ゆでたまご 【幻想詩】
春うららかな一日
街じゅうの頭の中が
ビー玉のように鳴っている
おかしなすり鉢の中に入れて
かき混ぜているみたいな音
春が煮え立つような一日
街じゅうの頭の中が
あぶらでいっぱいになる
ゆれている舟は
うえへしたへと波打って
太陽の膨らんだところから
とぷん とぷんと
あの子のスカートに忍び込んでいく
油虫が一匹
それからはもうずっと
奇妙な音が聞こえている
ベッドにころがった君のお腹の中で
ハモニカが息をしている
とても切なげに
上下に揺れながら
あたたかなものが滲みだ