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#1 『しらみず診療所 医師 白水雅彦』

(2022.9.17最終更新)

しらみず診療所は外科医・漢方医である父『白水倶弘』により1999年は開設しました。これまで内科・外科・麻酔科として診療を行ってきましたが、2022年9月に「日本プライマリケア連合学会認定 家庭医療専門医」「漢方医」の『白水雅彦』が院長となり、総合診療・家庭医療(漢方診療は変わらず行います)へとシフトしていきます。

僕が、病院に行くとき、一番気になるのは診てくれる医師がどんな医師なのか。そんな思いがあり、ホームページや短時間の診察の中だけでは十分伝えきれない、自分の考えや診療スタイル、医療の情報について知ってもらうためにNOTEを開設しました。

簡単に診療のことを知りたい方へ

・どんな診療をするか

従来の内科・小児科・皮膚科・精神科と臓器に別れた診療は行いません。
お子様からご高齢の方まで性別・年齢・臓器を問わず、予防〜治療・訪問診療(終末期ケア・緩和ケア)まであらゆる健康問題が相談可能です。
「とりあえず診てもらいたい」
「何科に行けばいいか?」
「かかりつけ医がない」
「なんか調子わるい」
「こんなの症状で診てもらえるの?」
「他で見てもらっているけど一度話を聞きたい」
「認知症の家族がいるけどどこに相談したらいい?」
など
なんでも診ます。どこに行くか悩む前に相談してください。
 もちろん「漢方薬での治療をしたい」という方も来院ください。
 薬の処方がなくても、相談・生活指導だけでも通院可能です。
 必要に応じて責任を持って必要な診療科と連携させていただきます。


〜なぜ家庭医をしているのか〜

2014年『沖縄県立南部医療センター・こども医療センター』


佐賀大学医学部医学科を卒業
沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで研修しました。

特定の病気を診ることに関してあまり魅力を感じず、元気な人が元気なまま過ごすためにどういう医師になれるのか考えているところで
「島に行って診療できるよ」
と上司に教えてもらい、「それだ!」と思い二つ返事でプライマリケア・家庭医療の道に進むことを決意しました。

2016年 初期研修の後、同病院でプライマリケアコースとして内科(各科)、救急、小児科、整形外科とローテーションしながら研修しました。
病院は病床434床(小児108床)の急性期病院でした。
大人も子どもも関係なく診療、いろいろな専門医のもとで診療する経験を積み、家庭医の先生方とも出逢いながら家庭医療を勉強していきました。

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター HPよりhttps://nanbuweb.hosp.pref.okinawa.jp/

2018年『渡名喜診療所』


沖縄県の離島、渡名喜島の一人診療所「渡名喜診療所」に赴任。
医師一人、看護師一人、事務員一人の環境で診療していました。
1日1本の那覇港から久米島行きのフェリーで約2時間。
島では医師一人だったので、なんでも診る、誰でも診る、地域を診ることが必要でした。

 ある時、島で診療していると「できるだけ島にいたいけど、最期は島で死にたくない」と話をする患者さんもいました。衝撃でした。
 慣れ親しんだ島に最期までいたいだろうと勝手に思っていました。

 スタンダードな決められた治療が全てではなく、治療や検査にも医師の感性、患者の感性が影響を受けること、それを踏まえなければ良い診療ができないと感じ、家庭医療をさらに学ぶ。
 そんなこんなで、診断・治療に加えて生き方なども踏まえて、治療方法をコーディネートする必要を実感していきました。

渡名喜診療所
島の集落の様子

2020年
『医療法人北海道家庭医療学センター 
本輪西ファミリークリニック』

 家庭医療をさらに学ぶために地域で長く家庭医療を提供しているクリニックで働きました。
 家庭医でありながら、地域で唯一の在宅療養支援診療所として訪問診療も行い、赤ちゃんの予防接種〜在宅での緩和ケア・看取りまでおこなっていました。
 自宅に訪問していると、今まで家族ともこれからのことを話しておらず、バタバタする場面、意思疎通が取れなくなって、本人の意思を推測しかできない場面、急に癌末期の宣告をされやり残したことがたくさんある人、逆にもう人生には満足してやり残したことがないと話す人、自分は家にいたいけど、家族のために病院への入院を選ぶ人。いろいろな人に出逢いました。
 在宅看取りを実施しながら、いろいろな人・家族の最期のときを見てきました。
 最期を迎えるのは自分だけの問題ではなく、家族や周囲の人々にも影響を与えます。
 人がなくなることは悲しいことですが、本人・家族が納得のいく形、少なくともやれることをやって亡くなった時は残された家族も良い顔をして見送っている様に感じました。 
 そのため、満足のいく生き方と逝き方をするためには、定期的に自分のことを見つめ直し、大切な人と話し合い、自分のことを知ってもらうプロセスが大切だと感じ、Advance Care Planning(ACP:人生会議)に尽力するようになりました。

