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白樺の多目的利用をめざして 白樺は、マザーツリーといわれますが、 ミラクルツリーです

白樺スピリッツの原料となる白樺の多目的利用について、有限会社さっぷ代表の柳生佳樹が美深町で35年間に渡って取り組んできた内容と今後のビジョンをご紹介します。

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はじめに

わたくしが1986年に白樺樹液の商品化を始めて、いつの間にか35年目に入りました。この間、樹液だけでなく、いつも白樺からなにかできるか模索してきました。

道北地域に多数群生している白樺。チップか割りばしの材料にしかならないと言われていた白樺から、様々な産業をうみだすことができれば、この地域の発展に大いに寄与すると考えています。

白樺の利用できる部位は次の4つです。

1. 白樺樹液

2. 白樺樹皮

3. 白樺の材そのもの

4. 白樺の葉と枝など

これら4つについて、私が取り組んできたこと、そしてこれから取り組んでみたいことを順番にお伝えします。

*副題にある「マザーツリー」について:白樺は山火事直後の荒野に自生する樹種であることから、英語で「マザーツリー(母なる木)」とも呼ばれています。

春のファームイントント

白樺樹液

それでは、白樺と出会うことになったきっかけとなった白樺樹液から始めます。

1986年にカナダに旅行に行った時、メープルシロップがお土産品としてたくさん売られていました。その時、日本でもメープルシロップを生産できるのではないかと思いました。

帰国して、北海道大学の農学部林産科の寺沢教授(当時助教授)を訪ねて相談しました。

その時、先生からアドバイスされたのは「日本には、メープルが全く無いし、その亜種であるイタヤカエデも群生していない。しかし、白樺ならばたくさん群生しているし、樹液も大量にでる。イタヤカエデに比べたら、甘みは少ないが、清涼飲料水にしたら最適だと思う」とのことでした。

半年間悩みましたが、最初目指したメープルシロップの製造ではないけれども、樹液を利用するのは同じだし、大量に原料を調達できるのは白樺樹液の方が大いに有利で商業化しやすい、との結論を得ました。

1987年春から、製造を始めるために色々調査し、試作も開始しました。まず、白樺樹液の採取はどのようにしたら良いか、ろ過装置はどんな機材が良いかいろいろと情報を集めました。

白樺樹液の採集1-2

しかしながら、はじめから難問が立ちはだかりました。試作をしたところ、180mlのビンの中に白い沈殿がふわふわと浮き出したのです。

商社や観光関係の方に意見を聞いたところ、この白い沈殿を取り除かないかぎり、商品として販売しても、消費者は買わないだろうとのことでした。後で分かったことですが、この白い沈殿は、リン酸カルシウムと食物たんぱく質であり、加熱することにより生じてくる物質でした。

それから、色々な試行錯誤を繰り返し、設備投資のための資金計画も練り直して、1990年に工場も移転し、現在稼働している状態になりました。

購入した機械は、蒸気ボイラー、ろ過装置、熱交換器3台、2トンタンク2台、4坪の冷蔵庫、充填機、打栓機、横ラベルを貼るシーラーなどです。総額5000万円の投資になりました。

これほど、たくさんの投資をして、稼働日数は、せいぜい2か月、本当に採算がとれるのかと、不安の毎日でした。

しかし、沈殿を完全に取り除くことができた「森の雫」の快進撃は止まりません。このような自然派で、しかも味も良い清涼飲料水は、ほかには全く存在しないからです。

「森の雫」という命名もぴたりと決まりました。この名称は、弊社に、ビン、キャップ、横貼りシールなどの包装資材を納入している会社の経営者の奥様のアイデアでした。

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毎年、美深町仁宇布地区の6ヘクタールにある2000本の白樺から、少なくとも50トン以上、多い年には130トンの樹液を得ました。毎年、180mlのビンで20万本の製造をしました。

その後、この白樺の樹液を化粧品原料として使いたいという化粧品メーカーが来られました。ここ30年の間、平均すると、毎年飲料用に40トン、化粧品40トンの白樺樹液を得ました。

弊社は、別会社で羊を飼育する松山農場を同じ美深町仁宇布地区で経営していましたが、白樺の木が、平坦でしかも群生している山林を所有していませんでしたので、操業開始の1988年、1989年は美深町長にお願いして、町有林を借りました。

そのうち同地域で、個人所有の、平坦で白樺が群生している林6ヘクタールが見つかり、早速、購入しました。1990年から、約30年間、毎年白樺の樹液を得ていますが、枯れることなく、樹液を提供してくれています。

地上50センチの高さに、ドリルで開ける穴は、直径2センチ、深さ4センチで毎年、穴の場所は、変えています。シーズンが終了したら、毎年、穴に腐朽菌が入らないように木栓をします。

