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「利用規約」で自分(たち)を守ろう

みなさんは普段利用しているサービスの利用規約を読んだことはあるでしょうか。もしくは会社で提供しているサービスの利用規約を読んだことはあるでしょうか。難しい言葉がたくさん並んでいて、正直とっつきにくいという人が多いのではないかと思います。私も例に漏れずその一人で、重要だとは思いながらも抵抗を感じていました。

しかし、先日【良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方】という本を読んだことで、抵抗がなくなったとまでは言いませんが、利用規約やプライバシーポリシーに対する重要性をより強く認識し、同時に少しの慣れによって抵抗が少し和らぎました。本のタイトルに「作り方」とありますが、0から作り上げることはなくても普段からサービスを運用している人はもちろんのこと、ほとんどのネットユーザーに役立つ本かと思います。

このnoteでは本を読んだ感想や、それを受けて調べたことを書いています。なお、実際の対応時には専門家への確認をお願いします。本noteを参考にして仮に読者に損害が生じたとしても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

noteで作成したコンテンツの著作権は?

さっそくですが、noteで作成したコンテンツの著作権はどこに帰属するのでしょうか。作成した本人(クリエイター)だよなと思いつつ自信を持って答えられない人が多いのではないかと思います。話の流れからすると実はそうではないとなりそうなので恐縮なのですが、noteでは作成したコンテンツの著作権はクリエイターに帰属します。

3. デジタルコンテンツの取扱い
3.2 クリエイターが制作したデジタルコンテンツの著作権は、クリエイターに帰属します。当社は、本利用規約に基づくメディアおよびプラットフォームとしての機能を提供する立場であって、ユーザーに対しデジタルコンテンツの著作権の譲渡、貸与等を認めるものではありません。

note総則規約

しかし、「勝手にそのはずだ」と期待することと「利用規約にそう書いてある」と把握しておくことは大きく違います。万が一、著作権を譲渡する規約だった場合には、作成者が投稿したコンテンツであってもサービス提供者がコンテンツを書籍化してしまうということもありえます。

このようにサービスを普段使いながらも、実は意識できていないことはたくさんあるかと思います。例えばTwitterのリツイートはどのような権利や扱いで成り立っているかなどは気になってきませんか。

都合よく書いておけばいい?

一方で、サービスの提供者の立場からすれば、サービスの自由度は上げておきたいですし、面倒事は避けたいというのが本音だと思います。ちなみにこのnoteでも「本noteを参考にして仮に読者に損害が生じたとしても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。」と前述しました。利用規約でも似たような表現を見たことないでしょうか。

本サービスに関して利用者に生じた損害については、事業者は一切責任を負いません。

利用規約によって損害の責任を制限することは一般的らしいのですが、このような事業者に有利すぎる免責規定は無効と判断される可能性が高いです。なぜなら、サービスの利用者・消費者は弱い立場であるということから、不当に不利益を被らないように、さまざまな法律によって保護されているためです。

現実的にはユーザーが増えれば増えるほど、ある程度のトラブルは避けられません。そして仮に事業者に責任はなくとも、レピュテーションリスクを考えると誠実な対応が求められます。

ちなみに再びnoteの利用規約を見てみると、
「ソフトウェアの障害は合理的な範囲で管理するが保証はできない。サービスに関連した損害には条件付き例外はあれど、責任は負う。クリエイターのコンテンツによるウイルス感染は保証しない。(note総則規約 13. 責任)」
というように、制限はかけつつもある程度の責任を負う旨が記載されています。どのくらいまで責任を負うことが妥当なのかはサービスの内容にもよるかと思いますが、全く責任を負わないという旨は避けるべきです。

ブログに関しては記載した免責事項でも大丈夫と思っている一方で、個人的な不安は大きいです。なので、何か勘違いなどあれば教えてもらえると嬉しいです。

法務担当がなんとかしてくれる?

「でも利用規約を作る機会はないから大丈夫。法務担当の人が頑張ってくれる。」と思うかもしれません。しかし、実際に利用規約をどのように表示するかは、最終的に企画やデザイナー、エンジニアが実装しているのではないかと思います。
「ユーザーの負担を考えて、同意の取得を極限まで簡略化した。」
「利用規約に遷移するはずのリンクが機能していなかった。」
このようなシーンはサービスを開発・運用している人であれば、容易に想像がつくのではないでしょうか。

実装によって同意を取得したとは言えなかったり、再度改めて同意を取得する必要が出てきたりすることがあります。いくら利用規約そのものがしっかりしていても、同意を取得したとみなされなければ意味がありません。利用規約を作ることはなくても、扱う立場にある人は意識を高めておくに越したことはなさそうです。

話題のLAPRAS

エンジニアの中で話題のLAPRASというサービスがあります。エンジニア向けの転職マッチングプラットフォームなのですが、面白い特徴としてLAPRASに登録したユーザーに加えて、クローリングによって150万人のデータベースを作成しています。

LAPRAS SCOUTはネットの公開データから150万人のDBを自動作成します

LAPRAS SCOUT

公開データから自動作成されるということで一瞬ぎょっとしてしまいますが、これは「オプトアウト」と呼ばれるいくつかの条件を満たした上で、個人データを第三者提供できる手続きです。これを実現するために、要望に応じて個人データの提供を停止するための「オプトアウト申請フォーム」も用意しています。

そのため法律的には何の問題もないのですが、おそらくはあらゆる声に対して答えられるロジックをしっかりと用意しているのだと思います。

記憶に新しいLINEの話

大手企業では法律的には問題はなくても、社会からの風当たりが強くなります。最近ではLINEが「個人情報を国名の明示がなく、外国にある第三者に委託していた」という報道が記憶に新しいです。

(報道の時点では)法的義務はなかったようですが、少しでもユーザーが不安に思うことがあるとあっという間に炎上してしまうのは、他人事ではなく非常に恐ろしいことです。そして一度炎上していまうと、法律の話を越えて納得・安心してもらうために莫大なコスト支払う必要が出てきます。

まとめ

全てを完璧に把握するのはとてもじゃないですが不可能です。それは専門家であっても難しく、そのため自身は利用規約やプライバシーポリシーの重要性を認識し、「これで大丈夫なのだろうか。」とアンテナを張りつつ、内容に関しては多くの人の視点を入れてみることが大切だと思います。LINEの例を挙げましたが、グローバルでもGAFAを筆頭にテック企業への規制や風当たりはますます強くなっているため、それに伴い法律や規制に関する感度の重要性はこれから増えていきそうです。

とはいえ、ユーザーからすれば利用規約は読みたくない、でもサービスを支える上でかかせないし、その表現に大きな自由度があるわけでもない。本書にあるKiyaku by Designのように、優れた規約とユーザー体験を上手く同居させたサービスが評価される仕組みや流れができればいいなと思います。

Amazonのアソシエイトとして、本ブログは適格販売により収入を得ています。

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