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自由な形式で書かれた詩を収めています。幻想的な詩、物語的な詩、ナンセンスな詩など。
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#自由詩

テイラス異伝 【詩/幻想小説】

芙蓉を描いた屏風は 奇妙に折り曲げられて迷宮となり 中心には桃に似た樹木があるという。 百…

汐田大輝
1日前
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電柱 【詩】

曇天に浮いている 緋色の雲 昼間から大人しくしている 眼球の傷 鉄塔がだまりこむ サボテン…

汐田大輝
9日前
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滝 【詩➕AI生成画像】

いつも折りたたみ式の滝を 持ち歩いている お寺の床の間なんかに置いておくと とてもよい感じ…

汐田大輝
13日前
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工場長の秋 【詩/現代詩】

荒川の自転車修理工場には 万物をリサイクルする準備がある 波長の合わないラジオ からまり合…

汐田大輝
2週間前
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社会不安 【詩/現代詩】

造船所周辺の市街地に 暮れ方の靄がたちこめる 顔面が麻痺した資本家と 酒精中毒の労働者がま…

汐田大輝
3週間前
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椅子 【詩】

この椅子は 座りの悪さでは有名な椅子 ハンモックみたいに揺れる ゆやんゆやんゆやん この椅…

汐田大輝
3週間前
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火星人 【詩/現代詩】

この前 はじめて あいつらに会ったとき みじめな気持ちになった こっちの方がまだましだ とか まさかこんなふうではないだろう とか もっとひどいのかも などと 一喜一憂して はてもなく あれや これや あんなこんなで もやもや おわりなき妄想が わいた あいつらは みえるたびに かたちを変えるので ぼくらの意識も安定しない ボールになったり トゲトゲになったり 戦車になったかと思うと 花瓶だったり 見る方向でかわる いまいましい ミサイルぶち込んで きれいさっぱりと など

骨のない生き物たち 【詩】

新富山駅で 真夜中まで映している 無声映画 見惚れていて 何本も電車をやり過ごし いつの間に…

汐田大輝
1か月前
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僕は、ペンです 【詩/ナンセンス詩】

(ニホンジンでも  ニホンゴを練習しないと  だんだん おかしくなっていくよ  僕みたいに…

汐田大輝
1か月前
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鹿狩 【詩/現代詩】

午後になると 鹿狩に出かける 川崎駅東口には 気取らない鹿がいる 素行の悪い野犬もいる 銃…

汐田大輝
1か月前
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林檎 【詩】

ロシアでも 日本でも その日の林檎は 特別に甘かった 針葉樹でつくったプロペラに ニスを塗る…

汐田大輝
1か月前
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風速 【詩】

付近には ひどく新鮮な 風速があり 車輪は全て残像だった (飛行機が危なっかしく飛んでいる…

汐田大輝
1か月前
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ステゴサウルス 【詩】

這い登っていく途中で ふいに出くわした 黒い岩塊 相変わらず 無愛想で 油断のならない生物 …

汐田大輝
1か月前
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古書店主 【詩/ショートストーリー】

エアコンのない 古本屋にも 資本の荒波は押し寄せる 刑法学が経済学に忍び寄り 会計学の価値が下落 絶版詩集は届かない空にただよい 底抜けした世界文学を掻き分けていくと 懐かしい南米の甘い香り 楔形の植物図鑑 滅亡した昆虫種がまとわりついてくる密林を 手探りで進む 笹の葉のしおりでルビコンを超えると 見たことのない記号が 泡立っている 未解読文字が熱波を発している 原生書物群の一角から 風が吹いていた ぶぉーっと 吹いてきたので 息ができなくなった 熱帯雨林の最深部 つる