ベッドの周りに。

下駄箱を開けるとサンリオのキャラクターが描かれた桜色の封筒があった。
上履きの上に置かれたそれを手にとって
自分の名前が宛名に書かれていることを確認し
あたりをキョロキョロと見回した。
誰にも見られていないことを確認し封を開けた。

それが人生で初めてもらったラブレターだった。

小学5年の頃だったので
詳しい内容は覚えていないけれど、
僕のことが好きだと書いてあり
放課後、どこかに呼び出してくれていた。

まだまだ幼かった僕は
どうしたら良いのかわからず
それを担任に相談した。
当時、おそらく50歳くらいの女性の先生だった。

中身を確認してもらった後
なぜかそれを先生が預かることになった。
今となって思うのだけれど、
もしかしたら筆跡で誰かわかったのかもしれない。

ただ、当時はほんの少しだけ思春期が近づいていたこともあり
「もしかしたらクラスメイトのイタズラなのではないか」と疑った。
仮にもしイタズラだった場合、
信じて呼び出しに応じたら、
あとで勘違いした残念な奴、みたいに思われるのが嫌で、
その日の放課後はそのまま帰った。

なぜか最近、そのことが思い出されて
もしイタズラじゃなかった場合、
とても酷いことをしてしまったんじゃないかと
心がもやもやする。
ちゃんと謝りたいという気持ち半分
相手が誰だったのか知りたい。

仮にイタズラじゃなかったとしても
小学5年生の頃のことなんて
相手もきっと覚えていないと思うので
今更どうこうしたところで
何にも生み出さないことも重々承知している。
そのうえ相手の大事な時間を
こんなことで奪うのもどうかとも思う。

7〜8年ほど前に
母校の小学校は廃校になった。
正門を潜って
最初に見える校舎。
音楽室と図書室と
5年と6年の教室があるあの校舎の1階の下駄箱。
幼い頃の薄れていく記憶の中でも
まだ鮮明に覚えている光景のひとつ。

担任が本当に50歳だったのかもわからないけれど、
もしもそれくらいだとしたら
今は70代になっている。
真相を知っているのはもしかしたらその人だけなのだとしたら
本当のことを知るためのタイムリミットはもうそんなに長く残されていない。
もやもやは出来る限り残さずにいたい。
さて、どうするべきか。

こんな時こそあれだな。
ナイトスクープだな。
依頼出してみようかな。

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