と同じ高さの高台の公園に設置されたブランコ。
どこまでも広がる真っ青な空と、白い綿菓子みたいな雲の間を行ったり来たりして遊んだ。
そんな遊び場での記憶が残っているせいか、今でも空を見上げるだけでわくわくする。
そして今日も、あの時から続く青い空の下で私は生きている。

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