all i wanted

4月。世間は祝日。
学生の頃はピザのデリバリーで休みなどはなく
時給1,200円でスタジオ代を稼ぐために
アクセルを回し続けていた季節。

高校時代の友人が東京に来ていたので遊んだ。
男二人で上野動物園。
これは一体どういう状況やねん、と思いはしたものの、
パンダを見たり、ハシビロコウを見たりして
ペンギンがやたらと生臭かっただけで
無駄に笑えたり。
夕方、ゴリラとライオンのいるエリアに向かったのだけれど、
もう閉館時間になってしまって
「まじでおれら計画性ないよなー」とか言って
それでもなんか居心地が良かったり。
それが昨年のこと。

結局、そういうので良いんやわ。

おれは友達や好きな人たちと
どうでも良いこと話して
暇つぶしみたいな時間の中を
ずっと泳いでいたかった。

大富豪になりたいんやけど、
それはなんでかって言うと
何にも縛られずに
終わらない夏休みの中にいたいだけやということ。

ずーっとサボってきた宿題に追われて
2学期が始まったというのに
おれはまだ宿題が終わってないの。

それを先生は怠惰と言って
怒っているけれど、
おれは良い大学に入って
良い会社に入って
30歳くらいにマイホームを買って
娘と息子と奥さんと犬と。
定年まで勤め上げて
退職金でのんびり過ごしながら
孫の夏休みには遊園地に連れて行ってあげて。

そういう夢を見ていた訳ではなかったんだな。

そして幸か不幸か
そういうどこかで当たり前のように謳われていた「普通の暮らし」は
おれたちミレニアム世代には
どこか浮世離れした物語のようにも感じる。

幸せの形は多様化していて
それは街の名前ではないけれど
ダイバーシティというふうに呼ばれて、
いまだに残る昭和の価値観に抑圧されて苦しく感じることも稀にあるけれど、
随分と理想の生活を求めるのは
簡単になったのかもしれない。
誰にも媚びずに生きる、
なりたい自分を目指すことは
ある程度は誰にでも目指せる。
結局少しずつ世界は良くなっているのだと思う。

その一方で
資本主義は経済格差をますます拡げている。
おれが求める終わらない夏休みを手にするためには
どうもまとまった資産が必要なんやわ。
本当の本当に心の奥底の声を記すなら
遊びがそのままお金になれば最高やったんやけど、
もちろん今もそれを目指しているけれど、
そんなに簡単ではない。
ぶっちゃけ運ゲーやとすら思ってる。

でも、それでも人生は続くので、
おれはまとまった資産を手にして
終わらない夏休みを手に入れると決めている。
世間に後ろ指さされようとも。
大事な人の暮らしを守って。
その上で終わらない夏休みを手に入れる。
結末はどうなるかは全然わからんけど。

大丈夫。
どうせいつか終わりが来る。
その最終日までに宿題が終わってれば
2学期が来ても誰も怒らんやろ。

無駄なポジティブでも
行き過ぎたネガティブでもなく
おれはおれの体温のまま。
おれが欲しかったものはそれ。
それがあれば何も過不足はない。

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