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童話【一番近くにあるお星】(幼年向け)


©️白川美古都


 

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 野うさぎのロンとランは、巣穴から、ひょっこり顔をだしました。
 ロンは、体の大きなランのことを、お兄ちゃんと呼んでいます。

 兄弟のお母さんは、車にはねられて死にました。

 お母さんは、いなくなる前に、こんなことを言っていました。
「いつか、お母さんはいなくなるけれど、一番近くの星にいるからね」
 
 ロンは空を見上げました。
 降り続いた雨は上がり、すみわたった空には、たくさんの星がかがやいています。
「お兄ちゃん、お母さんはどれ? どの星が一番近くにあるの?」


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 ロンはさみしくなりました。
 星は多くありすぎて、どれが、お母さんだかわかりません。

「ど、どれって、あれさ!」
 ランは当てずっぽで指さしました。

 ランにもわかりませんでしたが、ロンに悲しい思いをさせたくありません。
「ふーん」
「腹がへったろう。飯を探しに行こう」
 ランは話題をかえました。
 
 野うさぎは昼に寝て、夜になると食べ物を探しにでかけます。
 草の葉や木の芽ややわらかな木の皮を食べます。

 ロンとランはならんで走りだしました。

 ここらの山は、人間が道路を作ってから、食料が半分になりました。
 数日前も、ロンとランは、お母さんといっしょに、おなじ山道を走りました。

 そして、道路をわたるとき、
 ドカーン!
 お母さんが車にはねられたのです。

 人間たちは車をおりて、お母さんを木の根もとにうめました。

「お兄ちゃん、お母さんのお墓はどの木だった?」
 ロンはこわくてふるえていたのでわかりません。

 ランも目をこらしましたが見分けがつきません。
「こ、これかな」


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 またしても、ランは、当てずっぽに大木にくっつきました。

 ロンとランは、今夜はここで寝ることにしました。

 草をかきわけ、やわらかな土の上によこたわります。
 土はあたたかく、まるで生きているみたいです。

「そうだ、地球だ!」

 ロンとランは気づきました。
 一番近くにある星、お母さんはすぐそばにいるんだと。

                    (完)


#童話 #読み切り #言霊さん #言霊屋


〜創作日記〜
これは生き物をテーマにした幼年向けの童話です。
題材は「野うさぎ」でした。
そして、偶然、大昔書いた「詩」にこんな内容の作品があったので
それをベースに童話にしました。

イラスト:rich_poppy335様

新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。