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暗黒日記Z #10 「アングラ」

アングラ、と聞いてどんなものを思い浮かべるのか、それは人それぞれだと思うが、私の場合は真っ先に丸尾末広の漫画が思い浮かぶ。何ならそのもの『少女椿』の世界が脳内に広がる。そこから色々と、楳図かずおやら山本タカトやら古屋兎丸やら大越孝太郎やらの絵が脳内をうじゅるうじゅると這い回る。似たようなことになる向きは少なくなかろうと思う。これが澁澤龍彦だったらもっと際限なくどこまでも奇妙奇天烈な極彩色の、気持ち黒が多めの世界が見えるのだろうと思うと、嫉妬せざるを得ない。

アングラはアングラでも、私が好きなのはいわゆる「アングラサブカル」に類するものなのだと思う。いまいち今に至ってもそれがどういうものを表す言葉なのか、そもそもそんな言葉はあるのかすら疑わしい。だがかつて私はアングラサブカルという言葉をよく耳にしたし、未だに時折聞く機会があるから、ある程度市民権を得ている表現なのだろう。

私がアングラサブカルに惹かれたきっかけは冒頭でも述べた『少女椿』だった。どうやってあの漫画を知ったのか、経路は明確に覚えている。小南泰葉というミュージシャンのブログで見たのである。彼女のブログには頻繁に様々なアングラサブカルの漫画やイラスト、映画などが登場した。当時高校生だった自分にとって、それらは全くの未知の世界で、言い様もなく美しく見えた。丸尾末広、駕籠真太郎、山本タカト、楳図かずおの魅力は、彼女から教わったといっても過言ではない。

現在、小南泰葉はミュージシャン活動をほとんど行っていない。引退宣言をしたとは聞かないが、実質そんな状態だと見てよいだろう。彼女の紹介するものと同じくらい彼女自身の音楽も好きだったので、現状を思うと少し寂しくなるが、何も過去の作品が聴けなくなっている訳ではないのだ。新作は望むべくもないにしても、多くの傑作がアクセス可能になっているので、聴きたくなったらそちらを再生すれば良い。

一番好きな「世界同時多発ラブ仮病捏造バラード不法投棄」という曲。歌詞もメロディーも歌声も全てがあまりにも、いつ聴いても刺さりまくる。こんな小説が書けたらいいのに、と聴く度に思う。そんなことは生涯叶わないだろう、とも。永遠のあこがれ。

ところで、アングラとはつまりアンダーグラウンドを縮めたものなのは間違いないのだが、私が初めてアングラという言葉を耳にしたとき、すぐにはアンダーグラウンドを指す言葉だとは思わなかった。どちらかというと「アングリー」が連想された。今でもアングラという字面には同じ感覚を覚える。実際のところ、ある種の怒りが込められた作品が多いはずなので、半ば無理矢理ではあるが符合している部分も全くないこともないだろう。アングラとアングリー。ジャジーとかファンキーとかと同じ様な感じで、アングラである様を指す表現として存在してそう。クソダサいので存在していてほしくはないが。

もう少し語りたいところだが、今日はちょっとこの辺で。

椿屋も曲によってはアングラみあるよね。

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