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『基礎から学ぶ統計学』は初版からすでに洗練された入門書


世の中に統計学を学べる教材はたくさんある

データが世の中に溢れていて、データを読み取るためのリテラシーとして、統計学やデータサイエンスの重要性が高まっている。
その需要に答えるように勉強のための教材はネット上にたくさん存在する。しかも無料のものも多い。実際に自分もネットで見れる教材をいくつかブックマークしていた。

お金出して買って良かった本

しかし、ブックマークだけして役立てていない人も多いのではないかとも思う。動画を見てもその時はわかった気持ちになっても、あまり身になっていない。ネットのpdfはあまり見る気にならない。
ここであえてお金を払ってでも身になったと思えた統計学の本を紹介したい。

中原 治『基礎から学ぶ統計学』(羊土社、2022年)

こちらの本を2ヶ月ほどかけて一通り読み通した。なお著者は3ヶ月ほどかけてゆっくり学ぶことを薦めているため、もう少し時間をかけたほうがいいかもしれない。

オススメのポイント

読みたくなる

とっつきやすさはこれを見てもらえればわかりそう。

学生時代に教科書はなかなか開く気が起きなかったが、資料集なら開きたくなる気持ちに近いかもしれない。フルカラーで図や写真がふんだんに使われている。

また、歴史上の偉人へのリスペクトを持てるようになる。数表を時間をかけて作ってくれてありがとう。そんなことを思わせるエピソードが勉強の間に挟まる。昔の数学者のおかげで簡単に統計学を使えるようになったんだなと思うと多少めんどうな計算も昔はもっと大変だったはずという気になれる。
(とはいえ今ではソフトウェアですぐにできてしまうけども。)

とにかくわかりやすい

わかりやすさの根本はやはり著者が大学で統計学を長年教えていて、学生からのフィードバックを参考にしながら改善を重ねてきたからだ。つまり第1版でありながら、すでに何回も版を重ねてきたような本になっている。

その他に、他の入門書との違いで感じたことをいくつか挙げる。

読者のつまづきポイントがだいたいわかっている。
ちょっと本文で「ん?」となりそうな箇所の後には、すかさずAdviceという形で補足情報が入る。それにより読み進める上で出てきた疑問はすぐに解消される。

何度も復習する。
一般的に教科書は一度出てきた内容は既知の内容として扱われ、次の内容が展開される。しかし、一度読んだだけか、もしくは少し練習問題を解いただけで、マスターできれば誰も苦労しない。一度出てきた内容も慣れるまでは雑に省略されるのではなく丁寧に説明される。
すでに理解できていて復習が必要なければ、単に読み飛ばせばいい。

もちろん入門書だからといって、大学で教えている内容であり正確さを犠牲にしているわけではない。理解のために必ずしも必要ない数式の導出などは省略しつつも、Web上の副教材として見ることができる。(それでも数式の導出は高校2年生レベルの数学の知識があればわかる内容ではある。)

一般のビジネスパーソンには十分

この内容がわかれば世の中でよく目にするレベルで、統計に関することは十分理解できるようになる。いわゆるデータに騙されるみたいなことは少なくなるのではないか。
そして、この本の内容を足がかりとしてさらに本格的な統計学の本に入ることも可能である。

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