しかし、最近、どうも樹液の出る量が少しずつ減ってきたようです。これは、おそらく、白樺が老木化してきているせいだと思います。白樺の樹齢が60~90年といわれていますが、弊社の白樺の樹齢は70年前後といわれているので、毎年少しずつ枯れていく状態ですから、樹液の出る量も少なくなっているのだと思います。

ですから、新しい白樺群生林を探さねばなりません。これが弊社の今の大きな課題です。

白樺の樹液については、清涼飲料、化粧品がすでにたくさん出回っていますが、白樺樹液を原料にしたクラフトビールはなかったのではないでしょうか? 2019年に美深白樺ブルワリーを、わたくし自身、美深町で立ち上げました。

クラフトビールボトル2

2020年には松山農場産のそば粉と北海道産小麦に白樺樹液をブレンドした風味豊かな五割そばを開発しました。

美深白樺樹液蕎麦

そのほか白樺樹液パンもどうでしょう。すでに、東京から、富良野に進出した有名ベーカリーでは、大量に白樺樹液の入ったパンを製造しています。わたくしも、パンの製造職人を招き、美深で白樺樹液入りパンをぜひとも製造販売したいものだと現在計画中です。

白樺樹皮

10年ほど前、スェーデンから帰国した女性が、フィンランド、スェーデンの伝統工芸である、白樺樹皮細工の技術を広め始めました。いまでは、愛好者が、日本全国に数百人はいると思います。

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日本には、ブドウの皮などの樹皮を利用した工芸がありましたし、アイヌの人たちは、オヒョウ,シナノキなどの樹皮で衣服を作っていました。

でも、白樺の樹皮の工藝品は、アイヌの人達の間では、それほど盛んではありませんでしたので、この北欧から、新たに伝来した白樺樹皮工芸は、日本の女性には、北欧ブームも相まって、非常に新鮮に映ったのです。

現在では、北海道は、もちろんですが、東京、名古屋、大阪にたくさんの白樺樹皮工芸作家がいます。

わたくしは、毎年200本の白樺から1000kgの白樺の樹皮を得ています。そして、樹皮工芸の材料として、すべて、その年のうちに販売を終了します。

白樺樹皮加工2

樹皮を剥いた後、ほとんどの白樺は、枯れてしまいます。ですから、薪の材料として、翌年切り倒すと、翌年には、ちょうど良い具合に水分が抜けていて、すぐその年から、薪として燃やすことができるのです。

200本の白樺からできる薪の量は、弊社で使用しているふたつの薪ストーブを1年間維持するのに十分です。

白樺材

かつて白樺材はチップと割りばしにしかならないというのが常識でした。

しかし、最近、旭川の家具工場が、白樺から立派な椅子とテーブルを製作したのです。丈夫さも十分で、その上白く、美しさも十分兼ね備えています。弊社の別法人で経営するレストランにお越しくだされば、白樺材から作られた36脚の椅子と9台のテーブルをご覧いただけます。

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わたくしは、建築関係の専門家ではないので、はっきりしたことは申せませんが、もっといろいろな建材などの用途に使えるのではないでしょうか? さらなる大きな可能性を感じます。

白樺の葉と枝

白樺の葉と枝についても可能性を感じます。現在、白樺の葉は、化粧品用に、年間50kg収穫していますが、ハーブティーとしても有望です。

また、枝、直径5~10センチの細い幹部分もインテリアなどの市場が広がっています。

葉のついた小枝の根元をゴムで束ねたものも、サウナ用品として注文が増えています。サウナの中で、バタバタと体をたたくと、血行がよくなるとのことで、サウナの本場フィンランドでは、日常的にたくさん使われています。最近、日本でも、サウナブームになっていて、市場の拡大が見込まれます。

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白樺の「木の酒」、今後のビジョン

以上のように、白樺の用途の多様性については、驚かされるばかりですが、ほかの樹木の場合はどうかというと、これほど多様な用途に用いられてはいません。

そして、さらに有望な白樺の用途として「木の酒」造りにチャレンジしています。

私の夢は、この北海道の北の目立たない町美深を、白樺に徹底的にこだわって町おこしの中心に据え、すでにある①白樺樹液の工場②白樺樹液のビール工場を核として③白樺原料の「木の酒」④白樺の家具生産工場⑤白樺樹液の化粧品工場⑥白樺の樹皮、葉、枝などの加工場などを集約します。

そして、⑦美深に宿泊された方には(ファームイン・トントキャンプ場も経営しています)、本格的なフィンランド式サウナを用意し、白樺の葉で作ったヴィヒタで体をたたいて、サウナから出た後には②の白樺樹液ビールと③の白樺の「木の酒」も飲んで楽しんでもらい、おおいに、健康を増進して欲しいと思っています。

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わたくしは、以上のことを、これから10年くらいで実現したいと思っています。


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