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若者の選挙権行使について……「引っ越したら住民票を移そう!」

 2016年に18歳選挙権となりましたが、若者の投票率は伸び悩んでおり、18歳より19歳の方がより投票率が低いという特徴があるといいます。その一因に「住民票を移していないため選挙権が宙に浮く」という問題があると思われますが、近年は総務省が「引っ越したら住民票を移そう」と呼びかけるチラシを作り、啓発に努めているようです。

総務省チラシ両面はがきサイズ

https://www.soumu.go.jp/main_content/000731262.pdf   ⇦総務省チラシPDF

 これより、「選挙権行使に支障が生じる住民票問題」について、どういったことが起きているのかの「問題提起」と「解決策の提案」を、そして、そこに至った流れを述べていこうと思います。

「住民票を移していないため選挙権が宙に浮く」とは

 投票には、選挙人名簿をもとに自治体から送られてくる「投票所入場券」が必要です。選挙人名簿への登録はその地に住民票があること。進学・就職などで引っ越した場合、住民票を移していないと、投票所入場券が手元に届きません。また、住民票を移してから3ヶ月経過している必要があることも注意点です。

 では、住民票を置いたままにしている故郷に帰省して投票できるかというと、そうでもないのです。最高裁判決によって「選挙権の住所は、生活の本拠を指すものと解するを相当とする」とされており、住民票があるだけでは投票できないからです。
 このことにより、帰省した若者とその親VS選挙管理委員会の押し問答が、投票所で度々起こっているとのこと。投票所には、自治会長といった地域の人々をよく知る住民が監視員として就いています。居住の事実がないことが分かると投票させるわけにはいかず、故郷でも転入先でも投票できない「宙に浮いた形」となるのです。

提案「文部科学省と各自治体の連携による周知徹底」

 引っ越す若者たちみんなが住民票を移し、投票に行くようになるのが目指すところです。そのためには、自治教育の一つと位置づけ、「文部科学省と各自治体の連携による周知徹底」をすることが必要と思われます。

文科省へ

都道府県へ

市町村へ

引っ越しても住民票を移さない人が多いという現実

 この問題に気づいたのは、2人の娘を他県に送り出した2008年頃のこと。
 長女が大学進学で神奈川県に引っ越した際、秦野市役所を親子で訪れ手続きをしました。持参の書類封筒に職員が見入っていたのを思いだします。都城市では当時から地元企業の広告が封筒に印刷されていたのです。いただいた秦野市の防災マップ・ゴミ分別一覧・公共施設の案内などを読み、ここでの娘の新生活を想像しました。   
 秦野市議会議員の選挙が近づいているらしく、スーパー前で演説する候補者を見かけました。2年後は選挙権を得て、投票に行くであろう娘の姿を思い馳せます。

 翌年は、次女が福岡の専門学校へ。ゴミを細かく資源分別する秦野市と大違いの博多区。しかも収集が夜中で、朝には完了しているのに大変驚きました。ゴミの扱い一つにとっても各地で違いがあります。防災も公共施設の特徴も。住民票を移すと得られるこうした情報は、今後の実生活の上でとても重要となります。 

 しかし、私の周辺で故郷を離れた若者たちの親にリサーチすると、住民票を移さないままが7割の印象。「なんの不都合もない」「ここにある方が住民票が必要な時に便利(市職員)」「成人式の案内が来ないと困るから」などがその理由。選挙権が宙に浮いてしまう話をしても、当時はまだ20歳選挙権だったので、高校を卒業したばかりではリアル感がわかないのでしょう。
 そして、わが子が手元を離れる寂しさに、住民票まで移してしまうのは感情的に抵抗があるのだろうと思いました。
 
 長女が大学3年で帰省した時、わが家に3人の同級生が集まりました。すでに20歳を超えていますが、住民票を移しているのは娘だけ。「親が移す必要はないと言った」「親からは何も言われなかった」が3人の弁。そのうちの一人は「ちょうど夏休みに選挙(国政)があったので、親と一緒に投票に行った」と話しました。私は「無事に投票が済ませられて(居住していないことが知られずに)ラッキーだったね」と言うしかありませんでした。

 ある時は病院で、他県の大学へ編入するという娘の友人にばったり会ったので問うと、母親が「移さなくて良い」と言うとのこと。もちろん「移すように」アドバイスしましたが、実践したかは定かでありません。

都城市・宮崎県知事・県教育委員会へ働きかける

①都城市選挙管理委員会へ
 引っ越しても住民票を移さない人が多いことを看過できない私は、2009年、問題提起と解決策を書いた文書持参で都城市選挙管理委員会を訪問しました。
 ・・・文書の内容・・・(注:20歳選挙権の2009年時が背景)・・・
 都城市選挙管理委員会 委員長様
 選挙権行使について、二人の娘を県外へと送り出してみて、気づいたことをお伝えいたします。故郷を離れる、そのような若者に不利益が生じませんよう、また若者の投票率アップのためにも対処をぜひお願いします。

 卒業後、就職や進学で地元を離れる場合、それが短大など2年間であろうとも、転出転入手続きをきちんとするよう、高校生やその保護者に伝えてくださいませ。
 手続きは何の不都合もないから必要ない、成人式の案内が都城から来るようにと手続きしない・・・と考えている保護者が意外に多いようです。しかし実際、今後住人となる地域に転入届を出していないと選挙権行使について他、色々と不都合が生じます。

