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同人屋として今後やりたいことを明らかにしてみる

こんにちは、アールワークスのシロジです。

アールワークスという創作小説同人サークルで字書きを担当しています。
しばらくイベントもなく作品を作る機会もなさそうなので、これまでのことを適当に振り返りつつ、これから先のことをぼんやり考えてみたいと思います。

まあ、なんか作文したい気分になったとかそんなとこです。

1.今までやってきたこと:装丁編

アールワークスは、2013年に創作BLイベント「Jガーデン」に参加するため、BL小説同人誌を作ったところから始まりました。
字書きのシロジ、絵描きのクロエ、二人合わせて「シロジクロエでーす」という感じで。ネタ出しもデザインも二人で相談して作っています。

普通の同人誌ではなく特殊な装丁にしたかったのですが、売れるかどうかもわからないデビュー戦にそれほどお金をかけられるわけもなく、自分たちでできる加工は手工業でやるようになった…のが、「おもしろ特殊装丁サークル」への第一歩でした。

以来、マッチ箱に豆本を入れてみたり本の小口を真っ黒に塗ってみたり、狂気じみた手作り特殊装丁で読者の皆さんを楽しませてきたと自負しています。その遍歴をまとめた本は、サークルの看板ともなりました。すでに2冊目のメイキングを出せる程度には、また経験値がたまってきています。

基本的に特殊装丁なので作れる数にも限度があり、また同じ形状での再版は難しく、ついでにいうと読みづらかったりも…
なので、中身だけをまとめた再録本も作りました。再録の際にはできるだけ装丁や段組をシンプルにして、中身だけを読みやすいように作りました。

アンソロジーという形で、字書き仲間から原稿を集めてまとめたりもしました。
単に本を編集するだけでなく複数人のスケジュール管理や情報共有など、プロジェクトマネジメント的な作業も経験しました。
字書き個人としては、自分があまり中身を書かなくてもそれなりの厚みになるのが「楽だな…」と思いました。

一連の流れからの「楽だな…」がどういうことか、よく考えてみたわけです。

2.これから本当にしたいこと:装丁編

安く済ませるためとはいえ、DIY特殊装丁は楽しいです。
印刷所から加工を必要としない完成品が届くと、もの足りないくらいです。
先日久しぶりに「表紙を切るだけ」という加工の本を作りましたが、たった2時間で終わってしまい、「これだけ…?」と拍子抜けした事実に愕然としました。
私たち、めんどくさい工作に慣れすぎてる…!!
表紙にハサミを入れる程度では満足できない体になってしまったようです。
工作アイデアもまだいくつか待機中のがあって、当分はネタ切れの心配もありません。

じゃあ、本だけを作って中身を誰かに書いてもらう、あるいは誰かの本を装丁させてもらえばいいのでは? 自分がテキストを書かなくても本が出るなんて「楽」じゃない??
と考えて実際に何度かやってみたりもしたのですが…どうも勝手が違うんですね。
装丁を考える→物語を考える→執筆する→工作する、という流れが楽しいのであって、編集だけ、デザインだけ、工作だけしたいのではないな、と気づきました。

しかも他所様の本でそんなにクレイジーな装丁もできない。予算の融通も自作だからできることです。作者のイメージや要望もあるでしょう。付随するプロジェクトマネジメントも楽ではありません。
結局、私の仕事はマネジメントと宣伝だけ、ということになってしまったりもする。一般的な認識はともかく、私にとっては「クリエイティブな同人活動」とはいえない状態になってしまいます。
仮に「この話をパッケージしてほしい」と持ち込まれても、たぶんそれはただの「受託」であって、万一報酬が発生するとなっても受けられない気がするのです。

ということで自戒も込めて、主催アンソロジーや合同作品でないかぎりは、他所様の本をどうこうすることは今後ないと思います。
「楽」だからといって自分で書くことを怠ってしまうと、結果として「楽しくない」ので。
これまでなんとなく、自分を「字も書く器用貧乏」的なポジションに置いてきたけれど、やっぱり字書きなんですよね。「字は書かなくていい」と言われることを想定すると、それなりにムッとしますし。

小説サークルの主役たる「字書き」の地位は、安易に譲れないようです。

3.今まで作ってきたもの:物語編

最初に作った『喫茶エクスリブリス』は、アンティークな異世界の日常ものを狙ったBL作品でした。
表紙にキャラクターのイラストを配して、二人の恋愛感情を主軸に物語を構成した、とても「BL的」な本だったと思います。二人は結ばれてめでたしめでたしとなったところで終了、次の物語へ向かうつもりでした。

ところがなぜか、続編希望の声が出てきました。すでに完結した二人の物語を書くことはできなかったので、同じ世界観で別のカップリングの話を書きました。それが正解だったのかどうかはわかりません。
それから、このシリーズはずっとそのパターンでやっています。

ただどうしても、カップリングの成立を示す性描写を物語の中に組み込めないということがわかってきました(R18パートだけ別冊にするというパターンを3回やった)。
濡れ場に必然性を持たせるという目的で、『REBOOT』を作りましたが、今度はそれ以外の本筋や設定をうまく乗りこなせず、「両立」とまではいきませんでした。

