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やきいも大会

岩村田北保育園の敷地内にあった農園では、秋になると薩摩芋が毎年収穫された。
保育園の近所にある”円満寺”というお寺の境内にはたくさんの木が茂り、秋になると紅に染まったいい香りの落ち葉で地面が覆われていた。
11月になると毎年恒例の”焼き芋大会”を行う為に、保育園全員で円満寺に行ってたくさんの落ち葉を掻き集めてビニール袋で持ち帰る。
焼き芋大会当日の朝。
保育園に到着すると園長先生と男性職員を中心に、焚火の準備を始めていた。
朝は少し肌寒かったが、天気の良い青空が美しい日であった。
私たち園児と先生等は薩摩芋を濡れた新聞紙で包み、その上からアルミ箔で包んで下準備をする。
園庭には直径1メートル、深さ40センチメートル程の穴が2ヵ所掘られており、そこに落ち葉が入れられて火が灯された。
火が大きくなると落ち葉だけでなく、園庭の植木を剪定した枝なども投入された。
年長の男子が枝運びを手伝います。
白煙が上がり、いよいよ焼き芋大会の始まりです。
当日は、いつものルーティーンはありません。
焼き芋大会といっても、園児は焚火を見ながら園庭で遊ぶだけです。
風向きによって園庭で遊んでいる園児たちを煙が襲います。
目が痛くなったり、咽て咳き込んだり、煙の流れる向きを観察しながら遊びます。
午前10時を過ぎると、ぽかぽかと暖かい陽気になってきました。
秋の青空が美しい小春日和です。
やがて焚火の火が小さくなると、準備していた薩摩芋を燠(おきび)の中に投入し、その上に土を被せます。
給食を食べてる間も薩摩芋は、燠によって蒸し続けられます。
いよいよ本日お楽しみの3時のおやつの時間が近づいてきました。
園長先生が鍬を手に取り、慣れた手つきで焼き芋が掘り出されます。
掘り出して少し時間をおいて焼き芋の温度が下がった頃、皆に配られます。
「いただきます」
の挨拶で、焼き芋を頬張ります。
今年の秋に取れたばかりの新しい薩摩芋は、ホクホクした甘み控えめな素朴な秋の味でした。
おやつを食べ終わって太陽の日が西に傾くと、帰宅時間です。
家に帰宅した16時過ぎた頃は、既に夕焼けが西の空を赤く染めていました。
夕食の時間。
昼間着てた園児服(スモッグ)からは焚火の煙と共に、穏やかな秋の太陽の残り香が蘇り、家族のお土産話に花を咲かせます。

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