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【短編Tale】明日が待っている


明日が待っている。
そんなこと、さもさも名言風に友人から言われたものだから、本当なのか気になって、実際に明日に聞いてみた。
そうしたら、確かに待っているよ、と言われた。
その答えを聞いて、僕は、友人の言が本当であるとしれて嬉しかった。
しかし、明日は言葉を続けてこういった。
だけど、勘違いしないで欲しいのは、君たちを待っているわけではないよ。
僕はその言葉の意味がよくわからなかった。
だってそうじゃないか。私がいくら君たちを待ったって、君たちが私を捕まえてはなさない、とか、そういった事があるわけじゃないし。僕は明日が僕らを待っているから、そこへ向かって走れ、みたいなそんなことを考えていたから、明日の言う言葉に打ちのめされた気がした。最初に喜んだ分、落差が激しい。
じゃあ、明日は何を待っているって言うんですか、なんて、思った通りの答えがもらえなくて、すねた子供みたいに聞いた。
それはね、昨日にかわるのを待っているんだよ。
明日は生徒に教えるように穏やかに言った。私たちはね、昨日にならない限り、何時までたっても、真っ白なんだ。言ってしまえ何も知らない赤ん坊みたいなものなんだよ。
明日は続けた。
私たちは君たちの横を通り過ぎて、初めて世界を知るんだ。そして、一昨日、一昨昨日、つまりは過去と語らう。それを楽しみに待っているんだよ。
そう明日は締めくくった。
僕はなんだか壮大な話を聞かされているみたいで、そう、なんだ、と、小さく頷くしかできなかった。
明日は僕のすぐ横まで来ると、僕の様子を見て笑いながら、君たちの事を私達が待ってあげてるんじゃなくて、君たちが早く私達の横を通り過ぎてくれないかと待たされているんだよ。できれば、その時が良いときであると願ってね。
明日は僕を通り過ぎていく。
まぁ、君と語らった今はなかなか面白かったよ。だから今回は私が君の横を通り過ぎてあげる。
明日は僕の背中にそう言葉を投げると、その姿を跡形もなく消してしまった。
眼の前には光が迫って来ている。
その光に僕ははっとして、目を覚ます。
空は明るい。朝だ。
僕は一つ伸びをして、息を吐くと、心の中で、今日という日を、良くしてあげなくちゃ、小さく呟いた。

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この作品は別の所で最初の一文をお題でいただき、そこから書いたものです


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