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BIMの導入で気を付けること7選

はじめに

令和4年度2次補正予算に「建築BIM加速化事業」が新たに創設されました。建築BIMの社会実装を速めるための「建築BIM加速化事業」への支援として補助金が出るようです。この機会を利用してBIM導入の検討している企業も多いと思います。しかし、実際にBIMを導入して「本当に良くなるのか?」「そもそも何をすればいいのか?」「BIMを導入したら前より仕事が増えて大変になった話をきいたけど」「何ができるようになるのかいまいちわからない」など不安に感じていると思います。2009年がBIM元年と呼ばれてから10年以上経ちますが、なかなかその有用性を現場レベルで示すことが難しかったと思います。そこで普段、建築プロジェクトのデータマネジメントを主な業務としているSHIRAKUinc.での経験を踏まえて、BIM導入で気を付けることをご紹介します。コンサル会社に依頼する場合や自社で導入する場合に、以下の点に気を付けることで、よりよいBIM活用の一助となれば幸いです。

1.BIMモデルの目的をはっきりさせる

なぜBIMを導入する必要があるのか?を考えましょう。どのようなことが問題となっていて、どう改善されると良いのかなど、導入するための様々な理由があると思います。それらの問題を社内で整理すると良いと思います。これらをあいまいにすると、その後現場では全く使われないものが作られ続けてしまう可能性があります。問題によってはわざわざBIMを導入する必要が無いかもしれません。自社だけで難しい場合はアドバイザーなどをいれるとより良いと思います。また整理する際には必ず設計実務者を入れることが大切です。

2.自社の設計フローを整理する

BIM導入にあたって設計フローの整理・整備は核となります。これが出来ていないと、その都度場当たり的に対処することになり、自動化ツールを作ってみたり、部分的にやり方を変えてみたりと、どんどん泥沼化していき、結局BIMを導入しても全然楽にならないということになってしまいます。
設計フローの整理が必要な分野は、どのフェーズでどの程度まで検討するのか?自社で行っている業務範囲はどこまでか?受注する建築物はどんな種類の用途・構造・規模があるか?外注先との連携はどうなっているか?など様々なものがあります。BIMを導入する前段階で今まで曖昧だった設計フローが明確化できれば、それだけでもBIMを導入した甲斐があると思います。全体を把握してから効果的な部分のカスタマイズを進めていくよいです。

3.BIMソフトの理解

BIMというのは建築を作るうえでの概念であり思想の一つです。そしてその思想を実現しようとするものが、BIMソフトというものですが、BIMソフトを使っているからBIMが導入出来たと考えてしまうと「で、これで一体何が変わったんだ?」となってしまいます。そのためにBIMソフトとはどういうものか?という理解が必要です。簡単ではありますが説明しますと、基本的に「BIMソフトは情報整理ツールであり、3D検討ツールではない」ことを念頭に置きましょう。BIMはあくまでも建築の情報とかたちの整合性を確保することに一番の恩恵があると言えますが、2DCADや3DCADのようにカジュアルに編集できると考え運用してしまうと効果が見込めません。あくまで、事前に整理したフローの中での検討に特化した仕様になるため、決まったルールの範囲での検討を想定しているということを忘れないようにしましょう。実際にソフトに触れてみたことが無い方にありがちなのが、何でもできる気がして期待値が上がりすぎてしまうことです。もちろんネット上の情報やベンダーからの情報はそのようなものであふれており、自動化していけばどんどん効率が良くなっていくと考えてしまいます。しかし、建築というものは効率性を上げればいいというものではありませんし、設計者の意思によってしか選べない問題も多く含まれているため、自動化にも限界があります。その塩梅を間違えないためにも、やるべきこととやる必要がないこととを社内で十分に協議する必要があります。

4.情報のまとめ方を考える

BIMの導入を考えている企業では、普段は2Dソフトでプロジェクトを進め、たまに部分的に3Dモデルを作ることが多いのではないでしょうか。
2DソフトからBIMソフトへの移行を考えている場合、BIM導入後は3次元+情報となり、これまでよりも情報量が各段に大きくなります。そのためハンドリング(編集と管理)が大変になり、プロジェクトのスピードに追い付けなくなります。結局ある部分は2D図面で修正、ある部分はBIMモデルを修正とその場での対処になってしまい、結局どちらが正しいかわからないままダブルスタンダードで設計が進み、収拾がつかなくなってしまいます。そのようなプロジェクトになってしまうと、建築物の品質低下や責任の所在が追えないなど不必要にリスクを負うことになります。そうならないよう、フローを整理していく過程で、大量の情報をハンドリングできるようにするか、もしくは情報を削る等の計画を立てておく必要があります。
フローに合わせた無理のないデータ管理が重要になります。

5.既存のフォーマットに固執しない

各企業ではこれまで運用してきた社内のフォーマットがあると思います。
例えば図面の表現や印刷設定等がそれに当たりますが、そのフォーマット通りにBIMから出力をしようとすると、必要以上に労力がかかります。そのためBIMでの図面の出力を考える時は、何の情報を伝えたいかを整理し、情報を伝達すること自体に重点を置き、BIMソフトに標準搭載されている方法で出力することが望ましいです。図面表現にこだわり過ぎると運用までが大変になります。

6.一気通貫は出来ない

BIMを説明する際に、「設計から施工、その後の維持管理、運用まで」というものがあります。もちろん思想としては良いと思いますし、目指すのも良いと思いますが、実際には各フェーズで必要な検討項目や精度が異なるため、設計時には設計のモデルを、施工では施工モデルを、維持管理には維持管理のモデルをとした方が使いやすいです。一気通貫というと便利なように感じますが、実際にやろうと思うと融通が利かなくなります。また、維持管理を行う側の人員に、必ずしも建築の専門知識やBIMの使い方が十分にあるとは限りません。この一気通貫の思想には、建築をいわゆる工業製品(いつでも・どこでも同じように出来上がったものを買ってもらう)として捉えている前提があります。しかし建築は基本的にその敷地に合わせて毎回異なる条件で設計検討するものであるため、型で押したように同じものを買うことはできません。工業製品的に建築を売っていくということであれば出来るかもしれませんが、建築プロジェクトは毎回ステークホルダーが変わり、使用するソフトや対応できるソフトが変わってきます。そのようなあらゆる条件が都度変わる状況に対応できるようにしておいた方が、今のところは良いと思います。

7.2DCADは必要

BIMを導入したら2DCADは不要になると考えられがちですが、実際には2DCADとBIMは別物と考えた方が良いです。もちろん2DCADの使用頻度は減ると思いますが、使わなくなることはないと思います。BIMソフトで詳細図を描くことは、技術的には可能ですが、それらを実現するためにモデルを作り込む労力が増え、割に合わない場合が多いです。
そのため、納まりの詳細図などは2Dで描き、IDでリンクさせて管理する等その他の工夫をした方が楽になります。2Dで直した方が楽なところは2Dで修正することが大切です。ただし、ダブルスタンダードで進まないようにフローを管理しておくことが前提です。

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著作者:vectorjuice

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