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シオコレエピソードvol.2「天井収納システム」

シオコレには、おもしろくてたまにグッとくるエピソードが店内のそこかしこにあります。

せっかく豊富なネタがあるので、それを共有していく不定期SNSコラム企画 #シオコレエピソード を始めました。

▽過去のエピソードはこちら



シオヤコレクションは10坪しかない。

しかし自分で言うのも何だが、この狭い店内をいかに有効活用するかよく考えられた内装になっている。
天井に吊るした収納システムもその一つ。
レジ奥の柱に設置された5つの黄色いカタツムリのようなウインチのハンドルをまわすと、それぞれに対応する洋服ラックを上げ降ろしすることができる。

昨年秋に近くに借りることができた小さな倉庫は、シーズンオフやメルカリ用のお洋服で常に満杯。もうすぐ店頭に出すというものや、倉庫にしまいきれないもの、サテライトで販売していただくお洋服などを収納するのに、この天井収納は日々大活躍している。

改装当時は、収納スペースの確保のためにロフトをつくろうと考えていた。
ところが吊り天井を落として梁が見える状態にしてみると、思っていたほど空間が無い。
床を作って屋根裏にお洋服を収納することはできても、人はずっと中腰でいなければならないことがわかり、これは作業効率が悪すぎて実用的でないので却下。
しかし何とかこの天井というデットスペースを使いたい…いや、使うしかない。
お洋服がかけられる数本の金属ポールを縄か何かを引っ張ったりして上げ下げする、というところまでは思い至るものの、実際の施工をどうしたらいいのか全くわからない。

とりあえず内装工事をお願いしている工務店の大工さんに相談してみる。
姫路城の改修にも携わるその道ウン十年の腕利きの職人さんだ。
それまで私のワガママをすべて軽やかに「ええで」と引き受けてくれていたのだが、このときばかりは既存の装置があるなら設置してやるけどもと、木材も使わないよくわからないシカケを作ることに難色を示された。当然だろう。

次に、ステージを演出するための照明器具の取り付け構造に近いと考えて、舞台照明の仕事をしている友人に相談。
教えてくれた舞台機構の会社に問い合わせてみたが、そもそも照明のための装置ではないので話が進まない。こっちもアカンか。

ここで、思いついた妄想をまわりに話しまくる私の癖が功を奏する。
例によって塩屋の旧グッゲンハイム邸を運営する森本アリ氏が「最近、飯川くんがそんな作品ばっかり作ってるで」と言うではないか。

飯川くんは、めちゃめちゃ面白い巨大な作品をつくる神戸在住の現代美術若手作家の飯川雄大氏のことで、2015.16年のシオヤプロジェクトの企画、塩屋まちごと文化祭「しおさい」にて作品を展示していて私も存じていたし、シオコレグラフィック担当のmannaは飯川くんの作品制作を以前手伝ったことがあったりして繋がりもある。これは頼むしかない。
意を決して連絡をとると、なんと知恵を貸してくれることをあっさり快諾してくれてしまった。

下見の日取りや、ウインチ、滑車、ワイヤーの入手についてなど話が一気に進み喜びに打ち震えた私だったが、不安はまだある。
構造について理解しているのは飯川くんだけ。
施工もやってみようと言ってくれているが、飯川くんの負担が大きくなりすぎることがわかりきっていて、さすがに申しわけないと困っていたそのとき、チームクラプトンというフレキシブルすぎる施工集団の山口アキラくんから連絡が。

私が内装費を募るクラウドファンディングのお願いをしていたのに対して、クラファンするかわりに施工した方が面白いと思うけど、何か手伝えることある?と、まさかのタイミングにまさかの申し出、渡りに船だった。

飯川くんとアキラくんで打ち合わせがトントンと進み、オープンの1ヶ月強前に施工日が決定。
お洋服の寄付を受け取り始める直前だった。
飯川くんとチームクラプトンの周到な用意(構造に合わせた金属ポールをアキラくんが溶接して作ってくれていたり)のおかげで、施工はたった1日でサクっと完了。
驚きと感謝でどうしたらいいかわからないくらい感動したのを思い出す。

飯川くんはその後、千葉市美術館や兵庫県立美術館、国立国際美術館などでの長期間で大規模なものを含む展示が立て続けにあり、あの時期でなかったら絶対にかかわってもらえていなかったと思うし、クラプトンメンバーも全国各地から施工要請のある、これまた激しく忙しいひとたちで、飯川くんとチームクラプトンに心を寄せていただけただけでも素晴らしいことだったけれども、私たちにとって、ベストなタイミングでこれを実現できたことは奇跡としか言いようがない。

シオヤコレクションは目に見えない何かの加護を受けているんじゃないかとずっと思っている。

(この記事は2023年9月24日にシオヤコレクションのInstagramに投稿したものを転載しています)


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