自分

ぼろぼろのセピア色

僕の目はカメラで、僕の心は撮ったモノをしまうフォルダー。
感情というタグを着けて、何時でも取り出せるように、大切に、大切に。でも、山の様に積み上がっていくそれを見ているうちに、いつの間にか目をそらして、今では埃の被った塵芥。
それでもたまに、どうしようもなく突き動かされて、山の中から一つ、写真を取り出す。
ずいぶんと色褪せたセピア色のそれは、何処で何の写真なのか、理解するには難しいほどぼろぼろになっているのに、この写真に着けられたタグが、感情が、するりと写真に過去の色を塗っていく。
いとも簡単に、ボロボロの紙くずが、嘗ての宝物に変わる。
それが何だかおかしくって。
視線を別に移したら、そこにあるのは変わらずの塵芥。
でも、それは決して最初からそうではなかった。
あの日、あの時の感情を持っていたその時は、これは間違いなく、僕の宝物だったんだ。
僕の。
でも今は誰のでもない。
僕の中にうず高く積まれるモノ、ただそれだけ。
色褪せたそれは、多分、悲しげに、僕を潰そうと雪崩込んでくる。
僕は膨大に積み上がった、僕自身の、僕でない何かに潰されて、それで。
それで、僕も塵芥かわる。セピア色に褪せた僕、そしてぼろぼろに崩れて埃と混ざる。
そして僕じゃない別の僕が、今度はシニカルに笑って、僕を見下ろすんだろうか。


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