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「アットホームな職場=ブラック」なのか?

特徴的な単語だけで見分けることはできない

求人情報で
・アットホームな職場
・初心者歓迎
・やりがいのある仕事
などの言葉が並んでいたらブラック企業と思え。そんな風潮もあるが、果たして本当だろうか?
結論から言うとNOだ。それだけでブラックだと結論づけるのは安易すぎる。
理由として次の3つがあげられる。
 ①素人が良かれと思って書いている可能性
 ②まぎれもない事実である可能性
 ③それらの単語がない=ホワイト ではない
次からは①~③、それぞれの理由について解説していく。

……が、その前に軽く自分の仕事について紹介しておいたほうが、記事に対する信頼感が上がるだろう。
私は愛知県でフリーライターをしている。企業のHPやパンフレットに書かれる企業の紹介文や、企業が集客のためにWeb上で公開しているユーザー向けの情報など、企業の情報発信を手助けするのが主な仕事だ。その中には求人情報も多く含まれている。大企業から中小企業まで、さまざまな企業の求人情報を書いてきた経験から、特徴的な単語のみでブラック企業を見分けようとする風潮に危機感を覚えたのだ。それで、こういった形で書いてみることにした。

閑話休題。

素人が求人情報を書くケースも多い

まずは①だ。
求人情報の書き方は大きく分けて2つある。1つはプロに頼む方法。もう1つは自分たちで書く方法。
求人情報サイトにも様々な種類がある。大きいところではリ〇ナビ、マ〇ナビ、D〇DAなどだろうか。このようなサイトは、企業から依頼を受けて求人情報を掲載するのだが、サイトや料金プランによって、さまざまな掲載方法がある。高額なプランであれば、ライターやカメラマン、編集者が企業に訪れてヒアリングを行い、サイトに掲載する文章や写真を作成する。一方で、低額なプランの場合、企業の人が文章を自分たちで書き、それをそのまま掲載する。
文章のプロでもない人間が、急に「求人向けの文章を書け」と言われたらどうなるか。
「職場の雰囲気は悪くないし、まあ働きやすいんじゃないかな?じゃあアットホームって書いとこう」
「この仕事そこそこ面白いし、誰かの役に立ってるって気もするもんな。つまり、やりがいがあるってこと?」
となる。
様々な人にインタビューやヒアリングを行って分かったことだが、人は見栄えの良いまとまった言葉が好きだ。貴重な経験、多大なるご恩、最先端の技術、素晴らしい作品。何かを表現しようとしたとき一番最初に出てくるのは、こういうキレイだけれど、イマイチ実情が分からない言葉なのだ。プロと素人の差は、それを掘り下げることができるかできないかでもある。したがって、素人が書いた求人情報には、ネット上では忌避されがちな単語が並ぶ羽目になる。
つまりそこそこホワイトかもしれないのに、ブラックだと判断してしまう可能性が出る。

真実ならそう書くしかない

続いて②だ。
職業柄、様々な企業の人と話をする。企業向けの営業をやっている人ほどではないかもしれないが、職業として接する企業の数は、比較的多い部類だろう。そうするとそれなりの確率で、本当にみんなが仲良く、自分たちの仕事に誇りをもち、のびのびと元気よく働いている企業を目にすることがある。これがまたそういう企業に限って、新人研修制度なども素晴らしく整っていたりするのだ。つまり初心者、未経験者歓迎だったりする。
「え?なにここ。うらやましい。私もこんな職場で働きたかった」
以前は会社員をしていたから、ついそんなことを思ってしまう。
企業の中の人が良かれと思ったわけでもなく本心から、もしかしたらプロのライターが「これは本当だ」と、書いている可能性もある。
せっかくのホワイト企業、特徴的な単語の1つや2つで逃すのは、ちょっともったいない。

プロのライターは誤魔化す

最後に③だ。
①、②はまだいいが、一番危険なのがこの③。プロのライターや編集者は「アットホームな職場」とか「やりがいのある仕事」なんて言葉が、今のご時世では逆に忌避されることを知っている。依頼してくる企業側も知っていることもある。つまり使わない。お金をもらって求人情報を書いている以上、どんなヤバい企業でも悪く書くことはできない。悪いイメージにつながりそうな言葉は極力排除される。インタビューの中で「うわ、マジか」という情報が出ても、オフレコ扱いとなり、求職者の目に触れる形にはならない。とはいえ同業者と話している限り、やはり「ホワイト企業のようには書けない。どこか不自然さや引っかかりが出る」という。正直私も、明らかにヤバい企業の求人は、あまり上手に書けている気がしない。
忌避されるワードがない=ホワイト ではない。特徴的な単語の有無だけで判断すると、ここに引っかかってババを引く羽目になる可能性がある。


総合的に判断せよ

じゃあどうすればいいか?
特徴的な単語の有無だけでなく、様々な要因を絡めて総合的に判断するしかない。求人の文章が素人くさかったり求人ページが簡素な場合には、特徴的な単語が並んでいても大丈夫かもしれない。
いかにも金をかけた求人広告なのに、読んでいて妙な引っかかりを感じる場合は、変な修正が入ったり、あまりのヤバさにライターの筆が進まなかった可能性もある。(依頼されたライターがポンコツだった可能性も……ゲフン)
さらに大企業などでは、部署によって全然雰囲気が違う。求人を担当する部署はホワイトでも、配属される部署では暴言が蔓延しているケースも少なくない。
結局のところ世に言われているような、明確な業務拡大計画もないのに大量求人してるとか、仕事の内容が不明確で募集職種と微妙にズレを感じるとか、そういうところも含めて総合的に判断するしかない。特徴的な単語の有無だけで判断していては、微妙なサインを見逃し、総合的な判断を誤る結果につながるだろう。

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