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「特別」って「有名になること」だけではないよね

「君は世界に一つだけのオンリーワン」
 という花屋の花がそれぞれ綺麗だねという話でもなく
「なぜなら彼もまた特別な存在なのです」
 なんて特別な製法で作られた甘い飴の話をするわけではない。

 猟奇的な殺され方でもしない限り世間のニュースを騒がせることは現状態では予定がないくらいの無名な1/60億人である。かといって、自分と全く同じ個性を持つ人は皆無であるから唯一無二ともいえる。まあ、こういう人を褒めるソングが多いこと。確かに唯一無二だよ、花屋の花はそれぞれ綺麗だよ、野草だってきれいだしね。でも私が言いたいことはそういうことじゃないんだ。
「特別になりたい」と。

 小さい頃はいつか異世界に呼ばれる勇者だと思っていたから、ドラゴンに恐れないように蛇とかを見て耐性をたてていたりした(おかげで今でも爬虫類は好き)。
 もちろん今異世界に召喚されて勇者として魔王を倒せと言われたら、「体力落ちてるけれど大丈夫かな」なんて思いながら、とりあえず旅に出る。で、早めに体力が尽きて教会に即効行かされる。もしくは途中で宿屋を出たくなくて人知れず泣いていたりする。
 それが学生時代の特別だった。読んでわかるよう、今でもそれは私の特別だ。

 しかし、異世界に勇者として呼ばれるといった受け身な特別は、あまりにも受け身すぎて自分からできることがない。ならば私は「普通」ではなく「特別」になりたい。でもどうやって?
 しかし、最近気づいたのだが「どうやって?」という疑問の前に「自分なりの特別」という定義をしなければいけないことに気づいた。

・人を好きになって、その大好きな人がパートナーになりお互い唯一無二になる特別
・人よりも年収が高く稼いでいる特別
・ボランティア活動などに従事し、対象者が少しでも良い生活を送るのを見る特別
・毎日朝起きたときに十分睡眠がとれている状態で、すっきりしている特別
・インスタにきらきらした投稿を毎日する特別

 書き出すときりがない特別があると気付く。
 「特別=有名」という安直な思考ではなく、自分が何にプライオリティを置いているのか考えてみることをおすすめする。そうではないと、人見知りで休日はお布団の中でマンガを読むのが至高で目立ちたくないのにアイドル、みたいなことがおきてしまう。目立ちたくないのにアイドルってわけがわからなさすぎる。その時点で「有名」にはなっているかもしれないけれど、その人が目指す特別とはずれているんじゃないかな、と思う。

 ちなみに、全ての特別を書き出して一気にかなえようとすると、目標が定まり切らず結局ぐだぐだ、という、新鮮な鯛の刺身にカカオにこだわったチョコレートをそえて、シェフの今日の青汁風といったことになりがちなのでおすすめしない。もしどうしても全部を叶えないと特別でないというならば、一つを大成し芋づる式に叶えていくか、一日が68時間くらいある世界線に入れる人にだけおすすめする。

「普通は悪いことではない」という意見もある。
 でも、きっとその人たちは、自分が持っている「特別」を特別だと認識していないか、今持っている特別を捨てたいと思っている人たちだと思う。

 生きていく上で、自分だけでも自分を好きになりたい。
 その時、自分だけの特別が、一つの甘くてほろ苦い重要なものになるのだと思う。

 自分が普通で、それに満足しているという人に、「いや違うよ、お前は恵まれているからその特別を見つけ出して大切にしろ!」なんて言うわけではない。別に満足しているならばいい。あえて特別を見つけ出さなくていい。

 そうではなく、「特別」になりたいけれど、オンリーワンになりたいし甘い飴をおじいさんからもらいたいっていう漠然とした気持ちの人には、「そもそも特別って何?」と問いかけて、「どうやって?」の前に「自分なりの特別」を見つけたほうが、自分の理想の状態につなげられるよ、という話である。

 ちなみに、私は、自分が書いたエッセイでも小説でも、何かが一つの本になって、家の近くの図書館の本棚に収まっていることが「自分なりの特別」だ。

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