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おしゃれは自分への礼儀

 成人式を1年後に控えたわたしは一大決心をした。
 絶対にやせる、と。

 目標に向かってこつこつ努力するなんてタイプのこどもじゃなかったけれど、このダイエットだけはかなり頑張った。おかげで−20キロ。よくもまぁ、ここまで蓄えていたものだ。そこから始まったのが、洋服沼だった。

 とにかくバイト代のほとんどは服に費やした。今まで着ようとも思えなかった女の子らしい淡い色やふんわりしたシルエットのお洋服。それが着られるようになったことがうれしくて、わたしは服を買い漁った。

 一番好きだったのは、L'EST ROSE。クラシカルな花柄とレースやフリルたっぷりのデザインがどツボで、ほとんどの洋服をここで買っていた時期もあった。かわいい服は、わたしを包み込んでいつも味方でいてくれた。痩せてからも、そして今も変わらずコンプレックスな脚の太さも包み隠して、わたしに「大丈夫」と思わせてくれる。洋服たちのおかげで、わたしは自分へのマイナスな気持ちをかなり紛らわせることができたし、恋にも踏み切れて、結婚できたのも洋服たちのおかげだと思っている。

 昨年、そんなわたしに転機が訪れた。

 職場が異動になり、今まで通りの服装ができなくなったのだ。パンツスタイル必須、汗だくになっても洗濯機でがんがん洗える洋服でないと仕事にならない。
 気づけばここ10年くらい、わたしは常にハイヒールにストッキング(タイツ)、スカートかワンピースで過ごしていた。ズボンなんて趣味のランニングをするときくらいしか履かないし、第一まったく似合わない。しかし、仕事なので仕方がないと対応できそうな服を買い集めた。そして瞬く間に一年が過ぎ、先日、夫から急に言われた一言でどきりとした。

「ワンピース買ったら?今、黒いのしか持ってないじゃん」

 ちなみに黒いの、というのは去年ユニクロで買ったカシュクールタイプのもの。以前のわたしだった絶対に買わないであろう、カジュアルスタイルだ。
 夫にそう切り出されたときは、仕事で着られない服買ったって仕方ないじゃない・・と思っていたのだが、スマホで何気なくワンピースを検索してはっとした。

 ワンピースを戦闘服にしていたあの頃のパワーがなくなってる!

 魔女の宅急便で、空を飛ぶ力を一時的に失ってしまったキキみたいな気持ちだった。そうだ、あのときめきがわたしのなかになくなってる・・!

 人として、女性として、魅力を高めるには内面を磨くことは何より大切だとは思っている。そのために「理想の服装」はとても大切だった。わたしはなりたい自分らしい服を着ることで、内側からその服が似合う自分になろうと努力できたのだ。
 仕事で服装が限られてしまったことと、夫の何気ない一言によって、今更ながら気づくことができた。

 最近は、友人や知人と会ったり外食したりする機会が減っている。マスクを常につけていることもあって、おしゃれへのモチベーションが低くなりがちだ(口紅なんてもう何ヶ月も、きちんとひいていない)。

 おしゃれは他人様への礼儀。
 そう、うちの祖母はよく言っていたそうだ。でも、それだけじゃない。おしゃれは自分への礼儀、でもある。

 連休は久しぶりに勝負服!と思えるワンピースを自分に買ってあげよう。そしてその服が似合う自分であるため、努力しつづけよう。


2020.7.23  shiori🌸

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