本輪西ファミリークリニック

2022年「しらみず診療所」

 家庭医療+漢方診療を組み合わせながらハイブリットな診療を実施。

こんな診療をしたいと思いながら医師をしています。
①医療の立場から、関わる人とその周囲の人々がwell beingになるためのサポートをすること
②佐賀の医療に家庭医という文化を浸透させたい

〜家庭医療とは〜

 ここまで散々話してきましたが、僕は家庭医です。
 家庭医という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 総合診療・家庭医療を実践する医師を家庭医といいます。
 ちょっと特殊なのは父の影響で漢方診療も行う漢方医でもあることです。

 私たち家庭医は「総合医、generalist(ジェネラリスト)」と呼ばれます。 
  そして『日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医』は「内科」でも、「外科」でも、「小児科」でもない、昔からいるけど日本では新しく作られた専門医です。
 想像しやすいのは昭和の時代の近所の町のお医者さんかもしれません。   
 医療の各専門分野に縛られず、さまざまな分野、技術、経験を習得することで認められる専門医となります。
 幅広い病気の診断治療だけでなく、家庭医は「人を診る」ことを専門的に理論的に、一つの分野として学びます。

 私たちgeneralistと反対に一つの分野を突き詰めた医師はspecialist(スペシャリスト)と呼ばれます。
 みなさんが良く接する専門医のほとんどは特定の分野に非常に強いspecialistと呼ばれる先生方で、日本の開業医のほとんどが、このタイプの専門医にあたります。
 例えば、循環器内科専門医、精神科医、整形外科医、皮膚科医などです。

〜家庭医として大事にしていること〜

・あなたの物語・プロセスを大切にして伴走する。

 家庭医の診療は話を聞くことから始まります。
 病気の経過だけでなく、あなたの生き方・価値観・考え方をうかがいあなたという人にチューニングしマネジメントを考えていきます。

 医療には推奨されている治療はありますが、それが必ずしもその人を幸せにするとは限りません。

 例えば、高血圧があれば高血圧の薬をもらう。
 どこに行っても、結果は同じ「処方」という行為かもしれませんが、なぜ飲むのか、何を飲むのか、どんなふうに飲むか、話し合った上で処方します。言われたから飲むのではなく、あなたの意志 を大事にしながら、話し合い、メリットとデメリットを理解し飲むか、飲まないかを決める。

 診断・治療はwell beingにつながるプロセスの一つであり、全ての処方にあなたの生き方・価値観・考え方を伺いながら、プロフェッショナルとして、あなたがいいと思うこと、僕がいいと思うことをしっかり話し合いながら、決めていくことが大切だと思っています。

・年齢・性別を問わず、皆さんの日常で起こるあらゆる健康問題を最初に見て、予防・診療・治療する。

 日常的に起こるほとんどの健康問題を診療・治療できるように日々学び、自身で対応しない場合もありますが、患者さんに説明できるように各専門領域にも広くアンテナをはり、学び続けています。

・全体を診る

 「雑談も大切」
 病院に来ると病気の話しかしてはいけないと思っている方も多いです。
 全く関係のない話から普段の生活や価値観・考え方・生活感なども見えてきます。いろいろなことを話して欲しいと思います。
 「あなたを含めた家族、周囲の人々」の問題に対する相談を受けます。
 「あなた自身を見る」
 あなたは疾病だけでなく、あなたの精神面、価値観、生き方、社会、周囲の状況など様々な影響を受けます。
 それらを考慮しながら療養の選択肢を相談し、提案、お互いが納得できる選択肢を提示し一緒に選んでいきます。
 「年齢に関わらず診る」
 生まれてから死ぬまで全ての人を対象とします。
 「継続してみる」
 数年ぶりの受診でも、子供から成人、成人から高齢者になっても、他院に受診していても、健康な時も、調子が悪い時も、あなた、あなたの家族、周囲の人たちの物語を継続してみながらケアを提供します。
「整える」
 あなた自身やあなたの家族(病気、精神面、生活など)を整えることにより、「良い感じ」を目指します。

〜どんなことをやっていきたいか〜

①医療の立場から、関わる人とその周囲の人々がwell beingになるためのサポートをする

 well beingとは1946年にWHOがさだめた世界保健機関憲章の前文でwell beingという言葉が出てきます。
日本語に落とし込むことが難しいが「いい感じ」であるということ。幸福・幸せと言われることもあります。

well beingにはポジティブに働く側面と、ネガティブに働く側面があります。
ポジティブだけでもダメ、ネガティブだけでもダメ、それがバランス良くいい感じのところにある時が人は幸せを感じます。

