おうちに

みつけたよ

本屋で絵本を立ち読みしたんだ

昔　贈られた本と同じ名前を本屋でみつけたよ

売れっ子なんだな　その人は
小さなフェアみたいに　何冊か並んでいたよ

華やかに新刊です！と
その人のサインの色紙もあったし

サイン本も並んでた

でも僕はそれじゃない　ちょっと大きな絵本は手にしたんだ

その人の本は2冊僕にある
１冊の短編集にはある話に付箋があったっけ
知らなかったよ
こんなに　たくさん
この絵本を僕に送って来なかった訳も今ならわかる気もしたような

そして
僕は大人になったから
普通の顔してその絵本を棚に戻さず
プレゼント包装してもらった
きっと持ってる
でも　いい
でも　いいんだ
僕のマグカップ　まだあるかな
お気に入りのマグカップ　あれで

苦い　甘い　温かいほうじ茶飲んだら

喉のかたまり落ちるかな

それとも　瞳から熱いのこぼれるかな

おうちに帰ろう

大人になったから　お土産持って

洗い立てのバリバリのタオルケットや

お日さまに干した布団が待ってる

駅に着いたら

跨線橋まで行こう

そこから山を　近い山を眺めよう

跨線橋を渡ればすぐそこに

沙羅双樹の木がむかえてくれる

格子戸に頭をぶつけぬように

庭は白い花たちが咲いてるだろう

僕の作った緑の釉薬の花器に揺れているのは　白い山吹かこめ桜か

おうちに帰ろう

あの子の頭もなでなでしなくちゃ

わらびもち買って

おうちに帰ろう