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死闘!ピロリ菌よさらば!

 「この腹の肉がなぁ。」歳のせいでもあるが、高齢者になると腹の肉はなかなか落ちない。
実はこの腹の肉はピロリ菌との死闘を勝利した名誉の証なのだ。
7年前、かなり前から私は常に胃の調子が優れなかった。
もたれる。とにかくもたれる。
昼食を食べたら、たとえそれがうどんであろうと夕食までもたれている。痛みもある。
流石にこれはまずいだろうと、胃カメラを飲む覚悟を決めた。
今は眠ったまま胃カメラが出来るそうじゃないか。
なんと医学は進歩したもんだ。
むかーし胃カメラを飲んだ時は吐き気との闘いだったのに。
寝ている間に終わるとは楽勝。
 胃カメラ実施の朝、大した緊張も無くまな板?に上がった。
さぁ、早く眠らせてくれとその時をちょっとワクワクで待つ。
「眠くなるお薬入れますね。」
優しい看護師さんの声。
「はーい、お願いします。」
さぁこい、夢の中。
???
「あのー、全く効きませんが。」
「じゃあ、お薬増やしますね。」
とても優しい看護師さんの声。
???
「眠くないんですが。」
「あらぁ、効かないんですね。たまに効かない方もいらっしゃいますが大丈夫ですよ。」
とてもとても優しい看護師さんの声!
このままやりますか?
やりますよね?
そして胃カメラを飲み込む。
先生がお上手で思ったほど大変ではなかったが、終わった後はフルマラソンを走ったくらいの疲労感だった。走ったこと無いけど。

そして、いよいよ先生の診察。
ふわっと穏やかで優しい先生に私は兼ねてより全幅の信頼を寄せている。
さぁ、何でも言ってください。
受けとめる覚悟は出来てます。
先に言っておくが、実の父は3回の癌から生還した。
最悪の結果だとしても受け止めます。
「あー、ピロリ菌による胃炎ですね。除菌しましょう。」
と先生は笑顔でおっしゃった。
「はぁ、ピロリ菌ですか。」
大病を覚悟していたので拍子抜けしたが、ほっとした。
「薬だしますね。ほとんどの方がこれでピロリ菌退治できますから。」

いただいた抗生物質の量におどろいた。
具体的に言えば、膀胱炎の時にもらう4倍の量の抗生物質を1日3回。
一週間飲まねばならぬとのこと。
しかも禁酒。一週間も。
今日のこの一杯のために仕事頑張るタイプの我が身にはこれは辛い。
とはいえ、きゃつを退治するために頑張るしかない。

 何とか一週間の苦行を終え、一定の期間をおいて審判の日。
私はきゃつは間違いなく退治できたと確信して先生の診察を受けた。
診察の前に色々な手順を踏むがそこはさくっと省かせてもらう。
少し困り顔の先生。
「まだいますね。後一週間薬追加しましょう。大丈夫!99%の方は2回目で成功しますから。」
「はぁ、そうですか。」
まぁ、私は何かと薬が効きにくいタイプだ。
こんなこともあるだろうと納得し、
2回目の除菌開始。
抗生物質を摂りすぎると下痢や吐き気があるかもと言われたが、全くそんな事はなくいつまのように便秘ぎみに日が過ぎた。
また禁酒。これは修行だ。修行と思い乗り切ろう。
一週間飲み切った。
また審判の日。
診察室の先生は更なる困り顔。
「いやーまた駄目だったんですよ。
おかしいなぁ。3回目は自費になりますけど、どうします?」
3回目からは自費かい!
こういう稀なやつに保険が効かんのかい!と突っ込みたいが、優しい先生を困らせるわけにはいかない。
何より、一つも先生は悪くないのだ。
「3回目、お願いします。」
「うちの病院で3回目は初めてだよ。」
嬉しくない話だ。
抗生物質の種類など変えていただいて除菌3回目。

神に祈るしか手はない。
無神論者だから亡くなった愛犬と愛猫に祈りを捧げた。

またまた審判の日。
さすがに、さすがにいけただろう。
9回の裏満塁ホームランを決められるだろう。
診察室の先生はすでに少し泣きそうな顔に見える。
「あと少しです。ごめんなさい。4回目やりますか?」
何ですと!4回目!
満塁ホームランならず。
「もちろんやります。」と答えるしかないじゃないか。
しかも今回は抗生物質倍量で期間も2週間との事。
倍量で2週間!
まじですか?2週間の禁酒!
後がない。四面楚歌と臥薪嘗胆の日々がまたまたまたまたはじまる。
除菌4回目発射。
「具合が悪くなるようなら中断してくださいね。」
申し訳無さそうに先生に言われたが何事もなく今回も飲み終えた。
むしろきゃつが減った分胃の調子がいい。

またまたまた審判の日。
診察室に入ると先生は満面の笑顔だった。
「おめでとうございます。除菌成功です。」
うそ!やった!
延長裏の満塁ホームランだ。
私はついに勝利をもぎ取ったのだ。

こうして死闘の日々は終わり、私は健康な胃を手に入れ美味しいご飯を食べている。
お陰様で一年で4キロも体重が増えた。
全部腹に蓄えられたようだ。
ピロリ菌よさらば!腹の肉よこんにちは!
結論、日々胃もたれより、日々美味しくご飯を食べられる方が百倍人生は素敵になる。
高齢者は多少ぽちゃの方が長生きできるというではないか。
私は文字通りゆたかな(贅肉で)を手に入れたのだ!
さぁ、今年も美味しい韓国料理を食べるために韓国へ行こう。

#エッセイ部門

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