童話【カニたちの花火大会】(暦物語)
今日はお盆の花火大会です。
日のかたむいた砂浜にたくさんの人があつまっています。
「あぁ、いいにおい!」
一羽のカモメが砂浜にまいおりました。
屋台から、醤油のこげるにおいがします。
カモメは人間の食べ物にありつくきまんまんです。
と、声がしました。
「こら、まちなさい!」
お父さんガニが、子ガニをおいかけています。
子ガニたちはまちません。
「そっちは、人間が多い。人間の食べ物をねらったカモメがいるかも……、はっ!」
お父さんガニは息を飲みました。
こつん!
子ガニたちは、カモメの細い足にぶつかりました。
カモメはいつも小さなカニを食べて生きています。
「今夜は花火大会だ。おまえたちを食べないから安心しろ」
カモメはいいました。
とくべつな夜に、とくべつおいしい物を食べたかったのです。
「や、約束だぞ」
お父さんガニはこわい声でいいました。
「あたしたち、花火をさがしているのよ」
子ガニたちは人間の遊んだ花火の燃えカスをひろいました。
「そんなもん、どうするんだ?」
カモメは首をかしげました。
「お母さんに見せてあげるの」
子ガニたちは声をそろえました。
人間がおしよせて、カモメとカニたちは段ボール箱へにげこみました。
「腹へったなぁ」
カモメはつぶやきました。
お父さんガニはぎょっとしました。
「こ、これから、きっと、うまいものにありつけるさ」
お父さんガニは、子ガニをかばいました。
「見て、これ、線香花火よ」
子ガニたちは声をそろえます。
未使用の線香花火をひろえたのです。
「そんなちっせぇ花火じゃなくて、もうすぐでかい花火があがるだろう」
カモメはあきれ顔です。
子ガニたちは線香花火をたき火にくっつけると岩かげに走りました。
パチッ、パチパチ……
金色のちいさな花がさきました。
「きれいだなぁ」
思わず、カモメは見とれました。
岩のすきまで、なにかがうごきました。
「お母さん、わらってるかな?」
子ガニたちは、線香花火をゆらします。
また、岩のおくで、なにかがうごきました。
「もちろん、わらってるさ……」
どうやら、お母さんガニは、穴にこもってしまったようです。
お父さんガニが線香花火にふれたとき、
ぽとん
花がおちました。
ドッカーン!
夜空に花火があがり、びっくりした人間がトウモロコシをおとしました。
焼きトウモロコシはころがって、カモメの足もとでとまりました。
「おっ、いただき!」
カモメはトウモロコシを食べながら、花火をながめました。
お父さんガニと子ガニたちが、なかよく花火を見あげています。
岩のおくから、すーっと、白いけむりがでてきました。
けむりは、カニの家族のまわりをまわると、空にのぼっていきました。
「お母さん、また来年ね」
カニたちはちいさなハサミを、バイバイとふりました。
新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。