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建物を建てる前に知っておきたいこと 5選

建物は身近なものでありますが、いざ実際に自分が建てるとなると、どうしたらよいか分からない部分が多々あると思います。また建築業界は多くの業者が存在し、話を聞いてもあまりピンとこないかもしれません。建物を建てたいと思っている方の中にも、いろいろな方がいると思います。例えば、住宅を建てたい個人、自社ビルを建てたい経営者、公共施設を建てたい担当者などです。そんな方々がまずは知っておくと良いだろうことを以下に記しました。

1.建物を作るための大枠を理解する

建物を作るためにはまず【建物を作りたい人】これを【施主または建築主】と呼びます。そして、【建物を実際に作る人】これを【施工者】と呼びます。会社名では○○工務店、○○建設などがあります。そして【建物を作るための図面を引く人】として【設計者】がいます。会社名では○○建築事務所、○○設計事務所などがあります。彼らは【施主の代理人】であり、施主に変わって図面を引き(設計者)、建物を作ります。(施工者)

建物の規模や用途によっては、施主のアドバイザーとして様々な専門家に依頼する場合もあります。アドバイザーの種類には、例えば、つくりたい建物の企画や運営に関する専門家、建築プロジェクト全体の交通整理をするCM(コンストラクトマネージャー)等があります。

2.建物を作るための発注(依頼)方法を知る

施主が建物を作る際には、大きく分けて【設計施工一貫】【設計施工分離】の2つの発注方法があります。
設計施工一貫は「設計と施工を一緒に発注できる」方法で、一つの会社で設計と施工の両方を行うというものです。会社としては○○工務店や〇〇建設と名乗っている場合が多いですが、会社によって対応しているかどうかが異なるため、ホームページを見るとわかると思います。住宅などは地元の工務店に依頼して【設計施工一貫】で作られる場合が多いと思います。

設計施工一貫方式


【設計施工分離】は設計と施工を別々の会社で行います。そのため設計者と施工者をそれぞれ探し依頼する必要があります。設計会社から施工者を紹介されるパターンも中にはあります。

設計施工分離方式

どちらを選ぶのがいいのか?と気になると思いますが、これらは一概にどちらの方がいいと言えるものではなく、想定している建物のスペックや規模、目的などによって変わります。簡単な説明として発注の性質を紹介します。※あくまで簡易に説明しているので、同じ発注方式でも企業によってはこれらを解消する方法をもっていることもありますし、その他にも多様な発注方式がありますので、実際には異なる状況があります。
【設計施工一貫】は施工者側からの提案であり、コミュケーションコスト(すり合わせの時間)の削減や設計者を別で探さなくてよいなどのメリットがあります。【設計施工分離】の場合はコミュケーションコストを施主がより引き受ける必要がありますが、競争原理を利用して価格を抑えることや、より施主の複雑な要望も建物に反映しやすいなどの点が挙げられます。

3.一般消費材と建物の違いを知る

これらを理解するには【消費者】【生産者】の違いを例にするとわかりやすいと思います。まず消費者は一般消費材である食品や家電製品、自動車など、あるメーカー(生産者)が不特定多数の顧客に対して販売をしているものを購入しています。そのため、販売されている製品の生産過程での物価変動や社会不安などの変動が日々起きていても、それによって生じる経済的負担は、生産者のみが負担することとなり、消費者が負担することはありません。仮に生産者側が人件費や物価の高騰によって生産原価が上昇し製品が値上げせざるを得なくなっても、消費者がその商品を買わなければ増加分のコストを消費者に転嫁することはできないため、消費者には必ずしも経済的、社会的変動等のリスクを負う必要性がありません。
しかし、建物を建てるという行為は自身が【生産者】になることを意味しています。そのため、生産者(施主)はほとんどの場合、自身では設計と施工が出来ないことから、建物を建てるために必要な知識、技術的サービスを受けるために設計者と施工者にお金を支払うことになります。ここで大切なのは、設計者と施工者の知識と技術によって完成した建物を買い取るための支払いではないということです。これが一般消費財である食品や車であれば、クレームをつけて取り換えてもらうなどが可能ですが、建物を建てることにおいてはそうは出来ません。最初の方で、設計者と施工者を施主の代理と書いたのはそのためです。設計者や施工者は生産者ではなく、あくまで【生産者のパートナー】であり、生産者は施主自身であるということです。仮に自然災害や物価の上昇などが起こった場合でもリスクは施主が負うという理解が必要であり、この前提を無視して消費者としてのスタンスで建物を依頼してしまうとトラブルの元となります。消費者として建物を所有したい場合は分譲・建売など、すでにあるものを購入することをお勧めします。

4.建売と建物を建てることの違いを知る

よく建築家に依頼すると設計料が追加され、その分お金が多くかかるという声を聞きますが、それは建売のものを買うのと実際はあまり大差がないと思います。建売でも、先の消費者と同様に、それを生産するまでの内訳が見えないだけで、そこには設計料、施行料、広告料などが含まれています。基本的に建物を買うにしても建てるにしても、お金の上限(予算)は自身で決めるものですから、予算に収まるものを購入または依頼することが原則です。建築家に依頼した際の大きな違いとしては、建物を所有するまでに時間がかかることです。建物を建てることは、自分が使いたい敷地に、未だ無い建物を自身でオーダーするということですから、そこにはいろいろな要望のすり合わせと、そのための時間が必要です。その代わりに、自分の生活スタイルや考えにあった建物を手に入れることができます。なるべく早く欲しいという方や、やり取りが煩わしい、カタログ的に選べれば十分等の理由がある場合は、分譲や建売が向いています。

5.施主自身で間取り図を描かないようにする

建築に興味がある人がやりがちなこととして、間取り図を描いてくるというのがあります。気持ちはよくわかるのですが、建物には間取り以外にも様々な要素があり、それらの関係性はコストや法などの様々な条件を考慮した結果で決まってきます。理想とする空間は間取りだけで決まるわけではないため、最初に決めた間取りに引っ張られてしまい、結局施主が要望するその他の要件の達成を疎外しまいます。(間取り以外はどうでもいいというのであれば別ではありますが。)そのため依頼する際には、箇条書きでやりたいことを洗いざらい書き出し、優先順位をつけたリストを作成すると良いです。
その方が依頼された側も、条件を把握しやすく、より深掘りした提案ができます。リストに関しては書き出した後、整理を一緒にやってもらったり、ヒアリングしてもらいながら作成してもよいと思います。リストを作ることで施主自身も、自身の理想が具体的にどのようなものか考えやすくなるとともに、それがコミュニケーションの指針となるので、齟齬を減らすことにもつながります。

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著作者:jannoon

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