現代ものの『よすが』も、読み切りの予定で作った短編集でした。こちらはあまり深く考えず、最初から成立しているものとしてカップリングを設定しましたが、主軸が「恋愛」という点に組み立てにくさを感じていました。

シリーズイメージのグッズなどもそこそこ売れ、たまに感想などいただく中で、実は性愛や恋愛の要素はあまり求められていないのではないか…もちろん特殊装丁が売りというのもありますが、もっと全体的な世界観や物語を見ていただいているのではと思えるようになってきました。

そんなこんなでついに、BL(恋愛や性行為)は書かない、という結論に至りました。
現在、再録以外でBL本は作っていません。

あれっ、なんのためにBLしてたんだっけ…となったわけです。

4.これから本当に作りたいもの:物語編

BLサークルとして活動を始めたのに、BLを捨てるというまさかの展開です。自分たちでも驚いています。
そもそもなぜスタートがBLだったかといえば、二次創作でBL妄想をしていたからです。そのせいでBLは全部好きだと思い込んでいたけれども、実際に商業BLにはほとんど触れていなかったのですよね。今も興味はあまりないです。
BLは一枚岩ではなかった…意外と盲点でした。

ゆえにどこまでも二次創作的な捉え方しかできなかったのか、物語に組み込むスキルや熱意が不足していたのか。
どちらにしても、あまり重要でないことがじわじわと明らかになってきていました。

そこで、ストーリー上はBLを挟まず、Webでセルフ二次創作としてBLを描くことにしました。あくまで「原作」を読んだ人にだけ楽しんでほしいので、本にパスワードをつけて。
執筆時は恋愛などの配分を気にせず本筋に集中できるし、二次創作ではタイミングや流れを気にせずいちゃいちゃすることができます。
実際にはまだ『紅蓮』でしかできていませんが、しばらくはこの形でやっていくつもりです。

作品テーマについては、まず「日常もの」が致命的に向いていなかったという反省があります。
なにかしら突飛なストーリーを求めてしまう癖があると同時に、淡々と情景描写を重ねる根気がないんですよね。よく考えたら「日常」は書きたいものじゃないな、と気づきました。
現代のリアルな人間とか、同性であれ異性であれ普通の恋愛模様とか、そういう方面を描くことにあまり興味がないのです。その時点でBLにしろGLにしろ「恋愛モノ」はムリだった、分不相応だったのですよね。

あとねーやっぱり最強の非日常は変身ヒーローだと思うんですよねー。もうニーズがどうとかじゃなく好きなんですよ変身ヒーロー。リアルな日常の恋愛と対極にあるじゃないですか変身ヒーロー。知ってますか今のニチアサでのストイックなまでの恋愛フラグ回避(早口)

…そもそもジャンルがちがった、というのが遅すぎる発見でした。

ジャンルといえばもうひとつ…
装丁メイキング本については、コンセプトをしっかり決めないでなんとなく作ってしまったのもあって、実用的なノウハウ本と誤解されることも少なくありませんでした。アンケートではもっと「すぐ使える」内容を期待する声もありました。実用的なDIY特殊装丁なんかあるはずないんですが。
こちらのアピールがまちがっていたと受け止め、次回があればもう少しエッセイ寄りに作りたいと思います。

伝えたいのは明日から使えるライフハックではなく、純然たる狂気です。

5.今後やりたいことを明らかにしてみる

外側と中身の両方をコントロールできる本だけを作る。
ほんとうに書きたい物語を、書けるシチュエーションで書く。
むりやり恋愛や性愛を組み込まない。
実用っぽさで気を引かず、感情や熱意を伝える。

つまり、作りたい本しか作らない。
同人だもの。

始めから目標が明確であれば、こんなことを今わざわざ言うこともなかったのかもしれません。多くの人は、意識せずにやっているはずです。私も、二次創作では息をするように好きなジャンルでやりたいことだけやっています。同人だもの。

一次創作では、読者ありきで少しかまえて入ってしまったきらいがあります。そのためによく迷子になってました。
小説を書くこと、絵を描くこと、編集すること、工作すること、イベント参加すること、いろんな要素があって、そのどれもがゼロイチで好き嫌いや得手不得手を言えるものではないんですよね。それすら気づいていませんでした。
私は小説を書くのが三度の飯より好きというわけではないけれど、まあ絵を描くよりは楽だし得意かな、と今は言えます。
編集はかなり自分をすり減らす行為ですが、それに見合うだけの「楽しさ」が期待できるなら動きます。工作も同様です。「楽しさ」第一。

なんとなくふわっと憧れやら勢いやらで始めてしまって、着地点が見えないままだらだらと続けてきてしまった感はあります。ただ、そのおかげで整理できたことや学んだこともたくさんありました。こっちだと思ったらあっちだった、という軌道修正もできました。
これからもちょっとずつハンドルを切りながら、でもアクセルは踏み込みっぱなしで走っていきたいです。

ブレーキは壊れてるくらいがちょうどいいと思うのです。

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