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要約『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』著者 オードリー・タン

●ベストフレーズ

(インターネットを使うことで)それぞれの主義主張や政治志向を離れ、一つのテーマや問題について誰もが自由に話し合うことができるのです。同じ価値観を持ち、目指す方向への共通認識があれば、共に話し合うことで社会を前進させることが可能となります。 151ページより


●はじめに

天才の考える未来予測

本日の一冊は、台湾行政院の閣僚として新型コロナウイルス対策で大きな成果を挙げ、世界の注目を集めたオードリー・タン氏から、AIなどのデジタル技術が当たり前になる社会=「未来」を生きる全ての人への送るメッセージです。

本書を読めば健全なAIと人間の共存するビジョンがイメージできるでしょう。

●本文要約

1.AIはあくまで便利な道具

本書では、急速に発展しつつあるAIなどのデジタル技術に漠然とした不安や期待を持つ読者に対して、AIやデジタル技術との上手な付き合い方や、それらの技術によって社会はどう変化するのかについて考えるきっかけを提示しています。
AIなどのデジタル技術は、社会の方向性を変えるものではなく、皆が望む社会を実現するために役立つ道具です。全ての人がデジタル技術による利益を受けられるような方法を考えることが重要です。デジタル技術が発展しても、人と人とのコミュニケーションの重要性は変わりません。

著者は、自身とコンピュータの関係性をスティーブ・ジョブズの「精神的な自転車」(Bicycle of Mind)という言葉で表現しています。人間の「山に登りたい」「遠くに行きたい」という願いを実現する道具として自転車があるのであって、自転車だけが山に登るのでは登山の意味が無くなってしまいます。
AIやデジタル技術がどれだけ発達したとしても、「何が課題なのか」を理解する人間の能力の重要性は変わりません。デジタル技術を社会全体の利益のために活用するためにも、人間には立場や考え方の違いを越えて多くの人の意見を聞く能力が求められています。台湾政府は市民の意見を聴くためにデジタル技術を活用して、これまで見逃されがちだった問題の解決に取り組んでいます。

AI:AIとはArtificial Intelligenceの頭文字をとった略語で、日本語では人工知能と呼ばれています。膨大なデータから法則や特徴を学習する技術の発達によって、最近では文章や画像のように複雑な情報も適切に取り扱うことができるようになりました。複雑な判断を瞬時に行うことができるAIは、インターネット上だけでなく生活のあらゆる場面で活用されています。
デジタル:本書ではインターネットやパソコン、スマホなどで利用されている「情報をやり取りする技術」全体を指して「デジタル」という言葉が使われています。対義語は「アナログ」で、例えば手紙や紙の書面がアナログ、電子メールやスマートフォンアプリを介したやり取りがデジタルです。"

2.AIは「人間の「こんな社会を作りたい」という願いを実現するための道具」

台湾では行政機能へのデジタル技術の導入が進んでおり、新型コロナウイルスに対する迅速な対応で成果を挙げました。防疫やマスクの流通のような課題に対してもデジタル技術は効果的な道具となることが示されました。
AIやデジタル技術は、社会のあり方を決めるものではなく、人間の「こんな社会を作りたい」という願いを実現するための道具です。その利益を社会の皆が受けられるかどうかは、人間がどんな社会を目指すかにかかっています。

著者は両親からクリティカルシンキング、クリエイティブシンキングの考え方に基づいた教育を受け、先入観に捉われない自由な思考力と他者に対する共感力を身に付けました。著者の成長の過程で、デジタル技術は著者と社会との架け橋となっていました。

民主化運動によって今日の民主主義を実現した台湾では、市民の声が重要視されています。デジタル技術を使うことで、市民の声が政府に届きやすい仕組みが作られるので、間接民主制の弱点克服につながる可能性があります。
デジタル技術は、上手に使えば、誰も置き去りにされない社会作りのための強力な道具になります。そのためにも、デジタル技術と共に生きる人間には「自発性」、「相互理解」、「共働を通じた共通価値の探求」といった素養が重要です。

日本と台湾には共通点が多く、お互いから多くを学ぶことができます。これからの社会をより良いものにするためにも、若い世代が積極的に社会と関わりを持つことを期待します。

3.AIはあくまでも人間を補助するツールである

私とコンピュータの関係は、ちょうどスティーブ・ジョブズの言った「精神的な自転車(Bicycle of Mind)」のようなものでした。つまり、人間は「自転車」というツール(道具)を使うことでより遠くへ行くことができますし、山に登ることができます。しかし、これはツールである自転車の方が人間より山登りが得意だという意味ではありません。自転車に山登りをさせるのであれば、登山の意味は失われてしまいます。 39ページより

AIやデジタル技術によって生身の人間では不可能な計算や判断が可能になりますが、その機能はあくまで「こうしたい」という人間の願いを実現するためのものです。著者はAIによって「人間が進むべき方向性」が定められ、人間がそれに従うというモデルを明確に否定しています。

続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り6700文字)

4.両親から学んだクリティカルシンキングとクリエイティブシンキング
5.デジタル空間とは「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」
6.権力に縛られない「保守的なアナーキスト」
7.話を傾聴して共通の価値観や解決策を見出していく
8.三つのキーワード「持続可能な発展」「イノベーション」「インクルージョン」
9.大切なのは、子供の関心がどこにあるかを大人が理解すること
10.社会的な問題を解決する基礎となるコンピュータ思考
11.デジタル社会で求められる三つの素養ー「自発性」「相互理解」「共好」
12.デジタル化成功の鍵は、デジタルネイティブ世代が握っている

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◆専門家と編集部で厳選した「親が今読むべき本」を「一冊10分」に圧縮してお届け ◆8冊分の記事を、「一冊分のお値段」でご提供 ◆オーディオブックも同時配信で、「ながら聴き」も可能 ◆「要約リクエスト」を受けつけているのはSHiORIだけ(LINE登録から) 忙しい中でも「親のセンス」をアップできます。 子育て支援はあっても、一番負担のかかる「親」の支援は足りていません。 SHiORIは徹底して「親の味方」になります。ご愛読の程、よろしくお願い致します。

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