童話【一番近くにあるお星】(幼年向け)
野うさぎのロンとランは、巣穴から、ひょっこり顔をだしました。
ロンは、体の大きなランのことを、お兄ちゃんと呼んでいます。
兄弟のお母さんは、車にはねられて死にました。
お母さんは、いなくなる前に、こんなことを言っていました。
「いつか、お母さんはいなくなるけれど、一番近くの星にいるからね」
ロンは空を見上げました。
降り続いた雨は上がり、すみわたった空には、たくさんの星がかがやいています。
「お兄ちゃん、お母さんはどれ? どの星が一番近くにあるの?」
ロンはさみしくなりました。
星は多くありすぎて、どれが、お母さんだかわかりません。
「ど、どれって、あれさ!」
ランは当てずっぽで指さしました。
ランにもわかりませんでしたが、ロンに悲しい思いをさせたくありません。
「ふーん」
「腹がへったろう。飯を探しに行こう」
ランは話題をかえました。
野うさぎは昼に寝て、夜になると食べ物を探しにでかけます。
草の葉や木の芽ややわらかな木の皮を食べます。
ロンとランはならんで走りだしました。
ここらの山は、人間が道路を作ってから、食料が半分になりました。
数日前も、ロンとランは、お母さんといっしょに、おなじ山道を走りました。
そして、道路をわたるとき、
ドカーン!
お母さんが車にはねられたのです。
人間たちは車をおりて、お母さんを木の根もとにうめました。
「お兄ちゃん、お母さんのお墓はどの木だった?」
ロンはこわくてふるえていたのでわかりません。
ランも目をこらしましたが見分けがつきません。
「こ、これかな」
またしても、ランは、当てずっぽに大木にくっつきました。
ロンとランは、今夜はここで寝ることにしました。
草をかきわけ、やわらかな土の上によこたわります。
土はあたたかく、まるで生きているみたいです。
「そうだ、地球だ!」
ロンとランは気づきました。
一番近くにある星、お母さんはすぐそばにいるんだと。
(完)
新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。