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坂本真綾25周年ライブ『約束はいらない』2021/3/20 ライブレポート

 会場は横浜アリーナ。感染症対策を何重にもして入場。
 アリーナの中央には、円形ステージと左右に伸びる花道。
 開演後に分かりましたが、円形ステージの中央にさらに円形の「せり」が設置されており「せり」の部分が上部に上がってゆっくり回転する「廻り舞台」になっていました。
 開演前の舞台上には八角形の特殊スクリーンが注意事項を表示していました。開演後、特殊スクリーンは透明になってステージの中が格子越しに見える時や、一部だけ映像が表示してれて映像とバンドメンバーがシンクロするような時、上部に持ち上がって周囲のカメラで撮影した映像を写す時のスクリーンの役割も果たしていました。スクリーンと同じようにステージの周りには球体の照明を吊ったコードが取り巻いており、星や花火のように光ったり明滅したりする演出もありました。
 各座席横の空席には真綾さんからのコメントが書かれたチラシが貼られており、消毒済みのLEDバンドと座席後ろに取り付けられたLEDスティックが準備されていました。

 上演開始。ツアータイトルである「約束はいらない」のピアノイントロから始まって、開始早々いろんな感情が込み上げてきて泣きそうになってしまった。
 真綾さん髪の毛はショートになってて、大振りでアシンメトリーな透明な石の耳飾りに薄紫のショートケーキみたいなスカートのドレス(直径2m)でした。明るい曲調の「CLEAR」に続き、MCの後は一転ロックな「スクラップ」。昔の映画みたいにフラッシュが明滅するモノクロ映像がカッコ良かった。
 「ユーランゴブレット」ではステージの左右に伸びる花道を直径2mのスカートをわさわさ揺らしながら歩き歌い、軽快な「オールドファッション」に続きます。
 「いつか旅に出る日」ではこれまで真綾さんが旅してきた時の写真と思われる画像が曲に合わせてスクリーンに映し出され、歌詞にある「ぼくは、望めばどこへでもでもいける」という言葉が、この一年以上ずっと縮こまってどこにも行けずにいたけれど、ずっと来たかった真綾さんのライブに来ているんだということを思い出させてくれました。
 「独白」は最初はしっとり、転調してからは一気にロックテイストになり、ステージの周りに炎がボンボン出る演出で熱風が肌で感じ取れ、その勢いのまま「躍動」へ。「躍動」はバンドの生演奏だとより疾走感があって最高でした!
 確かこの辺りでドレスから中に着ていたアシンメトリーなスカートとパンツスタイルに衣装替えしていました。
 最新アルバム『duets』は真綾さん縁の方々とのデュエットが七曲収録されたコンセプトアルバムですが、そのデュエットパートナーから三名、ゲストシンガーが来てくださいました。
 一人目のゲストはロックバンド「la la larks」のボーカル内村友美さん。「la la larks」さんは真綾さんが歌うFGOのテーマソングをいくつも作曲しており、内村さん自身もお仕事がきっかけでFGOにハマって、
カルデアのマスターでもあるそう。アルバム曲を歌うのかな〜と思いきや、せり上がる廻り舞台で真綾と内村さんが背中合わせで立ったと思ったら「色彩」のイントロが……「色彩」の作曲・演奏は「la la larks」さんなので、楽曲提供してくれたバンドのメインボーカルとのデュエットなわけです。歌詞を交互に歌われてましたが、曲調のせいかデュエットと言うより歌唱ガチバトルのように見え……サビで向かい合って歌うお二人は、衣装がモノクロの映像だと白と黒で対象的なのも相まって才能と魂がぶつかり合う真剣勝負を見ているようでした。
 曲が終わってからは、ボーカルとしての悩みを相談する仲なんだよ〜という和やかな雰囲気のMCの後、最新アルバムからお二人で作詞された「sync」。ポップな曲調で共に夢に向かって励まし合いながら進む応援ソングでした。
 次のゲストはシンガーソングライターで楽曲提供もされている堂島考平さん。息のあった夫婦喧嘩ソング「あなたじゃなければ」を汗をかくほど熱唱した後は、MCで「最初は真綾さんに一方的になじられる歌詞を書こうとしたけど、自分の歌唱パートがなくなってデュエットじゃなくなるから方針転換した」との裏話が披露されました。次の機会があれば、次回は真綾なじられソングが聴けるかもしれません。
