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魔法のカード

2019 IPPIN文庫         

『昨日のカレー、明日のパン』木皿泉・河出書房新社

最近、古い文庫を再読ばかりである。なかなか、新しい作家にたどり着かない。つまりは私は古典しか読んでいないのである。絵本の世界ならそれでも良い気がするが、本屋としてどうなのよ?と思う。かと言ってお客さまに勧められた本でキター!、と萌える作家もない。

私は本が読めなくなったのか・・・。

この一冊もある版元さんに勧められて読んだのだ。この本を私が読んでいないという彼の読みは当たっていた。そして私が本を頂くのが一番うれしいのだという点も彼はピタリ突いてきたのだ。問題は選書である。(ちなみに私が今まで頂いて唸ったのは一冊しかない)テレビドラマにもなったこの作品は私には若い。けれど若いからこそ、通り過ぎた想いを淡く辿るような世界があった。

たった25歳で死んだ夫の父・ギフと暮らす主人公テツコと彼女の恋人岩井さんはその周辺の人々の物語だ。短編なので読みやすく、登場人物がおもしろい。個人的にはムムムのタカラちゃんが大好きだ。

そして読み終わって魔法のカード欲しい、思った。困った時の魔法のカード。欲しいと思ったら居ても立っても居られない正確な私なのである。この本を下さった版元さんに魔法のカード下さい、と言った。けれど、なんの反応もないのだ。なぜだ、なぜなんだ。

そして、ふと思った。そうだ、私が私の大切なお客さまに“魔法のカード”をあげよう。私の魔法は最後にして本にかかわる人々の想いを載せよう、と思いショップカードの裏ににたくさんの版元さんに自社のおすすめの本やコメントを書いてもらい、それをこの本に挟み込んだ。

2019年8月31日。私が毎年主催している夏講座“わたかぶ”で私はこの本を高らかに掲げ話した。

ここにいるみなさんは物語が大好きです。想像力も妄想力もたくましい。

そして美しい物語で育ってきた皆さんは最後はハッピーエンド、と知っています。知っているんだけど、時々迷うし、泣いたりする夜もあります。だから、そんな夜のために私が魔法のカードを用意しました。魔法のカード、『昨日のカレー、明日のパン』の中に入ってます。

そして、ここで私がもう一度魔法をかけます。最後は絶対大丈夫!最後は絶対ハッピーエンド!

どうにも眠れない夜この本開いて、魔法のカード見て、志保のバカ、って私を思い出してね。そして会いに来てね。

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