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濡れた狂犬 3/5

今は野良犬となり、隠れられそうな場所でヒソヒソと暮らしている俺だが、数年前ミスを犯すまでは普通の飼い犬だった。

両手足が凍つきそうな日の朝、俺は一家のお父さんと散歩に行った。
戦時中の戦闘機の弾痕が残っている鉄橋、見慣れた街路、今はシャッター街となった商店街。
いつもの散歩道。 のはずだった。
住宅街に入り少し進んだ先、急に路地裏に入った。
そこにはガタイのいい男がいた。
顔は帽子を被っていて解らない。
しかし服を着ていてもわかる程の筋骨隆々具合。

「あい・・ば・?」
「き・・けん」
「ぐ・・あ・りろく・・・まんえ・・」
「じ・・ぐらむも・う」
「ま・・あり、すこ・・・てろ・じ・・まんだ」

はっきりと聞こえなかったが、取引の様だ。
お父さんは分厚い茶封筒を男に渡し、白い粉を貰っていた。
そのあとは何も無かった様に帰路についた。


次回は8月17日(木)更新です。

お父さんと男が話していた内容は8月20日(日)に投稿します。

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