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昨日の晩ご飯と、忘れられない日々

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短歌作品まとめ
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海の暁鐘  【短歌連作】

美しく触れることすら不確かな海面に立つ名もない少女 棺桶に詰めた海水に手を合わせ埋葬する日 今日は海の日 戻れない海を知らないあの頃に それならいっそ夜を敷き詰める 青藍の海を見つめて生きている私は世界を見様見真似で 暁鐘と重なる波音放たれて彼女の生は海へと散っていきました

¥200

【短歌連作】花集六花 (かしゅうろっか)

あの娘だよ花束裂けて生まれたの檻から出すのはまだ早い すやすやと眠った彼女の枕元 突き刺さりそうな花びらをまく夜 飛び降りた彼女の口から飛び散った花を集めて編むワンピース 過去形になった彼女を思い出すどうして花になってしまったの ポケットに入れた花びら熱に溶け君に渡すはずだった餌だった 目尻から流れる花が舞い上がり驚く子供の視線は優しげかな =============== どうも、コランです。 生まれて初めて短歌を作ってみました。 「花集六花」は造語です。 花に

¥100

夏狂十三歌  【短歌連作】

夏の雪100年前のことだった君と僕だけが眠れぬ夜だった 泣いていた胸にナイフを食い込ませ死んだ海風見えないままで ぽたぽたと光をこぼすカーテンをぱたぱたとうちわで扇ぐ午後 ラムネ瓶 浴衣 向日葵 かき氷 夏の部品に我もなりたし 指先でゆっくりプールを傾けて零れた場所に咲く花青い星 口移し星を与える方法はこれしかないと知る恋人たち 新品の星にまたがり真夜中を横切りたいねハイスピードで ひまわりの背中に掴まりわたしたちここで思い出を保存したい 煙突

短歌6首

春眠り夏消え秋散り冬は尽き君と再び会える百年後 ごみ捨て場通り過ぎる影捨てられたごみを創造した偉大な影ばかり バス停を通過する風ポケットに入れた私は街と移動する 静止するロボット兵の両目には花びらついて「モウコロセナイ」 抱きしめて消えたあなたは生きていて何処かの国の花に見惚れてる 隅っこに座ってうつむき喋らないあの子は海に月を浮かべる人

夏眠時間 【短歌連作】

1. 夏を着る準備は先ずは裸足から指の隙間に風の予感 2. 音もなく光り始めた花を抱き君と溶けゆく夏霞かな 3. 陽炎につもる透明掻き集め夏のぬくもり誘拐事件 4. 夏祭り並んで歩く嬉しさに君に手渡すサイダーを振る 5. 火をつけた線香花火は燦燦と輝き続けて月と同期する 6. 太陽と風の足あと追いかけてスイカ畑と澄んだ川一つ 7. 夕顔の呼吸は静かに白雨(ゆうだち)の粒にまじって今日が閉じゆく 8. 海を汲み通り過ぎゆく雲を背に二個目の地球を組み立てて夜 9