1)選挙のはがきが、選挙人名簿のある都城の実家に届き、仮に投票のため帰省しても、実際の居住がないことが分かると投票できません。20歳になってせっかく得た権利を行使できないことになります。住所を移し、ぜひ居住地域のことにも興味を持って投票に行ってもらいたいと思います。

2)新居住地域に、転入届を出すと、その地の防災マップ・ゴミの分別についての情報・観光パンフレット・様々な行政サービスや施設の情報などを得ることができます。 都城で燃やせないゴミ扱いのものが長女の住む秦野市では資源ごみ、次女の住む博多区では燃やせるゴミ扱いです。その地の決まりに添って暮らし、住民トラブルなどを回避してほしいと思います。また地震や水害時に、どこに避難すればよいかなども備えてほしいと思います。

3)銀行口座をその地で開設する際などの本人確認書類として、その地の住民票が必要な場合があります。遠隔地健康保険証には都城住所記載ですし、運転免許などをまだ持たない人には住民票が大切になります。

4)パスポートを取得しようとしたとき、都城だと実家の親が代理で手続き可能ですが時間がかかります。本人確認が必要なため、住民票のある居住区に申請するのが、早くて確実です。

5)都城市の成人式の案内は、中学校卒業名簿から出され、都城と居住地からとの二つから参加場所を選択できます。

以上のことを、各高校の学生及びその保護者に伝えていただきたく、お願いいたします。教育委員会と連名でも、学校宛でも、PTA宛でも良いかと思います。3/1の卒業式が近付いていますので早めのお知らせをお願いいたします。                     白水 真由美
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 当時の選管委員長は元校長。娘たちの小学校のPTA活動でお世話になった人です。ここで、選管も頭を抱えていたことを知りました。住民票を移さないままの若者が、20歳になって人生初の投票をしようと、親とともに故郷の投票所に来訪。しかし、居住がないことが判明した時点で、投票させるわけにはいかない(最高裁判決による)という問題があり、押し問答になるという話です。これは全国的な課題なのだと聞かされました。

 それから2週間足らずで、市内の高校3年生と保護者に向けたチラシが作られ、卒業式直前に配布されました。翌年以降も配布は続けられ、「故郷でも引っ越し先でも投票できないこと」の記載が、2011年と2015年のチラシにあることを確認しています。

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 ちなみに、2015年の配布文書は、都城市と三股町(となり町)の「選挙管理委員会」および「明るい選挙推進協議会」の4連名で出されていました。

②宮崎県知事へ直接お願いする
 2011年3月に河野知事がみえての県民フォーラムが都城市内で開かれた際、市子ども会育成会副会長として参加した私は、知事に直接「引っ越したら住民票を移す…の周知教育を」とお願いしました。
 知事の「いや、引っ越したら住民票を移すのは常識でしょう!」の言葉が嬉しかったものです。周囲の対象者に私が言ったところで、「じゃ、子どもに住民票を移させるね」という話にはならず、意気消沈の日々でしたから・・・。

③宮崎県教育委員会へ論文で訴える
 2011年6月には、県の社会教育委員の公募を新聞で知り、応募しました。1200字の教育論文の提出が条件だったので、「宮崎県の社会教育  “自治教育機会の充実”  について」という題名で「選挙権と住民票の件」も盛り込んで訴えました。
・・・・・・・・・・・・・・・・提出論文の一部・・・・・・・・・・
2.  若者への自治教育
 修学等で郷里を離れて暮らす若者の中に、住民票を移さないままの為、投票が出来ない人が多い現状を教育・啓発によって解決すべきです。中学・高校の社会科授業で、身近な住民自治や社会の仕組み、知らないと不利益があること等を具体的に教え、また成人式を、新成人だけでなく集う全ての人に向けての  “公が行う自治教育の機会”  と捉えれば良いと考えます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・白水真由美2009年6月・・・

 ほかにも、宮崎日日新聞に投稿して「引っ越したら住民票を移そう」を載せていただいたり、子ども会活動で関わりのある人たちや、3年間携わった小松原地区成人式実行委員会(都城市では15の地区別に成人式が行われる)などで、住民票問題を話題にしてきました。

 すると、賛同してくれる協力者も現れ心強く思ったものです。市役所の掲示板(パソコンで市職員だけが見られる)で「子が引っ越す時は住民票を移すように」と選管からの伝達があったことを、生涯学習課の子ども会担当者が教えてくれました。
 また、成人式実行委員会のメンバーである中学校の教頭が「成人式で啓発文書を配布しよう」と発案してくれて、私の宮日新聞への投稿文を載せた文書案も作って下さいました。
 ⇩2011年の都城市小松原地区成人式での検討資料(当時は20歳選挙権)

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むすびに・・・

 「選挙権行使に支障が生じる住民票問題」について、「文部科学省と各自治体の連携による周知徹底」の提案を述べました。すでに行っている事もあるかとは思いますが、多角的に取り組むことで相乗効果が得られるのではないでしょうか。

 日本の若者は、他国と比べて、政治への関心が低いと指摘されていますが、それは、そもそも公教育の根幹をなす自治教育・主権者教育のあり方に問題があるように私には思えてなりません。
 「民主主義や自治に関する実践的な教育」の充実を・・・という内容の文章を、また別の機会に発表したいと考えています。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。






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