 薬ができるのはwell beingを阻害する症状を取り除くことで0に近づけて行くことはできます。
 well beingに繋げるための一つの活動としてACPの活動を大切にしています。
 ACPは簡単に言うと最期のときをその人らしくどう迎えたいかという話し合いのプロセスのことをさしますが、僕はそれ以上に定期的に行うことで、自分のこと・家族のことを棚卸しし、日々を見つめ直すいい機会になるのではないかと考えています。
 ACPという自分や周囲の人々のことを見つめ直す場をつくることで自分らしさ、つながりや感謝、前向きさ、楽観性など幸せの因子を見つけていくことができると思います。
 そんなわけでwell beingを医療の立場からどうサポートできるのかに取り組んでいきたいと思っています。

②佐賀の医療に家庭医という文化を浸透させたい

 近くに家庭医がいる。home doctorはなんでも見てくれる。
 そんなことがあたりまえの文化では、「この医者は何を診てくれるのか」と考えることなく、困りごとを医師に相談するのがあたりまえになります。
 自分で自分の病気を見極め、博打のように医療機関へと受診する必要はなくなり、まず気軽に話に行くことができます。
 こんなことが自然とおこるようになるには「家庭医」というものを地域文化のレベルまで浸透していく必要があると思っています。

この医者は何を診てくれるのかと考えることなく、困りごとを医師に相談して欲しい。

 佐賀では医師と自分や家族、生き方について話し合う文化は今は少ない。
 患者さんは「こんなこと聞いて良いかわからないけど・・・」と前置きをして話し始めます。困りごとを見てもらいにきたのに「すみません・・」と言って話始める方もいます。
 なぜそんなことが起こるのか?
 これまで、医師に話そうとして遮られた、怒られた、「うちじゃない」と 拒絶された経験などがあるのかもしれません。
 医師には病気のことしか話したらダメだと考えるのかもしれません。

 困りごとを話してもらい、聞くことから家庭医の仕事は始まります。
 そんなスタンスの医師が増えることで、もっと患者さんは医師・医療機関と話し合いをしやすくなるはずです。

 「すみません・・・」「こんなこと聞いて・・・」と話を聞くたびにgeneralistにはなんでも話せるというのを、考えることなく自然とできるようにするために、家庭医というものを言葉ではなく人々の感覚として壁を低くしていくために地域文化として浸透していく必要があるのだろうなと考えています。 

自分で自分の病気を見極め、博打のように医療機関へと受診することの大変さを減らしたい。

 今の日本の医療スタイルは自分のことを自分で見極め、必要な医療機関を選定し、受診する。
 当たればしっかり診てもらえる、間違っていれば、自分で間違いを見つけ、次にあたる。

 良くも悪くも自己責任です。 

 日本の医療制度であるフリーアクセスで、さらに各医師が自由に標榜し自由に開業しているため、選択肢は豊富で自分で医療機関を選べる反面選ばなくてはいけない状態にあります。

 家庭医をいきつけのクリニックとして、もつことは、自分で見極める、自分で必要な医療機関を選定するプロセスを変えることができます。
 まず、診てもらい相談し話し合いながら決めるというプロセスに変わる。

 なんでも相談できるクリニックがいきつけになると「なんか体に起きた」→「とりあえず受診」→「話し合い」
 医療までのアクセスはかなり簡略化される。
 こんなプロセスが当たり前になるには家庭医みたいなかかりつけ医を持つ人が増えると地域の文化となり、もう少し医療者が気軽な健康相談の相手になり、それが普通になって
いけるんだろうなと思います。

〜さいごに〜

 医師も人、患者さんも人。
 医師がスーパーマンのような時代は終わりました。
 治療の選択肢も増え、医師も医師ごとに考えがあり、スタンダードな治療だけをしているわけではありません(もちろんある程度のスタンダードな治療を提供できる前提ですが)。医師ごとにいろいろな治療方針があり、どの医師にかかっても同じ治療という時代ではありません。
 あの病院ではこんなことをしてくれた、あの病院ではこの薬を出された。
いろいろあるでしょう。
 医師と患者さんの関係も人と人との関係なので、相性もあるでしょう。
 家庭医のことを散々書いてきましたが、通院しやすいところ、話していて信頼できる相手、安心できる医療機関を選びながら、できるだけ同じところに長く通院するのが良いと思います。
 そんな中から家庭医とspecialistをうまく使い分けられる選択肢が生まれてくると良いなと思います。
 そして、地域の人々がwell beingでいることができればいいなと思います。


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