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【企画:短編Tale】アホな事を考えている


アホなことを考えている。
仕事先に行く途中なのだが、何も考えずにダラダラと歩くのは味気がない。
だから頭の中でアホなこと、転がしている方が面白い。
例えば、もうすぐ差し掛かるT字路の合流地点、僕がのほほんと歩いていると、横から女の子がぶつかってくる。
まるで漫画。
でもこれだけじゃ面白くない。
そうだな、ぶつかってきた女の子は実は女神だったのだ。
女神はアイタタタとおしりをさすりながら立ち上がると、それはもうニタニタと笑って僕に言う。
「貴方!やってしまいましたね!女神である私にぶつかりましたね!」
明らかに僕に向かってぶつかりに来ていた勢いだった。
僕はいきなり、女神なんて言うその女の子に面食らってしまって何も言えない。
「これは不敬も不敬!罰を与えなくてはいけません!」
なんて、当たり屋だ!
罰当たりにも程がある。なんてどうしようもなくくだらない事を考えながら、文句の一言でも言ってやろうと口を開いたタイミングで自称女神はえ~いという掛け声とともに、人差し指を僕に向ける。
するとどうだろう、あっという間に景色が変わる。
いわゆる、女神の間っぽい所に。
眼の前にドヤ顔でふんぞりが得る女神様が声高に言う。
「貴方は今日から私の奴隷よ!!」
そこから無理難題の数々、女神との関係、ドタバタスペクタクル。
そこまで考えていた所で、何かとぶつかった感触が下。
目を向けると、僕にぶつかって尻もちをついている、制服姿の女の子がいた!
これは凄い。
僕はしゃがんで女の子と目を合わせると
「君は女神ですか?」
女の子は痛みも忘れたような様子で、
キョトンとしている。
「え、は?……違います、けど?」
僕は実に落胆した。
流石に現実はそうやすやすと馬鹿げた妄想を叶えてくれないようだ。
僕は女の子に興味を失って、さっさとあるき出す。
よくよく考えたら僕は仕事に行く途中だった。ちんたらしていたらダメじゃないか。
僕は程なくして、職場についた。
資料をまとめながら、さっきあった事を残念に思う。
いやもちろん、女神に逢えないのはしょうがないにしろ、もうちょっと面白い展開だったら良かったのに、そんなはたから見たら理不尽なことを考えながら、まとめた資料を持って、目的地へ向かう。
部屋に入ると、一斉に視線がこちらへ集まる。
僕は皆の前に、壇の上に立って口を開く。
「今日から、この授業を受け持ちます、皆さんよろしく。」
名前と顔の確認のために、自己紹介をしていきながら、生徒たちの顔を見ていく。
すると、今朝の女神じゃない子がいた。
まさかこんな事があろうとは。
これはもしや面白い展開になるのでは?
運命の女神が僕に愉快な出会いを授けてくださった?
あ、だめだ。
めっちゃくちゃ嫌な顔して僕を見てる。
ま、そんなもんだよな。
「じゃあ授業をはじめます。教科書の目次を開いてください。」
仕事中、まじめにやるなんて、味気がない。
だから僕はアホなことを考えることにしている。
もしかしたら、があるかもしれないなんて想いながら。

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この作品は別の所で、最初の一文をお題でいただき、そこから書いたものです


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