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それぞれの感じ方

私がお世話になっている美容室は、美容師さんが二人いる。
いるのだが、主従関係ではなく、どうも、屋根は一つだが、
その下に二つの美容室があるような営業形態をとっているようなのだ。
きちんと聞いたことはないが、
私がお願いする美容師さんは窓際の椅子しか使わない。
もう一人の方は奥側の椅子しか使わない。
そして、お互いを指名したお客さんには一切手を出さない。
お互いのお客さんにも、
そちらはそちら、こちらはこちら、という線引きをしているようだ。
一応、店長という役割は決めているようだけれど、それは便宜上のようだ。
私のようにどちらの美容師さんとも普通に話す場合は別だけれど、
そうでない場合は必要以上にお互いのお客さんと話したりはしないようだ。

先日、美容室に行った時のこと。
その日は、私を担当してくれる店長さんが私の予約時間になっても
前のお客さんが終わっていなかったので、
待合スペースで終わるまでを待っていた。
外を見ながらぼんやりしていると、
もう一人の美容師さんが話しかけてきた。
もともとはこちらの美容師さんにお願いしていたのだが、
店長さんの至福のシャンプーに心を奪われ、
申し訳ないと思いつつ、担当を替えていただいたのだ。
しばらくぶりにのんびりと話すうち、
美容師さんが私の髪の色に言及してきた。
しかも、その後、店長さんも私の髪の色について話しかけてきたのだが、
その内容が感性って、本当に人それぞれなんだと、
とても印象に残ったので、noteに書いてみた。

私の髪は母系統の血を受け継いで、
髪一本一本は細いわりに量があり、超が付くほどのストレート。
そしてコシがあってまとめ髪がしにくい。
加えて、色素が薄くて、ハシバミ色をしている。
今の時代では考えられないけれど、
中学時代、私に目を付けていた中年の女教師に
授業準備室なる小部屋へ呼び出されて、
生まれながらにその色なのかネチネチと質問されたイヤな思い出もある。
家に帰ってから母に愚痴ると、
それを聞いて憤慨した母が
「学校に抗議の電話をする!」
と言うので、それを止めるのが大変だったというおまけつき。

そんな髪を扱える美容師さんは意外と少なく、
以前お願いしていた付き合いの長い美容師さんは、
「少し傷めつけると扱いやすくなるよ」
と、平気で言うような人だった。
学生の頃からお世話になっている美容師さんだったので、
そういうのが普通だと思っていたのだが、
今、担当をお願いしている店長さんの美容師さんにそのことを言うと、
「信じられない!」
「いつの時代の美容師ですか!」
と、髪の健康を第一に考える彼もまた、憤慨した。

色素が薄い、ということは白髪になるのもまた早い。
私は割と若い頃から
「これはカラーじゃ誤魔化せなくなってきたなあ」
と、美容師さんが匙を投げてからずっと白髪を染めてきた。
10年以上は白髪染めのカラー剤で染めただろうか。
皮膚が弱いので、染めている途中は薬剤がしみて皮膚が痛いし、
その後は頭皮が全部向けてしまうかのようにボロボロになってしまうし、
赤味も出るしで、落ち着くまで辛い時期を過ごさなければならない。
ようやく落ち着いた頃には伸びてきた白髪が目立ち始めて、
また美容室で辛い思いをする・・・という感じだった。

でも、こういうものだと思っていた。
仕方ないことだと。
見た目を保つためには多少辛いことがあっても我慢するものだと。

ある日、姉妹のように仲の良い従姉と話していた時のこと。
白髪問題の話になった。
彼女もまた、母系統の血を受け継ぎ、若い頃から白髪が出ていたのだった。
彼女もカラー剤に対しては早々に白旗を上げていた。
それでも、何かで染めているように見えたので、聞いてみると、
ヘナという植物で染めている、という。
おお、聞いたことはあるぞ、ヘナ。
昔、通っていたヨガの先生から聞いたことがあるような・・・
ヘナって、肌に模様を描くアートみたいなやつじゃないのか?
ヘナについてはこれくらいの知識しかなった私。
でも、その時の従姉妹の髪が健康的で素敵な色だったのだ。
やり方もその時に聞いたのだが、結構面倒そうだっが、
慣れだよ、慣れ、という彼女の言葉を信じ、
私もトライしてみたのが2年前の年末。

それ以来、家でヘナで染め続けている。
白髪は素敵なオレンジ色に染まり、
黒髪の部分は深みがかった赤い色に染まる。
背中の中ほどまでのロングを保つ私だが、
ヘナのおかげか、つやつやで健康そのものだ。
自然な茶色やダークカラーに調整できるものも市販されているが、
意図的に染め分けしているようにオレンジ色になるナチュラルなヘナが私の定番である。
天然の植物ゆえに、私がコントロールできないところもお気に入りだ。

その髪を見た以前担当してくれていた美容師さん、
「ずいぶん白髪が増えましたね!
 オレンジになっている部分、結構目立ちますねえ。
 ブリーチして色をぼかすとか少し考えた方がいいかも・・・」
と言う。
どちらかと言えば、ネガティブ発言である。
私はこのオレンジ色が大変気に入っているが、反論する必要もないので、
「そうですねえ」
と、(テキトーに)受け流して返事をしておいた。
そうこうするうちに、私の担当の美容師さんから呼ばれ、椅子に座る。
すると、先ほどの会話を聞いていたとは思えない彼が
「この色はナチュラルなんですよね。
 いいなあ、オレンジ。すごい可愛い。
 お客さんにお勧めしようかな。」
と、私にケープをかけながら言ってくれたではないか。
お世辞か、と思いつつも彼の顔を見ると、どうも、そうではないらしい。
「今までなんでオレンジって思いつかなかったんだろう。」
などと、ぶつぶつと呟いてもいる。
さすが、私を担当してくれる美容師さんである。
こういうところの琴線が全く一緒、とは言わないが、
どこか共鳴するところがなければ、お任せできないと私は思っているのだ。

でも、感性とは本当に人それぞれ、様々。
先出の美容師さんは、社会人としての見た目を考えて
もう少し落ち着いた色の方がいいんじゃないのかな、と言ってくれたんだと思う。
私の担当の美容師さんは、それこそ直感的に言ってくれたのだろう。
違うんだよな、わかってないな、と言ってしまうのは簡単だけれど、
この人は何を想ってこんな風に言ってくれたのかな、と考えることも、
また、楽し、である。


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