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童話【お花がさいたよ】(幼年物)


©️白川美古都


P1


「ソラくんもいっしょに遊ぼう」
 ぼくは、アカリちゃんにさそわれた。

 やすみ時間、みんなが遊んでいるのは、消しゴムおとしゲームだ。

 ながめていたのでルールはわかる。
 まず、机の上に、みんなが一個ずつ、消しゴムをおく。
 つぎに、ゆびで、自分の消しゴムをはじいて、あいての消しゴムにぶつける。
 消しゴムが机からおちたら負け。
 さいごまで、のこっていた消しゴムの持ち主が、勝ちだ。

「ううん、ぼくはやらない」

 机には、タイキくんの緑色の大きな消しゴムがのっている。

 ぼくの白い消しゴムは小さい。
 あんな大きな消しゴムに勝てっこない。

「たのしいって」



P2



 アカリちゃんは、ボクの角がなくなっている消しゴムをつまんだ。
 
 そして、タイキくんの消しゴムのななめまえに置いた。

 アカリちゃんは、ぼくの横に、自分の消しゴムを置いた。
 
 ほかの四人は、タイキくんをかこむように、自分の消しゴムを置いた。

「ジャンケンポーン!」

 じゅんばんが決まった。
 ぼくはさいごから二番目で、タイキくんはさいごだ。

 ゲームスタート

「エイ! ヤァ! トー!」
 みんなのきあいは、からまわりした。

 アカリちゃんまで、ミスショット!

 あぁ、みんなの白い消しゴムは、タイキくんの消しゴムのひだりがわに、雲のようにあつまってしまった。

 これじゃあ、一発で、みんな、けちらされてしまう。



P3



 さぁ、ぼくの番だ。

 ひとり、とおくへにげることもできる。
 でも、自分だけにげるなんていやだ。

 タイキくんの消しゴムの角に当てたら、うごかせるかもしれない。
 ねらいをさだめる。

 ヨシッ! 

 ぼくは消しゴムをはじいた。
 つぎのしゅんかん、ぽかーん、みんなが口をあけた。

 ぼくの消しゴムは、くるくる回って、タイキくんの消しゴムに当たらずに、みんなの消しゴムを少しずつおして止まった。

 雲のかたちがまるくなった。

「あはははは!」
 タイキくんはわらった。
 それから、こまったなぁと、頭をかいた。

「これじゃあ、母ちゃんの好きな白いアジサイみたいだ。こわせないよ」
 タイキくんは、こうさんした。

 ぼくらは、やったぁと、とびはねた。

(完)

#童話 #読み切り #言霊さん #言霊屋

〜創作日記〜

幼年物の作品を書くとき、登場人物の名前に悩みます。
そして、気がつくと、
いつも似たり寄ったりの名前になっています。
ひどい時なんて、前作と同じで、担当様にご指摘されたり(笑

イラスト:pasteltime様

新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。