 二曲目は真綾さん作詞・堂島さん作曲の、大人になってから冬の終わりに昔の恋人の誕生日を思い出す、暖かくてノスタルジーな「レコード」。ステージ中央の廻り舞台が持ち上がりアコースティックギターを弾く堂島さんとその舞台の端に腰掛けて歌う真綾さんはとても自然体で伸び伸び歌っていました。
 三人目のゲストは「the band apart」のベーシスト原昌和さん。真綾さんが衣装にタキシードを提案されたそうですが、普段通りのパーカーでご登場。一曲目は原さん作曲の「Be mine!」が軽快に流れます。私の位置からはよく見えてなかったのですが、花道を歌いながら移動する真綾さんに対し、原さんは一人ベースを弾きながらせりあがった廻り舞台で廻っていたそうです。MCの時にその話題になってましたが、原さんは真綾さんのオファーを受けると経験したことないことが経験できると話してくれました。
 舞台上で今後バンアパのライブに真綾さんが出演するならこの曲をデュエットするとか一緒にカラオケに行こうとかの約束を取り付けつつ、古き良き歌謡曲の雰囲気も感じられるザ・デュエット曲「でも」。この曲の間だけはアリーナ全体が巨大なスナックと化していました。
 ゲストコーナーが終わり、星が瞬くような照明と共に英語詞の「gravity」がしっとりと歌い上げられた後は、「序曲」の歌詞に併せて葉から水滴が滴る映像の先に演奏しているバンドメンバーが見える演出が美しかった。そこからの「birds」を聞いている時は、こう、言葉では表現しきれないのですが、何度聞いても、何年経ってもこの曲はずっと好きだな……と実感する瞬間でした。
 そしてそろそろ終わりが近づいてくる気配を察しつつ、真綾さんがこのライブに対する思いを話してくれました。下記は意訳ですので詳細は異なります。
「この状況下で、ライブを開催して皆さんに来て楽しんでもらえるように、私だけじゃなく、バンドメンバーもスタッフも関係者も全員が精一杯考えて努力したからこそ、ここまで来れた。」
「今日ここに来てくれた皆さんもきっと色々な大変なことを抱えながらも、ここに来てくれたんだと思う。来たくても来られなくて空いている席の人にも届けられるように歌っています。」
「いいこともそうだけど、悪いことは永遠に続くわけじゃない。」
「25年間、四半世紀続けてこられたのは、いい出会い、巡り合わせのおかげ。」
「200曲くらいの楽曲を歌ってきたけど、全ての曲が特別で、どの曲もここにくるまでに必要な曲だった。」
「セットリストはいつも悩む。今の季節や心境にあった曲、私が歌いたい曲、みんなが聞きたいであろう曲をなるべくたくさん届けたい。」
「だから、この25周年記念ライブメドレー(仮)を作りました!」
 ということで、メドレーがスタート。
 明るくも切ない「ループ」〜強く逞しく生きる「ヘミソフィア」〜からの「逆光」ですよ。最高!〜コーラスの方が二人いらっしゃるなら聞かずに帰れない「奇跡の海」〜アップテンポで元気になれる「private sky」〜コスモっぽい映像で「トライアングラー」が演出されれば〜いつものように「ワンツースリー」と言えないけど心の中で叫ぶ「マジックナンバー」〜そして、切ないバラードの「指輪」で落ち着き〜最後は「光あれ」でいつもみたいに声を出せないのが歯痒い。
 ラストは10年前の東日本大震災を受けて作詞作曲した「誓い」と『信じる。それだけで越えられないものはない』と高らかに歌う「プラチナ」で締めくくりました。

 真綾さんのライブでは毎回、最期のアンコールで「ポケットを空にして」を観客も含め全員で歌うのが『お約束』なのですが、今回は感染防止のために声を出せない…まだ、元の生活に戻れていないんだということを思い出してしまい、切ない気持ちになりました。
 今回は録音で「ポケットを空にして」の伴奏が流れ、ステージの外周を練り歩くバンドメンバーに手拍子をしつつ見送りました。歌ってないのになぜか一体感を感じた気がしたのは、きっとみんなマスクの下で口ずさんでいて、息継ぎのタイミングが同じだったからじゃないかな……と一人で思っています。
 また、会場いっぱいにみんなで集まり、「ポケットを空にして」を全力で歌い合える日が早く来ることを祈りつつ、25周年記念ライブを後にしました。

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