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暗黒日記Z #23 「うわごと」

謎にめちゃくちゃ鬱期に入っていて眠ることしかできない。ので寝ている。したら元気になってきたがいまいち頭のモヤが晴れない。いやデフォっちゃデフォな状態ではあるんだが。

今日は五反田から渋谷まで散歩した。見慣れない景色ばかりで面白かった。途中見かけたでけぇ真っ黒い建物が何かと思ってよく見たら自動車学校でビビった。東京都心は車校も無駄におしゃれである。あんな家を建てたい。三つ目くらいの別荘はあんな感じが良い。実現しない未来。

行き慣れた渋谷駅も五反田方面から歩いてくると入り口が違って面白かったな。最初普通に自分が帰宅するのには使えない所から入ってしまって、無意味にエスカレーターを往復した。旅の醍醐味を少しだけ味わえた。迷子になるのが好きなのだ。自分がどこにいるのか分からなくなると、どこにもいなくて良い存在になれた気がして嬉しくなる。どこにもいない存在になれた気がするのかもしれない。宙ぶらりんになる。このまま行方をくらましてしまおうかと道に迷う度に一瞬考える。

巣籠もり生活が始まってから、だいぶしばらくそういうことをしていなかった。いやちょこちょこ家から五キロくらいの地点までマップを確認せずに彷徨うみたいなことはしてたけど、自宅から遥か遠く、電車にかなり揺られた先でそういうことをしたのは久々だったと思う。楽しかったのでまた折を見てやりたい。この日記の更新がぱたりと途絶えた時は、意図的迷子の果てに本当にどっかへ消えてしまったのだと思っておいてください。

鬱々としてしまう時は大概どうしてこうなった? と分析しようとしてみるんだけど大概理由は見つからない。というか理由しか見当たらなくてどれが真の原因なのか分からない。全部かもしれない。じわじわ滲みてきていた汚れがとうとう中心部に到達してしまってぐはぁってなるのか。それで一旦洗ってみるけど汚れやすい環境から逃れられているわけじゃないから同じことが繰り返されるのか。諸行は無常だなぁ。生々が流転しとるわ……。

そんなこと言ってたらなんか思い出した。これすげえかっこいいね。さだまさしってロックスターだったんだな。言葉選びから何から、そこらへんのようわからん若人がやったら中二臭さで大変なことになりそうなのに、かっこよさしか生み出されてないのが驚異的。ありがとうジョー・力一。Spotifyのポッドキャストで取り上げてくれて。でなきゃたぶん一生知らなかった世界だわ。

鬱ドンが鬱ボットな時は(?)明るい物に触れたほうがいいのかもしれないけど、どうもそういうわけにもいかんよな。むしろ暗い物をどんどん求めてしまう。どうせならいけるところまでいこうってなる。どこまで落ちることができるのか試してみよう、って。恐らくあまりよくない。そのうち落ち切って今生とおさらばしいなしてしまう。その時はその時だけど。

ということで、この鬱タームで映画をいくつか観た。『コロンバス』『そして父になる』『心と体と』の三本でお送りした。じゃん、けん、ぽん。うふふふふふふ。

全部薄暗くて心地良かった。一本ずつ段階的にグラデーションで暗くなっていってるような気がする。どれが一番好きだったかっていうと難しい。難しいけど『心と体と』が一番今の自分にはハマったかもしれない。とてもよかった。夢の中で鹿として毎晩会っている二人が亀の歩みで仲を深めていく映画。とんだラブコメだった。描き方こそシリアスな北欧映画にも通じるものがあるような趣きだったけど、内容を抜き出したらほぼ少年誌のラブコメ。死ぬほど不器用で人付き合いも全然できないコミュ障な少女とどことなく天然っぽい少年による初々しいストーリーみたいだった。その実、言ってもそこまで若くないっぽい女性と明らかに四十は越えてる、何なら五十過ぎかもしれないおっさんによるロマンスだったんだけど。故にある種の不気味さも生まれていて興味深かったのである。同じ監督の『私の20世紀』って映画も一時期かなり話題になってたから観てみたい。そっちは『心と体と』に比べると精緻さはそれほど感じられないとの噂だが、あれだけの作品を作り出せる人であれば失望させられることもないだろう。

観たい映画はいっぱいあるな。そのことを考えてたらちょっと気分が明るくなってきた。いいことだ。しかし鬱りがち人間あるあるだと思うんだけど、激重な発作みてえに時々陥る鬱状態から抜け出し始めた時って若干の寂しさ無い? 私はある。日常が戻ってきてしまう、という嫌気がほんのり差してくる。知らない道から見知った道に合流した時のあの感じ。ワクワクが消失するアレ。いいことのはずなのにな。もしかすると私はマゾなのかもしれないな。まあでなきゃ小説を書くなんていうイカれた行為に熱中したりできないだろうから薄々そんな気はしていたが。落ち込みたがりなのもそういうことなのもね。自分を自分で傷つけて落ち込んで愉悦に浸っているのかもしれない。死ななきゃ治らないあれでしかねぇや。

はい。では今週はこのへんで。

どうせなら楽しく落ちていこうね……こんな歌でも聴いてさ……。

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