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姉の結婚

帰りの船の中、気だるさとともにこんな短歌を読む。

君は泣く 真白のドレス 秋麗
鐘は重たく 軽やかに鳴る

姉が結婚した。

父母は泣き、弟夫婦も泣き、私は泣かなかった。

小さい時、一番よく泣いた私は、自分の感情が大きく動く時ほど泣けないようになってきた。


美しき、よき日。

その一方で、満たされてないような思い。

親戚のちくちく言葉を抜きにしても、私の感情は薄いモヤがかかっていた。

そのことに目を瞑り、どっぷり姉の幸せに浸っていた。姉の最良の日になるよう、願った。

だが、今は悲しみがひょっこり顔を出したみたいで、ひと休憩しよう。秋晴れの、冷水のような風に冬を感じる。


笑うこと
そうすることが正しいと
生きてきたのか
分からずにいる

過去のことを後悔はしていない。
けど、姉があまりにも綺麗だったことや、チャペルの蒼さが、翳りを落とす。

いつか、わたしも愛を誓うことができるのか。

両親への感謝の手紙を、あんなにお手本のように読めるのか。

私の言葉は通じにくい。

私の愛は、迷路だ。

美しいものを美しいと思う自分が好きだが、
それを共有する難しさは常にある。

分かち合うために、好きになってはいないけど、
分かち合う、も美しいから。

1人でいても、2人でいてもいつも感情はうるさくて、
穏やかに保ったとしても、深いところでは嵐のことも、その逆もある。

できるのか 愛されること 愛すこと
愛してもらう そんな覚悟が

あまり自分のことが好きではない。
そのまま参列した。
ただ、姉の幸せは、両親の喜びは忘れることができない眩しい1日だった。

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