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【短編Tale】子供のよっぱらい


空が曇っている。
どんよりとしていて、今にも雨が振りそうだ。
自分には傘もなく、レインコートもない。
降られてしまったら、ずぶ濡れだ。
スリルある帰り道。
しかし、こんな気が重くなりそうな日でも、子供は存外元気なものだ。
明るい声で、ねぇ、ねぇ、と自分の親に話しかけている。
どうにも、自分にはなくなってしまったエネルギーだ。
羨ましいまではいかないが、昔を懐かしむきっかけにはなる。
昔の僕といえば、それなりに人のコンだ電車の中で、よっぱらいの真似をして、親を含めて周りの大人をくすりと笑わせたものだ。
今では本当に酔っぱらいになって電車に乗ることもある。
それを思うと、昔の僕はリアリティのない真似をしていたなと思う。
とりあえずふらついて、しゃっくりをしたらよっぱらいで、多分、ジャッキー・チェンの酔拳でも見たんだろう。
電車で酔っ払いのマネをする子供なんて、自分は未だ見たことはないけれど、もしいたら酔っ払いとはどういった仕草をするか教えてやるか、なんてくだらないことを考えてみる。
まぁ、十中八九、僕は危ない人に認定されてしまうだろうけど。

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